カルチャー

今夜ドラマスタート、突然、町工場の社長になった本当の主婦の物語

「町工場の娘 主婦から社長になった2代目の10年戦争」 日経BP社 1,728円(税込)
「町工場の娘 主婦から社長になった2代目の10年戦争」 日経BP社 1,728円(税込)

 「子どもを持つなら、女の子がいい」に始まり、「女の子はしっかりしてるのに、男はダメだ」といった社会人への苦言まで。どうやら最近、ずいぶん「女性」株は上がっている。その一方で、「女性活用」も盛り上がりを見せているものの、その旗振り役が政府であったりするところを見ると、たとえ女性が“しっかりしてる”としても、“ふつうに”働ける社会になるまでには、まだまだ時間がかかるのかな、といった印象も抱く。

 『町工場の娘』(日経BP・東京)の著者・諏訪貴子さんは、そのタイトル通りに、生まれたときから「町工場の娘」としての運命を背負わされる。早世した長男に代わる「跡継ぎ」として育てられ、そのためのキャリアも重ねるものの、いったんは主婦業に専念。平穏な日々を送る最中、思いがけず父親が急逝。急きょカリスマ創業社長亡き後の、ダイヤ精機・2代目社長への就任を決断するのだ。

 銀行からの厳しい追及、やむを得ないリストラや、将来を見越した改革の推進。2代目の諏訪さん率いるダイヤ精機に起こった事件は、規模の大小を問わず、多くの企業でも起こり得ることなのかもしれない。しかし諏訪さんは“女性”。「女社長」という言葉がある通りに、女性が社長を務めている時点で珍しいのみならず、周囲には職人かたぎのベテラン男性ばかりがひしめく業界。おのずと「社長が女でごめんね」といった言葉も漏れ、社長としてだけでなく、“女性”であるが故の悩みにもさいなまれることとなってしまう。

 ただ諏訪さんは、「女性らしさ」「男性らしさ」を象徴する代表的な要素ともされがちな、「細やかな気遣い」と「論理性」を両輪にして、緩急をつけつつ2代目社長業を推進する。その手法は、「女でごめんね」といった複雑さを抱えつつも、非常に冷静な一面をもうかがえるもの。慢性的な人手不足のこのご時世ながら、人材確保にも苦労していないという。企業を磨き上げられるその手腕には、カリスマ社長の“見る目”の確からしさもやはりあったに違いない。

 2004年に社長就任。その9年後、13年には点と線がつながるようにして、日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2013」を受賞。その後は「中小企業の星」とし、諏訪さんは活躍の幅を大きく広げていくこととなる。

 「中小企業の星」は、「女性」であることを乗り越えたのか?というと、そんなこともないようだ。もちろん、女性であることに変わりはない。けれども、より一層「自分」を楽しむかのように、2代目は今日も社長業奮闘中。「女だから・男だから」の荷は下ろして軽くなることこそ、いまのご時世“輝く”すべなのかもしれない。

「町工場の娘」著者・諏訪貴子さん
「町工場の娘」著者・諏訪貴子さん

 とはいえ、2代目社長は妻でもあり、母でもある。そんな悲喜こもごもは、NHKドラマ10「マチ工場のオンナ」(主演・内山理奈)で。「主婦目線の現実処理能力と決断力で奮闘する、サバイバルヒューマンドラマ!」は、11月24日22時からスタート。

(中澤彩野)