カルチャー

聖火トーチで復活、アルミは2度生きる LIXIL、仮設住宅の廃材を再利用

パラリンピックの聖火リレートーチを持つ伊木さん
パラリンピックの聖火リレートーチを持つ伊木さん

 住宅設備機器・建築材料大手のLIXILはこの秋、2020年東京パラリン ピックの「聖火リレープレゼンティングパートナーシップ」の第1号として、東 京オリンピック・パラリンピック組織委員会と契約を交わした。同社はパラリンピック聖火リレーのコンセプト「Share Your Light/あなたは、 きっと、誰かの光だ」のもと、聖火ランナーの募集をはじめとしたさまざまな企画を実施、大会成功に向け活動を進めていく。

▽全国で聖火採火式

 同社はオリンピック、パラリンピックの聖火リレートーチの「素材製造」を担当。デザイナーの吉岡徳仁さんが設計した長さ71センチ、重さ1・2キロのトー チは、上から見ると桜の花の形をしており、色はオリンピックが桜色と金色を合 わせた「桜ゴールド」、パラリンピックがピンク色が強い「桜ピンク」になって いる。素材のアルミニウムは、東日本大震災の復興で使用された仮設住宅、82 4戸分を解体した際に、窓枠やドアなどの廃材を再利用した。オリンピック用に 約1万本、パラリンピック用に約1千本分を用意する。

伊木さん(中)は仮設住宅の解体にも立ち会った(LIXIL提供)
伊木さん(中)は仮設住宅の解体にも立ち会った(LIXIL提供)

 パラリンピックの聖火リレーは、20年8月中旬以降、パラリンピック発祥の 地と言われる英国のストーク・マンデビルのほか、全国47都道府県で採火式を 実施し、開幕前に東京に集合する。一つ炎に統合された後、4日間、都内をリレー し8月25日の開会式に臨む。採火式を全国で行うのは、パラリンピックをより身近に感じてもらい認知度を高めるのが狙いだ。リレーも共生社会の実現を理念 に「新しいパートナーシップ」を体現するため、原則として初対面の3人が1組 となって走る。

▽一貫してパラを応援

 より華やかなオリンピックではなく、パラリンピックのリレーをスポンサード した理由について、LIXILオリンピック・パラリンピック戦略推進部の伊木直輝さんは「弊社は誰もが使いやすい製品を提供するのが目的であり、共生社会の実現と相通じるものがある。それに義足教室の開催など一環してパラリンピックを応援してきました。多くの人に聖火リレーに参加してほしいと期待していま す」と話した。

 19年3月、聖火リレートーチの素材製造を同社が担当していると正式発表されるまで、アルミの再利用については秘密にされた。伊木さんらは自治体に相談して仮設住宅のアルミ廃材を分けてもらう手はずを整え、解体業者には使途を明かさずに相当な数量を確保した。後で聖火リレートーチに利用されると分かると、 業者からは「用途をいろいろ想像していたけど、まさかトーチになるとは思わな かった。大変に誇らしい」と手放しで喜ばれたという。

 この2度生きたアルミに伊木さんは、意図しない形で最初から関わってきた。 2011年3月11日、東日本大震災が起きた時、入社1年目の伊木さんは金沢支社で営業に励んでいた。震災発生と同時に宮城県石巻市に入り、取引先の再建に一緒になって取り組んだ。4月には仙台市に転勤になり「被災者の復興は(生活資材を提供する)業者の再建から」と、がれきを取り除き、サッシで窓枠を組 んで現場に運び、昼夜を問わず仮設住宅建設にまい進した。3年前の夏に現在の 職場に移り、今度は復興オリンピック・パラリンピックの象徴として利用されるアルミの回収に努めた。

▽里帰りしたアルミ

 前述のように、同社は全国の小学校で義足の体験教室を17年春から開催して いる。この催しは共生社会の実現を目指す教育には格好の経験になるため開催希望が後を絶たず、この秋で200回を越えた。11月18日には、津波の被害を 受けた宮城県南三陸町の志津川小学校で開催。義足体験教室の最後に、聖火リレー のトーチが登場した。志津川地区の仮設住宅で使われたアルミも再利用されてお り、アルミの〝里帰り〟だ。教室の講師が「復興が進んで仮設住宅も解体されて いるが、住んだ家がなくなるのはさみしい。その思いをトーチに再利用すること で形にした」といきさつを説明すると、児童から「僕も仮設に住んでいた」と声が挙がった。

志津川小の義足教室でオリンピック(左の列)とパラリンピックの聖火トーチ (右の列)が出会った。真ん中はパラリンピックのマスコット、ソメイティ
志津川小の義足教室でオリンピック(左の列)とパラリンピックの聖火トーチ(右の列)が出会った。真ん中はパラリンピックのマスコット、ソメイティ

 仮設住宅にあっては、復興へ進む家族を守り、解体された後も、オリンピック ・パラリンピックの絆の象徴として聖火をともす。形を変え、何度も役に立つア ルミ。伊木さんは「聖火トーチがどのようないきさつでできたか、多くの人に知っ てほしい。仮設から出て新たな生活をしている人もいるが、まだ仮設住まいの人も多い。復興は道半ばであることにも気づいてほしいと思います。希望がある限 り、義足教室も続けていきたい」と話した。真の共生社会の実現に向け、同社の 取り組みは20年のオリパラを越え続いていく。復興庁の発表によると、東日本大震災大震災による避難者の数は令和元年10月9日現在、全国で約4万9千人。 うち仮設住宅などに住む人は約2万5千人いる。

義足教室に参加した志津川小の皆さん
義足教室に参加した志津川小の皆さん