カルチャー

模索続くコロナ禍の“空間共有” 感染対策を一段と強化する大学や劇場も

AKB48劇場(東京都千代田区)。
AKB48劇場(東京都千代田区)。

 2度目の緊急事態宣言解除後も終息が見えず、長引くコロナ禍。大勢の若者らがパーティーを楽しむ海外ニュースが時折流れてくるが、賛同できないものの、はめを外したくなる彼らの気持ちもちょっぴり分かる。
 封じ込めにほぼ成功した国もあるが、日本をはじめ多くの国は2年たってもコロナ禍が続く。高齢者はもちろんだが、活動的な青春真っ盛りの若者や働き盛りの中高年にとってはあまりに長すぎる“つらい冬”である。

対策強化で対面授業拡大

 深刻なのは貪欲に学ぶべき時期に大学生ら若者が、同じ空間を共有して学ぶ機会を喪失してきたことだ。大人数の若者を対象とする大学の「マスプロ教育」がコロナ禍では“マイナス”になっている。

 バイトで授業料と生活費を稼ぐ苦学生の一部は、コロナに伴うバイト先の飲食店の苦境で働く場を失った。孤独な空間で学ぶオンライン授業の味気なさと経済的苦境の“ダブルパンチ”で大学に別れを告げる若者も少なくないと聞く。「オンライン授業は便利」「現代若者気質はべたべたした関係を求めていない」などと訳知り顔のご託宣(たくせん)は、ダブルパンチでキャンパスを去った若者には何の慰めにもならないだろう。

 こうした中、学生を迎える大学側も事態を静観してきたわけではない。立教大学(東京都豊島区)は今春から、対面授業の割合を大幅に増やすため、換気設備工事や特殊な透明マスクの購入などで総額約3億7500万円の巨費を投じた。心強い動きだ。

設置された換気設備。
設置された換気設備。

 今春から1年次必修の「言語科目」の大半を対面授業で行う。アルコール消毒液の設置や検温など従来の対策で終わりにせず、コロナ感染対策を一段と強化した。

 換気設備工事費は約2億8,000万円。適正な室温を保ちつつ、厚生労働省が推奨する1人1時間あたり30立方メートルの換気を確保する。換気設備のない教室ほぼすべてに全熱交換機「ロスナイ」(三菱電機)を設置した。

 化学的処理をしたフィルムと不織布を組み合わせた特殊なマスク「ルカミィ」(栄商会)は約9,000個購入。発音時の口の動きを観察することができ、言語科目などで使う。事業費は約940万円。

特殊なマスク。
特殊なマスク。

 そのほか、基礎疾患などの理由で対面授業に参加できない学生のため、オンライン・ミックス型授業対応マルチメディア機器をほぼすべての教室に設置。カメラ付きスピーカーやディスプレイなどのマルチメディア機器を整備し、対面授業に参加できない学生が円滑にオンライン授業に参加できる体制を整えた。機器操作のサポート人員も増やした。事業費は約8,500万円。

一体感魅力の劇場

 東京・秋葉原のAKB48劇場(東京都千代田区)。劇場入り口ゲートには白い霧状の水煙を吐く機器が3月末に設置され、来場者は全員、その水煙を浴びて入場する。

劇場入り口ゲートの除菌剤噴霧機器。
劇場入り口ゲートの除菌剤噴霧機器。

 水煙は来場者への演出ではなく、コロナ対策強化の一環。塩水を電気分解して生成した除菌液(商品名ウイルスバスターウォーター)を薄めて噴霧したもの。この除菌液は日本水泳連盟が使用を推奨し、国内の大学プールなどの除菌に活用されている。米国国防省(ペンタゴン)の特許技術が活用されているという。

 劇場の運営責任者、吉田竜央さんは「入場者上限を増やすに際し、コロナ対策を強化するために導入した。お客さまの安全を第一に考えました」と話す。

 入口ゲート以外にも劇場内の2カ所にこの除菌液を噴霧する装置を設置。劇場の空間全体に効果が広がるようサーキュレーターを動かし水煙を拡散している。

劇場内に設置された噴霧機器。
劇場内に設置された噴霧機器。

 現在(4月16日時点)の入場者の上限は205人。本来は250人入場可能だが、コロナ感染対策のため、最前列を空席にするなど、アイドルとファンの一体感が魅力の劇場に必要な対人距離を確保せざるを得ないという。緊急事態宣言下では現在の半分近い125人に上限を減らしたこともある。

 さらに一体感づくりには欠かせない大声を出しての応援は厳禁。ファンは拍手とペンライトのみで応援する。それでも入場を希望するファンの数は、コロナ禍以降の全公演(平日1回公演、土日2回公演)で、入場者の上限を上回った。運営責任者の吉田さんは「AKB48の公演を楽しみに足を運んでいただけることがありがたい。ファンの皆さまが思いっきり声を出して応援できるようになってほしい」とファンに感謝し、コロナ禍の早期終息を願った。

続く模索

 AKB48劇場と同様、適度な広さの空間が出演者とファンの一体感を高める効果がある劇場やライブハウスなどは、コロナ対策への関心が当然高い。別の劇場の関係者がAKB48劇場の見学に訪れたこともあるという。吉田さんは「除菌水の説明看板を置くなどして目に見える形で感染対策を強化したことはファンの方の安心感につながったかもしれない」と語る。

 噴霧機材含め、除菌水噴霧一式をAKB劇場に販売したオリジン(福岡県筑紫野市、寺﨑秀嗣代表取締役)は会社や店舗向けに手指除菌剤を販売するほか、劇場やライブハウス、イベント会場など屋内の“空間除菌”を提案する事業を拡大している。

 担当者は「ウイルスバスターウォーターを希釈して噴霧すると、安全で効果的な除菌が期待できる。要望に合わせて、噴霧機材のサイズや噴霧時間、噴霧形態などをカスタマイズして提案することも可能。噴霧機材は置くだけなので設置工事は不要。導入コストも比較的低く抑えられる。最近は、いくつか問い合わせも来ているので、さらに販売を強化していきたい」と意気込む。

 まだまだ長引きそうなコロナ禍。リモート、オンラインの「電脳空間」の共有で満足できる人はある意味幸せだが、そんな人ばかりでもあるまい。高速通信規格「5G」の即時大量通信でほぼ時間差なく臨場感あるリモート授業になれても、同じ空間で机を並べて仲間と勉学に励み、ときに口角泡をとばして学友と議論する醍醐味(だいごみ)は薄れない。声と動きをそろえて共に好きなアイドルを応援するファンとアイドルの一体感は、同じ空間を共有してこそより強まるだろう。

 コロナ禍が続く限り、大勢の人々が集って共に学び、楽しむ安全な空間を維持、支える人たちの模索に終わりはない。