おでかけ

「むろと廃校水族館」に強烈にひかれて四国の東南端“室戸”へ 【室戸に行ってきました 前編】

太平洋に突き出た室戸半島。四国の右下にある尖った部分です。
太平洋に突き出た室戸半島。四国の右下にある尖った部分です。

 

室戸といえば、何はともあれ・・・

 酷暑!熱暑!猛暑! 今年の夏はまた格別に暑いですね。こんなときに遊びに行くならだんぜん水族館です。涼しげに泳ぐ魚たちを見ていると、こちらまで涼しくなってきますもの。世界有数の水族館大国といわれる日本。北は北海道から南は沖縄まで、全国津々浦々に大小さまざまな水族館が存在しますが、そのネーミングで最も好奇心をそそられるのは、高知県室戸市にある「むろと廃校水族館」ではないでしょうか。なぜか人は「廃校」や「廃墟」に心ひかれるものですが、それが水族館と合体したとなると、心の中の好奇心メーターはMAXまで振り切れてしまいます。「むろと廃校水族館」の存在を知ったとたん重い腰がすっと上がり、気がつけば高知行きの機内にいた編集部Kでした。

 高知龍馬空港から室戸市までは車で1時間ほど。実は室戸市には鉄道がなく、電車だと途中の奈半利(なはり)までしか行けません。奈半利からバス・タクシー・レンタカーを利用しても約50分かかり、行きやすい場所ではないようです。でもそんなことは関係ない!・・・という話はあとにして、まずは腹ごしらえといきましょう。

 

料亭「花月」の室戸キンメ丼(1,600円)。食べ方や豆知識を書いた紙が添えられており、高知県は高級魚キンメダイの漁獲量が全国第4位、室戸沖はその高知の漁獲量の約8割を占め西日本第1位を誇るそうです。
料亭「花月」の室戸キンメ丼(1,600円)。食べ方や豆知識を書いた紙が添えられており、高知県は高級魚キンメダイの漁獲量が全国第4位、室戸沖はその高知の漁獲量の約8割を占め西日本第1位を誇るそうです。

 室戸の名物グルメといえば、何はともあれ「室戸キンメ丼」です。正式な「室戸キンメ丼」は市内の10のお店で食べられますが、人生初のキンメ丼は室津漁港そばの老舗料亭「花月」さんでいただくことにします。

 正しい「室戸キンメ丼」には、①キンメダイをはじめ室戸でとれた旬の魚の刺身を使う、②キンメダイの照り焼きを使う、③キンメダイ茶漬けが食べられるようにキンメダイの出汁を付ける、という3つのお約束があります。その特長をフルに味わうべく、まず最初はキンメダイの肉厚のお刺身から。「ん~♪」と思わず声が出そうなくらいおいしいお刺身です。これを食べたら“新鮮”の意味を舌で理解できるはず。照り焼きも柔らかく上品な味付けで、いくらでも食べられそう。でもせっかくお出汁が付いていますから、一気に食べてはいけません。刺身と照り焼きが半分になったら、熱いお出汁をかけます。「ワ~オ!」。出汁のうまみとキンメダイのうまみが絶妙な味わいを作り出し・・・説明はヤボですね。これぞまさに室戸を代表するグルメ。納得です。

漁師さんたちの協力で成り立っている水族館

 さて、太平洋に突き出た室戸半島の東海岸を室戸岬から車で10分ほど北上すると、いよいよ「むろと廃校水族館」に到着です。「あれ~? なんかカワイイ」。2006年に廃校になった小学校の校舎はブルーをアクセントに塗り直され、廃校という言葉から勝手にイメージしていた“荒れ果て感”などまったくありません。

 

かつての室戸市立椎名小学校の校舎を利用した「むろと廃校水族館」。
かつての室戸市立椎名小学校の校舎を利用した「むろと廃校水族館」。

 この水族館は室戸市が所有していますが、運営しているのは日本ウミガメ協議会というNPO法人。絶滅危惧種のウミガメ類を調査・研究するために、2003年から室戸にも拠点をおいて活動しています。室戸岬周辺で操業する漁師さんの協力で、定置網にかかったウミガメなどを調査してきたそうです。館内を案内してくれた主任学芸員の田中優衣さんに、この水族館の特長をうかがいました。

