カルチャー

コロナ禍で夢を奪われた球児を追いかけた 松井秀喜氏も推薦する『あの夏の正解』

『あの夏の正解』
『あの夏の正解』

 新型コロナウイルスの影響で甲子園が中止となった2020年、愛媛県の済美高校と石川県の星稜高校、2校の強豪野球部のひと夏に密着したノンフィクション『あの夏の正解』 (1,400円、税別)が、新潮社(東京)から発売された。

 未曽有の試練に直面した高校球児たちの記録。著者の早見和真氏は、桐蔭学園出身(元巨人・高橋由伸氏の2学年後輩)の元球児。2008年、強豪校の補欠部員を主人公にした青春小説『ひゃくはち』でデビュー。2020年に『店長がバカすぎて』で本屋大賞ノミネート、『ザ・ロイヤルファミリー』でJRA賞馬事文化賞と山本周五郎賞を史上初・ダブル受賞した注目の作家だ。

 早見氏は、コロナ禍で激変する世界を前に「初めて小説を書くことに迷いが生じた」という。そんな時に出会ったのが、夏の甲子園が中止になったばかりの高校球児たち。著者自身が彼らの言葉を切実に聞きたいと願ったところから同書の取材が始まった。

 2020年、新型コロナ拡大によりセンバツに続いて夏の甲子園も中止。夢を奪われた球児と指導者は何を思い、どう行動したのか――。退部の意思を打ち明ける選手、迷いを正直に吐露する監督。「甲子園につながらない」各都道府県の代替大会と、無観客で開催された「甲子園交流試合」の裏側にあった現場のリアルが描かれている。

 「高校野球って甲子園がすべてなのかな?」「なぜ辞めずに最後まで続けるの?」「本気で野球をやる先に何がある?」……。「このまま終わっちゃうの?」という、元高校球児の著者だからこその厳しくも温かい問いかけの裏には、自身が高校三年生の春、センバツ開幕直前に起きた阪神淡路大震災の経験と「社会の空気に流されず、自分の頭で考え抜いてほしい」という願いがある。その問いかけに正面から答える星稜高校の内山壮真選手(ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団)をはじめ、個性豊かな選手・指導者の言葉も読みどころとなっている。 松井秀喜氏(元ニューヨーク・ヤンキース)は「彼らは逆境をエネルギーにする術(すべ)を身につけた」、重松 清(作家)は「高校球児だけじゃない。これは、『あの夏』を生きたすべての人の、無念と希望の物語なのだ」、宮下奈都氏(作家)は「特別な夏を越えた彼らに、思いがけない答えを教えてもらった気がする」、NON STYLE 石田 明氏(お笑い芸人)は「登場人物それぞれが違う意見なのに全員に共感できた。そして弱小校で万年補欠だった僕はひたすら泣いた」との推薦コメントを寄せている。

著者:早見和真(はやみ・かずまさ)
著者:早見和真(はやみ・かずまさ)