カルチャー

特攻に異議唱え 混迷の時代に勇気を

OG16I3015カバー.indd 第二次世界大戦での敗戦から73年。戦争経験の“語り部”は減り続けているが、本を通して知ることができることは多い。特攻に異議を唱えて戦い続けた美濃部正少佐を描いたノンフィクション、『五月の蛍』(石川真理子著、内外出版社・東京)の電子書籍版が発売された。

 当時、美濃部正少佐は弱冠29歳。夜襲攻撃を行う飛行部隊『芙蓉部隊』を率いた若きリーダーだ。敗戦が濃厚となる中で、軍部は特攻作戦を決定したが、「精神力」で敵を倒すことができるという非合理な作戦を命ずる上官たちに対して、一人異を唱えた人でもある。

芙蓉部隊の隊員たち。平均年齢は21歳だった(『五月の蛍』より)
芙蓉部隊の隊員たち。平均年齢は21歳だった(『五月の蛍』より)
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前列真ん中が美濃部少佐(『五月の蛍』より)

 「ここに居合わせたお歴々は指揮官、幕僚でありながら、みずから突入する人がいません。必死尽忠と言葉では勇ましく仰せですが、敵の弾幕をどれだけくぐってきたというのですか? 失礼ながら私は回数だけでも、ここにいる方々の誰よりも多く突入してきました。この中に、一人でも先頭に立って特攻をしようという方はおられないのですか。今の戦局に、指揮官みずからが死を賭しておいでですか? 飛行機の不足を特攻戦法の理由の一つに挙げておられますが、さきの機動部隊来襲のおり、分散偽装を怠って飛行場の列戦に戦闘機を並べたまま、いたずらに焼かれた部隊のなんと多いことか。燃料不足で訓練が思うにまかせず搭乗員の練度低下を理由の一つにされていますが、指導上の創意工夫が足りないのではありませんか?」

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美濃部正少佐と妻の篤子。結婚間もないころ(『五月の蛍』より)

 誰もが冷静な判断力を失う窮地にあっても、しなやかな理性と、揺るぎない信念に基づいて行動できる人は多くない。混迷の時代を生きる私たちにも、大きな勇気と生きる指針、強く生きる知恵を与えてくれるかもしれない。