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自転車ロードレースをメジャーに 奔走する元F1ドライバー、片山右京さん

ジャパンサイクルリーグ 片山右京チェアマン
ジャパンサイクルリーグ 片山右京チェアマン

 プロの自転車ロードレースリーグとしてスタートした「三菱地所JCLプロロードレースツアー」が2年目を迎え、一段と内容が充実してきた。このリーグには地域密着型の10チームが参加。2021年は、エキシビションなども含めて15戦を実施したが、22年は20~25戦を予定している。先頭に立ってJCL(ジャパンサイクルリーグ)を引っ張るのが初代チェアマンに就任した元F1ドライバーの片山右京さん(59歳)。「街をスタジアムにしよう」をキーワードに、ロードレースの人気定着や、レーサーの競技力向上のため、奔走している。

■知名度生かし交渉

 街を舞台にしたロードレースは根強い人気があり、多くの全国の自治体や企業などが開催に関心を寄せている。現在のランニングブームを反映して、市民マラソンは大小合わせて全国で年間約1万5千の大会が開かれている。エコな乗り物として注目されている自転車には、市民マラソンに匹敵するほどの経済的な可能性がある。老若男女を問わず乗れる上に、名所旧跡を巡ったり、いつもは車で通り過ぎる市街地を走ったりできれば、どれほど楽しいことだろう。自分の限界に挑戦するかのような峠道を上ったり下ったりするレースは、トップ選手を応援しても、自分で試してもエキサイティングだ。

 ただ、日本でロードレースを開催するには道路の使用許可が必要な上、警備などにも周到な準備が求められる。人員や機材の確保で相当な手間と費用が掛かる。こうした状況の中、自転車ロードレースのプロ化に積極的だった片山さんが、チェアマンを引き受けた。スポンサーとなる企業へ積極的に出向き、法制化に協力してもらえる政治家と交渉を重ね、行政を動かす官僚と交流を広げた。「ロードレースをメジャーにして、職業として成立させるには資金調達がすべて」という現実感覚が、運営のベースになっている。その努力が実り、向こう数年の活動のめどは立ったそうだ。

■五輪で得た経験と人脈

 もともと片山さんが子どものころに興味を抱いたのは自転車で、小中学生のころに何度も県外(出身は神奈川県)へツーリングに出かけたほど。自転車とレースカーの操作には似た部分が多いそうで「F1では300キロを出しながら燃料の消費、タイヤの状態、ライバルとの差などを瞬時に判断する。同じように自転車も、道路の状況や脇道からの飛び出しなどを瞬間的に判断する」。F1のトップレーサーの多くが自転車を練習に採り入れているという。

 東京オリンピック・パラリンピックでは、組織委員会の自転車競技の責任者として国際自転車競技連合(UCI)や地元自治体との折衝にあたった。そこでつかんだ国際レベルの運営方法や、組織委員会で出会い、ともに苦労した仲間の人脈が新たな財産になった。これらを駆使し、日本のロードレースの競技力向上に努めるという。

■川淵三郎氏が協力

 ロードレースで地域創生を図り、メジャー競技に育て、プロとして自立する。この大きな目標に向け今春、力強い味方を得た。Jリーグを成功に導き、バスケットボールのプロ化を推進した川淵三郎氏が、JCLの名誉顧問に就任した。エネルギッシュな片山氏の行動力に、数々の困難を乗り越えてきた川淵氏の経験と智恵も加わる。

 片山さんはJCLについて「2030年には世界最高峰のツール・ド・フランスで日本人優勝者を出したい。可能性を感じさせる人材はいます。そういう人間を世界に送り出すことが使命です」と熱意を込めて語った。