小学校時代の名残の品が館内のあちこちに。左は主任学芸員の田中優衣さん。
小学校時代の名残の品が館内のあちこちに。左は主任学芸員の田中優衣さん。
手洗い場を利用したタッチングプール。この時は漁師さんが持ってきたナガレコ(トコブシ)が旬だったようです。
手洗い場を利用したタッチングプール。この時は漁師さんが持ってきたナガレコ(トコブシ)が旬だったようです。
タッチングプールではヒトデやナマコをさわることができます。
タッチングプールではヒトデやナマコをさわることができます。
2階の廊下には水槽がズラリ。ウツボなど地元の魚が見られます。
2階の廊下には水槽がズラリ。ウツボなど地元の魚が見られます。
集団生活を営むゴンズイがかたまりになって泳いでいました。
集団生活を営むゴンズイがかたまりになって泳いでいました。
テンジクザメの卵。お母さんザメは円形水槽の底にいました。
テンジクザメの卵。お母さんザメは円形水槽の底にいました。
3つある大きな円形水槽のひとつには、きれいなクロウミガメが泳いでいました。
3つある大きな円形水槽のひとつには、きれいなクロウミガメが泳いでいました。
ウミガメの赤ちゃん。この水族館はさすがにウミガメ類の展示が充実しています。
ウミガメの赤ちゃん。この水族館はさすがにウミガメ類の展示が充実しています。
水族館では珍しいサバの群れ。魚の群れを英語で「school of fish」というので、それにかけて学校を利用した水族館として“群れ”を演出した水槽を展示しているそうです。
水族館では珍しいサバの群れ。魚の群れを英語で「school of fish」というので、それにかけて学校を利用した水族館として“群れ”を演出した水槽を展示しているそうです。
高価なタカアシガニですが、脚が1本無くて売り物にならないからと漁師さんが持ってきてくれたそうです。
高価なタカアシガニですが、脚が1本無くて売り物にならないからと漁師さんが持ってきてくれたそうです。
「大敷(おおしき)」と呼ばれる大型定置網の模型。この水族館の魚は室戸沿岸の定置網からきた生徒が多いんです。
「大敷(おおしき)」と呼ばれる大型定置網の模型。この水族館の魚は室戸沿岸の定置網からきた生徒が多いんです。
小学校の教室の雰囲気をそのまま残した休憩室では、将棋をやっている親子もいました。海外から来た観光客は、日本のアニメによく出てくる教室の実物が見られて喜ぶようです。
小学校の教室の雰囲気をそのまま残した休憩室では、将棋をやっている親子もいました。海外から来た観光客は、日本のアニメによく出てくる教室の実物が見られて喜ぶようです。

 「この水族館の特長は、展示している魚たちがほとんど室戸でとれた室戸産だということです。売り物にならない魚や珍しい生き物を漁師さんたちがほぼ毎日持ってきて、無料で提供してくれるんです。この水族館は漁師さんたちのおかげで成り立っていると言っても過言ではありません。

 一般的な水族館は展示する魚をまず決めてから手配しますが、うちは漁師さんが漁を終えて持ってくるまで何が入ってくるかわかりません。魚をどう展示するかも来てから考えるんです。魚同士の相性もありますから、クラス替えもよくあります。うちは生徒の顔ぶれがどんどん変わっているので、毎週来ても飽きないと言う人もいます!」

 途中で小学校の先生と話しているような気分になりましたが、生徒たち、いや魚たちに対する愛情がひしひしと伝わってきます。ちなみに、新入生の魚や生き物が入ってきたら、一定期間展示された魚たち(卒業生?)は、海に放流されるそうです。

25mプールを利用した屋外大水槽。水は海水を引いてきてろ過しているそうですが、本当は水温を安定させるために地下海水を使ったり、プールに開閉式の屋根を設けたりしたいそうです。
25mプールを利用した屋外大水槽。水は海水を引いてきてろ過しているそうですが、本当は水温を安定させるために地下海水を使ったり、プールに開閉式の屋根を設けたりしたいそうです。
ゆうゆうと泳ぐシュモクザメ(ハンマーヘッドシャーク)。プールにサメが泳いでいる光景はなかなか見られません。
ゆうゆうと泳ぐシュモクザメ(ハンマーヘッドシャーク)。プールにサメが泳いでいる光景はなかなか見られません。
優美な姿の魚はシーラというそうです。
優美な姿の魚はシーラというそうです。
日本で最も産卵数が多いというアカウミガメ。外洋を回遊するので甲羅にフジツボやコケが付着しています。甲羅がきれいなのはたいていアオウミガメだそうです。
日本で最も産卵数が多いというアカウミガメ。外洋を回遊するので甲羅にフジツボやコケが付着しています。甲羅がきれいなのはたいていアオウミガメだそうです。
きれいな青色の魚がいるなと思ったらサバだそうです。日光の下で見るサバってこんなにきれいなんですね。
きれいな青色の魚がいるなと思ったらサバだそうです。日光の下で見るサバってこんなにきれいなんですね。