カルチャー

パラリンピックに関心を ENEOSが社員に呼び掛け

トークショーに出席した武井壮(左)と瀬立モニカ
トークショーに出席した武井壮(左)と瀬立モニカ

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、関心が薄れつつあり機運醸成がままならない東京2020パラリンピック。こうした状況の中でも、パラリンピック競技を応援しようと社員に促す活動を続けているのが、東京大会ゴールドパートナーのENEOSだ。タレントで6月に日本フェンシング協会の新会長に就任した武井壮さんがサポートリーダーになり、パラリンピアンを招いてのトークショー(オンライン形式)を社内向けに開催。競技の面白さや選手のエピソードを引き出し、パラ競技への興味を高めようとしている。

ベンチプレス80キロの瀬立

 本大会前、最後のトークショーが6月24日、カヌー代表の瀬立モニカ選手をゲストに開かれた。最初に動画などを使いパラカヌーのスプリント種目を紹介した。距離はわずか200メートル。選手のパドリング(こぐこと)は軽快で水面を滑るように進む。一番障害の軽いクラスだと時速20キロにも達し、40秒ほどでゴールする。瀬立は「競技はとてもシンプル。スピードが上がった時の、パドルで空気を切り裂く音を感じてほしい」と魅力を話した。

 23歳の瀬立はL1という一番障害が重いクラスで、体幹の機能がなく胴体を動かすことが困難なため、腕と肩だけでパドルを操作する。腕と肩の力を鍛えるため、車いすに乗ったまま懸垂をしたりする。寝た状態でバーベルを挙げるベンチプレスでは「80キロ」を挙げる。一緒にトークショーの司会進行を務めたアイドルグループSTU48のメンバー、甲斐心愛(ここあ)さんから「武井さんは何キロ?」と聞かれると、武井さんは「僕は120キロ」とさりげなく答えた。しかし、鍛え上げられた瀬立の上半身に「体の厚みが違う」と、武井さんはしきりに感心していた。

悲鳴聞こえる猛練習

 瀬立の猛練習は想像を超える。250メートルを全力でこぐ。これを4回連続で行う。短い休憩の後、もう一度、同じことを繰り返す。計8回。「体の中から悲鳴が聞こえてくる」という。カヌー会場である「海の森水上競技場」と同じ東京都江東区出身で、中学生の時からカヌーに取り組んでいた。しかし、高校1年の時に体育の授業中にけがをして車いす生活になった。その後、パラカヌーに転向。2年で2016年のリオデジャネイロ・パラリンピックに出場し8位に入った。成績は徐々に上がり東京ではメダルを狙える位置に。

 だから、大会の1年延期は「自分によりチャンスがくると思った」と前向きにとらえた。しかし、練習量は増えたものの同時に大会も中止が相次いで腕試しができず「この練習は何のためにしているのか」と悩んだという。こうした閉塞状況を「1日ごとに目標を立て、気持ちを切り替えること」で乗り越えてきた。この話に武井さんは「確実に力がついていると思う」と高く評価した。

目指すはスマゴリちゃん

 先輩パラアスリートで04年アテネ、12年ロンドンの両パラリンピックに車いすマラソンで出場した花岡伸和さんから「モニカの笑顔で世界を明るくして」との応援メッセージが紹介され、武井さんからも「この先、何十年も見ることになる東京大会の名シーンが生まれるように」と期待が寄せられた。瀬立の笑顔には、何かを成し遂げそうと思わせる落ち着いた雰囲気がある。一方で「わたしが目指しているのはスマートなゴリラ。スマゴリちゃん」とジョークも。トークショーの主催であるENEOSの象徴であるエネゴリくんに引っかけたあたり、気配りとちゃめっ気も十分。

 パラリンピックでの観客数を制限するか無観客にするかの判断は7月中旬までに決まるが、ENEOSは4,000人での応援を予定している。