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「健康」認定で〝ボーナス〟3万円を支給 活力ある職場づくりを目指し クレスコ、冨永宏社長に聞く

(株)クレスコ 冨永宏社長
(株)クレスコ 冨永宏社長

 独立系ソフトウエア開発のクレスコは6月、社員の半数を超える642人に、「健康増進手当(2021年度)」3万円を支給した。健診を受けたり、非喫煙を1年間守ったりという条件を満たした人がもらえた〝ボーナス〟に社内は盛り上がり、取引先をはじめ周囲でも話題になっているという。東京証券取引所プライム市場上場の大手IT企業がなぜこんな手当を支給したのか、その狙いや背景、クレスコの人材活用策について、今年4月に就任した冨永宏社長に聞いた。

―手当の支給基準は。

 健康診断の受診や非喫煙など四つの必須条件を満たし、さらに休暇取得日数やスマホアプリが計測する歩数など、四つの任意項目のうち二つを満たした社員に支給した。

―手当の狙いは、どこにあるのか。

 企業活動の中心である社員が心身ともに健康で、能力を最大限に発揮することが、会社はもちろん、お客さまや関係先も含めた成長につながると考えてスタートし、今回が最初の支給になった。2020年4月から在宅勤務を含むテレワーク制度を導入し、みんな、運動不足になりやすくもなっている。社員は健康管理について意識を高めて積極的に行動し、活力ある職場をつくってもらいたい。

▼急成長でメタボも増加

―社員の健康については、経営方針の中でどう位置付けているか。

 クレスコは1988年に岩﨑俊雄・現名誉会長が「人間中心」という考え方で創業した会社で、元々健康を指向しており、新人研修でのマラソン大会では役員も走っていた。
 しかし、システム開発という仕事は、丸1日座っている社員がいたり、夜遅くまで残業する社員がいたりする。会社としての成長でこの10年に売り上げは3倍、社員数は2倍になったが、生活習慣病にかかるような、いわゆるメタボが増え、病気に気付くのが遅れ重篤になるケースもあった。こうしたことから2019年9月に「健康経営宣言」を発表し、経営上の重要な課題として取り組んでいる。

 取締役ら幹部が出席する会議では、毎月の残業時間や社員の健康状態を定期的に把握して、対応も協議している。健康増進手当については、当初案では非喫煙は任意項目だったが、役員の議論で必須項目に上げた。

▼盛り上がるウオーキング・イベント

―増進手当のほかに実施している健康関連施策は?

 社員の長期療養を支える3大疾病保険への加入や、被扶養配偶者の人間ドック受診費用補助といった施策も進める一方、最も社内が盛り上がり、私も参加しているのがウオーキング・イベントだ。
 各社員のスマホが計測する歩数を集計して、週ごとのランキングを社内で掲示。個人戦も団体戦もあり、職場を超えたコミュニケーションにもつながっている。また、最終上位者と一定条件を満たした参加者には、賞品も授与される。

―身体の状況は個人情報であり、会社がすべて把握してフォローし続けるのは難しい面がある。

 心身の状態について、現場の上司に伝えてほしい。それができなければ、人事部門への報告でもいい。いずれにしても人間関係と、しっかりしたコミュニケーションが重要だと思っている。

―コロナ禍で働き方改革の加速が求められている。

 コロナ時代が節目を迎え、「もう働く場所は問わない」というお客さまもいれば、「普通(元の職場)に戻る」というお客さまもいる。クレスコには金融業、製造業、旅行業などといろいろなお客さまがおり、それに合わせてやっていく。現場にはお客さまに合わせつつも、健康を守れるように試行錯誤していこうと言っている。

 社員のメンタル面のケアについても、コロナで顔を合わせることが減り、意思疎通の課題が出てきている。最近、部長級の社員に対しては、(出社日数の)半分は会社で仕事をするようにと、メッセージを出した。実際に会社で席を並べ、視線を見てやっていくことでチームの仕事が進む面があるからだ。新しい時代のコミュニケーションをしてほしい。

▼夏休み取得も求める

―人材活用、多様性確保の取り組みは?

 健康増進手当の条件にもあるが、休日を取ることは重要と考えている。有給休暇を年8日以上取るように求めているし、今年は夏休みをしっかり取るよう、あらためてメッセージを出したいと思っている。
 私自身は現場にいるときは繁忙期の後にまとめて代休を取っていた。取締役になってからも夏は10日間くらい休んでいる。

 社員の女性比率は全体の25%まできており、個人的には評価している。さらに増えていき、明るい未来が開けていると思っている。外国人採用は試行錯誤の面はあるものの、世界で生きる会社としては人材の多様性確保は重要で、確実に進めていく。