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コロナ禍で議員外交の正体見たり

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 ある与党議員は「最近、とんと海外に行くことがなくなった」とため息を漏らす。今年は選挙の年だから国会議員の外遊は少なくて当たり前だが、コロナ禍のため、昨年も日本を出国した議員はほとんどいなかった。それどころか、首相や閣僚でさえ、不要不急の外遊は控えられている。

 例年、国会が閉会になると、議員たちは渡り鳥のように一斉に海を渡る。多くの議員には公用旅券が発行され、飛行機はビジネスクラス以上、ホテルや要人との会談も在外公館が手配してくれる「完全パック旅行」である。委員会派遣であったり、議員連盟としての訪問であったり、形態はさまざまであるが、通常、旅費の持ち出しも免れる。

 議員外交といえば、聞こえはいい。支持者にも説明がつく。だが、大半は視察と要人との面会である。とりわけ何を話したかよりも、有名人と一緒に記念写真を撮れたかどうかが極めて重要になる。そして国会でも地方議会でも同じだが、帰国したらすぐに事務方が報告書をまとめてくれる。なぜか外遊前にすでに“報告書”が出来上がっていることもある。

 中には「相手国との交流は口実。与野党議員の親睦が真の目的」(自民党国対関係者)と言い切る者もいる。そうしたことが国会運営の円滑化に資していることは確かだが、親睦旅行のために多額の税金が費やされることには強い批判もある。「自費でいい」「国内旅行でいい」といった声もあるが、もはや海外親睦旅行は永田町文化の一部になっている。

 国会議員が他国の要人と顔を合わせ、握手を交わす意義は否定できない。公式見解にとらわれる閣僚や官僚ではなく、議員外交で懸案解決の糸口が開かれたこともある。しかし、そうした例は極少で、相手国の要人と会っても、多くの場合、ありきたりの質問だけが繰り返される。日本人慣れをしたある米国要人などは、あらかじめレジュメと記念撮影の場所を用意しておいてくれる。

 コロナ禍で国会議員のパソコン利用率は飛躍的に高まった。かつて「ヤッホー」と読んで失笑を買った年配の議員も、今ではしっかり「ヤフー」と言えるし、「デバイス」といった言葉も普通に口にする。「やはり集まって顔を突き合わせたほうがいいね」(閣僚経験者)とはいうものの、多くの議員は党のリモート会議などにも自然に参加できるようになった。

 それならば、リモートやオンラインで諸外国の要人と“交流”すればいいのではないか。衆参各院の議員会館には、オンライン会議・会談に対応できる立派な部屋もあるし、外務省は通訳を引き受けてくれる。リモートやオンラインを駆使すれば、飛行機や列車を乗り継いで外国を動き回るよりも、短時間でより多くの人と“接する”ことができるはずである。

 しかし、コロナ禍が訪れて明らかになったのは、外交に心底関心を抱き、取り組んでいる議員は一握りだということである。外遊や記念撮影には興味はあっても、外国の要人や識者にオンラインでものを尋ねたり、議論をしたりしようとする議員は、残念ながらかなり少ない。政府与党が東京オリパラを開催したいのであれば、それぞれの議員が外交チャンネルを使い、各国に理解と協力を求めるのも方法だが、そうした形跡も見当たらない。

 コロナ禍を機に人々の生活も行動も大きく見直されるが、国会議員の外遊も例外ではない。真に必要な外遊であれば続けなければならないが、さほど実りが期待できないものは、思い切って止めることも選択肢の一つである。もしも税金を使って外遊するのであれば、使いこなせるようになったパソコンで、ぜひその成果を国民にご報告願いたいものである。

【筆者略歴】

 本田雅俊(ほんだ・まさとし) 政治行政アナリスト・金城大学客員教授。1967年富山県生まれ。内閣官房副長官秘書などを経て、慶大院修了(法学博士)。武蔵野女子大助教授、米ジョージタウン大客員准教授、政策研究大学院大准教授などを経て現職。主な著書に「総理の辞め方」「元総理の晩節」「現代日本の政治と行政」など。