おでかけ

「むろと廃校水族館」に強烈にひかれて四国の東南端“室戸”へ 【室戸に行ってきました 前編】

世にもまれな廃校水族館はなぜ生まれたのか

 それにしても気になるのが、廃校と水族館という取り合わせ。全国で発生している廃校の数は、なんと毎年500校に上るそうですが、なぜ廃校が水族館になったのでしょうか。若月元樹館長にその経緯をうかがいました。

 「室戸はウミガメ協議会の調査拠点のひとつでしたが、調査が拡大するにつれて人員や支出が増えていき、何らかの収入がないと継続が難しくなりました。こんな魅力的な場所から撤退するのも惜しいなと思っていたときに、この小学校の利用者募集があり、見に来たらプールが2つもあったので、約10年間の活動で集めて保管場所に困っていた標本やカメを展示して収入を得ようと思いました。すると、市長のほうからそれなら水族館にしてはと提案されたんです。たまたま私自身もスタッフも水族館勤務経験者が多かったので、水族館を運営するノウハウはあったし、お金をかけずに作る方法も知っていた。定置網の調査で漁師さんとの人間関係もできていたので、綿密に準備して作り上げたわけではないですが、条件がうまく整っていたんですね」

 運命の歯車がうまく回転していったような感じですね。廃校水族館というネーミングは実に魅力的ですが、ちょっと変わっています。勝算はあったのでしょうか。

 「反対もありましたが、“廃校水族館”という名前にはこだわりました。“廃校”も“水族館”もマニアがいて興味を持ってくれると思ったんです。廃校を利用した施設はいくつか見ましたが、整備しすぎて学校らしさが消えたところが多かったので、市には学校らしさは極力残してくれと言いました。

 オープン(4月下旬)前はうまくいくはずがないと言う人もいましたが、ゴールデンウイークなどはすごくたくさんの人が来てくれました。想定来場者数は、室戸市には年間4万人と言ってありましたが、高知県には2万8千人と控えめに言ったら、(そんなに来るはずはないから)現実的な数字を入れて下さいと書類を突き返されました。実は今日(7月14日)で2万5千人を突破するんです(笑)」

深海に住む珍しいムツエラエイの標本。2015年に発見された当時、日本で6例目という希少な生物だそうです。
深海に住む珍しいムツエラエイの標本。2015年に発見された当時、日本で6例目という希少な生物だそうです。
廊下にはズラリと魚の標本が並びます。
廊下にはズラリと魚の標本が並びます。
標本の解説にはおいしいかおいしくないかまで書いてあり、笑えます。職員みんなで作ったそうです。水族館に行くとこれ食べられるかなぁという会話もよく聞かれますから意外に親切かもしれません。
標本の解説にはおいしいかおいしくないかまで書いてあり、笑えます。職員みんなで作ったそうです。水族館に行くとこれ食べられるかなぁという会話もよく聞かれますから、意外に親切かもしれません。

標本の解説にはおいしいかおいしくないかまで書いてあり、笑えます。職員みんなで作ったそうです。水族館に行くとこれ食べられるかなぁという会話もよく聞かれますから意外に親切かもしれません。 標本の解説にはおいしいかおいしくないかまで書いてあり、笑えます。職員みんなで作ったそうです。水族館に行くとこれ食べられるかなぁという会話もよく聞かれますから意外に親切かもしれません。

理科室にはタッパーウエアなどに入れられた標本が。ゆくゆくは、解剖できる検体が手に入らない東京や大阪の学生のためにサメやエイなどの解剖ができる場所にしたいそうです。
理科室にはタッパーウエアなどに入れられた標本が。ゆくゆくは、解剖できる検体が手に入らない東京や大阪の学生のためにサメやエイなどの解剖ができる場所にしたいそうです。
背中に背負えるカメの甲羅もありました。亀仙人みたいですが、けっこう重いです
背中に背負えるカメの甲羅もありました。亀仙人みたいですが、けっこう重いです
廊下の一角に置いてあったのは、ペンギンやワニのはくせい。室戸に生息していたわけではなく、外洋に出ていた漁師さんたちがお土産に持ち帰ったものだそうです。
廊下の一角に置いてあったのは、ペンギンやワニのはくせい。室戸に生息していたわけではなく、外洋に出ていた漁師さんたちがお土産に持ち帰ったものだそうです。
図書室には別の廃校などから譲り受けた本や新たに購入した本が。子どもたちが来て本を読んだり調べ物をしたりできるように館内で一番冷房を効かせているそうです。椎名漁港で水揚げされたミンククジラの骨格標本もありました。
図書室には別の廃校などから譲り受けた本や新たに購入した本が。子どもたちが来て本を読んだり調べ物をしたりできるように館内で一番冷房を効かせているそうです。椎名漁港で水揚げされたミンククジラの骨格標本もありました。
水族館らしい週の予定や目標が、小学校時代の黒板に書かれていました。
水族館らしい週の予定や目標が、小学校時代の黒板に書かれていました。

 いったいどんな場所なんだろうという興味で訪れた「むろと廃校水族館」。実際に来てみると妙に居心地がいいなぁというのが率直な感想です。学校らしさを極力残してあるせいか、水族館という非日常の世界に入り込むときの高揚感より、なじみのある場所に来たような気安さが勝る気がします。プールでサメが泳いでいるというシュールな感覚も味わえますが、室戸の海の一部をまるごと切り取ってきたような室戸づくしの水族館ですから、室戸の海にたゆとう自分をイメージしながら、ゆっくり時間をかけて回るのもいいかもしれません。

 廃校水族館にひかれて訪れた室戸ですが、実は室戸についてそれ以外のことは全く知ら

 ないことに気付きました。取材日翌日には「土佐室戸鯨舟競漕大会」も開かれるといいますし、もう1日滞在してさらなる「室戸」の魅力を探ってみることにしましょう。

〔後編に続く〕

「むろと廃校水族館」

住所:〒781-7101 高知県室戸市室戸岬町533-2
電話番号:0887-22-0815(OH!廃校!)
登校・下校時間:9:00~18:00(4月~9月)
        9:00~17:00(10月~3月)
入場料金:大人600円 子ども300円