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高知県が関西圏と経済・観光面で連携を強化 関西戦略室新設へ

 高知県は2022年度から、産業振興推進部の地産地消・外商課内に「関西戦略室」を新設する。25年大阪・関西万博の開催を控える関西圏と、経済・観光面などの連携を強めることで、県の活性化につなげる狙いだ。
 経済・観光における関西圏との連携強化について、濵田省司(はまだ・せいじ)高知県知事と県の担当者にその戦略を聞いた。

 

■濵田知事はトップセールスに意欲も 

濵田省司・高知県知事
濵田省司・高知県知事

 関西圏との経済連携強化は、大阪府副知事の経験もある濵田知事の重要政策の一つで、20年度末に「関西高知経済連携強化戦略」を策定。同戦略は関西圏の経済界や行政関係者などからなる「関西・高知経済連携強化アドバイザー会議」の意見を反映したもので、「観光推進」「食品等外商拡大」「万博・IR連携」を柱としたプロジェクトと、これらを横断的に支える取り組みで進められている。同戦略の実施期間は、21年度から23年度末までの3年間。関西戦略室の新設は、同戦略の具体化を加速させる狙いだ。

 濵田知事は、「大阪・関西万博開催に向け、インフラ整備をはじめとした経済活動に伴い、関西圏には活力が満ちあふれている。関西圏との連携強化により、高知県の発展につなげたい」とした上で、「大阪の都市型観光と高知県の自然体験型観光を組み合わせた観光商品の開発に取り組み、外商面では、業界横断的な強化対策を実施することで、万博の設備などにも県の製品が採用されるよう営業活動をしていきたい」と意気込みを語った。

■大阪城築城、清水寺の修復工事にも使われた高品質な「土佐材」

高知県の豊な森(高知県提供)
高知県の豊かな森(高知県提供)

 高知県は県土の84%を森林が占め、森林率は全国1位だ。土佐材は、大阪城築城にも使われた歴史を持ち、その品質の高さから全国に知られるようになったという。最近では京都の知恩院や清水寺の修復工事にも土佐ヒノキが使用されている。

 高知県の林業は、「原木生産の拡大」「木材産業のイノベーション」「木材利用の拡大」「担い手の育成・確保」の施策に取り組み、木造建築や万博での利用による関西圏市場の拡大に期待を寄せている。
 関西圏市場の拡大に向けて、大阪市住之江区にあるアジア太平洋トレードセンターに常設展示ブースを設け土佐材をPRしていくほか、パートナー企業との連携を強化し販路を拡大していく。また、住宅建設需要の縮小に備え、非住宅建築物への土佐材利用の拡大に向けてJAS認定製材の増産にも取り組むという。

原木市場(高知県提供)
原木市場(高知県提供)

 土佐材は、都市圏に29カ所の流通拠点を整備し、県内からプレカット材を一括配送。流通拠点から建築現場に小口配送を行うことにより、必要な時に必要な木材を届けられるシステムが構築されている。
 今後は、ICTスマート林業の普及促進や、担い手の育成も強化し、高品質の土佐材を安定的に提供できる仕組み作りを目指す。

■今年はブリ、マダイが高騰!?多品種の天然魚を売り込む!

豊な海での養殖
豊かな海での養殖(高知県提供)

 高知県といえば、カツオやキンメダイをはじめとする天然魚が豊富なイメージだが、実は養殖も盛んで、ブリやマダイ、カンパチ、クロマグロが大阪の中央卸売市場に出荷されている。高知県大月町で養殖されたクロマグロは、昨年の全国養殖クロマグロ品評会で最優秀賞を受賞している。

 21年度は、関西圏の量販店に対して養殖魚の販売促進活動を実施したことで、販売額は目標を大きく上回る結果となった。22年度も本活動を継続するが、ブリとマダイの生産量が大幅に減少する見込みだという。コロナ禍で養殖魚の流通が一時滞り、稚魚をいけすに放てなかったことが原因だという。
 養殖魚の生産量減少を受け、高知県では、飲食店やデパ地下を対象に、300種を超える天然魚の販売にも力を入れていく方針だ。関西圏には「高知家の魚応援の店」制度に登録された飲食店が417店舗(22年2月現在)あり、取り扱いの拡大を図っていく。

 県の担当者は「舌が肥えた大阪の人に“高知の魚はうまい”と言ってもらいたい」と熱く語る。

■ニラ、ししとう、みょうが、なす、軽量で高単価の野菜で勝負

施設栽培が定着(高知県提供)
施設栽培が定着(高知県提供)

 高知県の農業産出額は1,000億を超え、産出額に占める野菜の割合は6割以上。なす、ししとう、みょうが、しょうがといった野菜の生産量は日本一で、ニラやトマトの生産も盛んだ。
 耕地面積の少ない高知県では、冬期の温暖・多照な気候を利用してビニールハウスなどの施設による早出し栽培が定着。他産地と出荷時期をずらすことで、高単価での販売に成功している。また、都市圏への輸送に適した軽量の野菜販売に力を入れている。

 高知県は22年度、関西圏を重要市場の一つと位置付け、農産物の販売を強化する。これまで培ってきた卸売市場関係者との連携を強化するほか、量販店の調査・分析後、営業活動を推進する。関西圏の量販店で高知の野菜フェアを開催、消費者に直接アピールする活動も計画されている。

 品質改良、コールドチェーン、物流改革、包装技術の開発、スマート農業、販売戦略など、県と農家、農業関係者が一体となって取り組む高知県。野菜農家は減っているが、生産量はむしろ増えているという。

■高知の食は「つくる人が熱々」! 観光キャンペーンが始まる

人熱々料理キャンペーンが始まる
人熱々料理キャンペーンが始まる

 高知県では、食とそれに関わる人に焦点を当てた「人熱々料理」キャンペーンが4月から始まる。新型コロナウイルスの状況を見ながら、まずは関西圏に「食」をアピールし、観光客を呼び込む狙いだ。
 高知県にはカツオをはじめ、キンメダイ、サバ、あかうし、天日塩、田舎ずしなどウマいものがたくさんある。そして生産者から料理人まで、食に関わる高知人はみな“熱い”。その熱すぎる人々と食をPRするキャンペーンやイベントを順次開催し、中山間地域の復興にもつなげていく狙いだ。

キンメダイと土佐あかうし
キンメダイと土佐あかうし

 また、ウィズコロナ/アフターコロナを見据え、自然体験型観光基盤を活用した「仕事と休暇を両立するワーケーション」「トレッキングなどのグリーンツーリズム」「マリーンアクティビティをはじめとするスポーツツーリズム」「アドベンチャーツーリズム」を推進していく。インバウンド需要の回復に向けては、大阪の都市型観光と高知の自然体験型観光を組み合わせたモデルルートの開発に取り組み、外国人観光客に向けたプロモーションを継続的に行っていく。

 近年、環境学習を目的に高知県を訪れる中学校が増えているという。自然体験をきっかけに、地域文化と環境保全を考えるきっかけとなる観光資源を高知県は豊富に持っている。

 大阪・関西万博に向け、経済活力が高まる関西圏。その関西圏に向けた経済連携を強化していく高知県の取り組みには今後も注目だ。