カルチャー

日本画家の千住博氏が絵画寄贈 高野山大学で除幕式

高野山大学にて行われた、千住博氏が寄贈した絵画の除幕式。
高野山大学にて行われた、千住博氏が寄贈した絵画の除幕式。

 高野山大学(和歌山県伊都郡高野山町)が6月26日、日本画家の千住博(せんじゅ・ひろし)氏が寄贈した絵画の除幕式を大学玄関ホールで開催し、アメリカ・ニューヨークから千住博夫妻が駆けつけた。

 同大学のキャンパスは、高野山真言宗総本山・金剛峯寺の正門前から100メートルほどの距離にある。密教学や仏教学を専門的に学べ、1886年創設の由緒ある大学だ。同大学の添田隆昭(そえだ・りゅうしょう)学長は絵画の除幕に先立ち、「若い学生たちが学ぶ、学び舎にふさわしい絵だと思った。ぜひこの絵が末永くこの場所で学生たちを見守るよう祈っています」と挨拶。司会の合図とともに絵画が披露された。

挨拶する添田隆昭高野山大学学長。
挨拶する添田隆昭高野山大学学長。
千住博氏の最高傑作となった金剛峯寺・襖絵製作

 千住博氏は昨年10月、白襖が長年入れられていた金剛峯寺の「囲炉裏の間」と「茶の間」に、巨大な「瀧図」と「断崖図」の2作品を奉納した。この作品によって、日本芸術院賞および恩賜賞を受賞している。芸術分野で顕著な功績のあった人に贈られる名誉な賞だ。作品紹介の前に、「これ以上の作品は描けないと思ったのが正直なところ」と、2015年秋から奉納までの日々を振り返った。製作中に還暦を迎え、「全部が振り出しに戻った気持ちで、(奉納した)作品を見届けて、これからどうしよう」と悩んでいたという。

金剛峯寺襖絵『瀧図』。
金剛峯寺襖絵『瀧図』。

 奉納時に世話になった金剛峯寺の添田隆昭総長(当時)が「学長に就任されると聞き、自分がまったく描いたことのない絵を描こう」と思い立った。それが今回寄贈された、もう一つの『瀧図』だ。

モノクロの滝と鮮やかな色彩の滝

 白い滝を引き立てる鮮やかな緑と青は、「高野山に上ったときにまず見る“緑”、そしてみずみずしい水の“青”」をイメージしたという。今まで使ったことのない若々しく初々しい色彩にすることで、金剛峯寺の襖絵製作で「知らず知らずのうちに追いかけていた」という「深淵」なモノトーンの『瀧図』とは全く趣の異なる絵画になった。悠久の歴史を持つ高野山に寄贈するものだからこそ、「天然の絵具(群青と緑青)」と「牡蠣やホタテが原料の胡粉(白)」を用い、「千年経っても変色しない」素材を厳選した。

高野山大学に寄贈された『瀧図』。
高野山大学に寄贈された『瀧図』。
二つの『瀧図』は兄弟・親子の関係

 二つの『瀧図』には、共通する構図も取り入れている。「金剛峯寺の『瀧図』は両方に滝があって、真ん中に暗い部分があります。その遠く深いところに“お大師さま”(弘法大師空海)がいらっしゃると思いながら描いていました。それでこの作品も、滝の真ん中が開いています」。後日、金剛峯寺に奉納した『瀧図』の一部である床の間の障壁画の裏側に、弘法大師像(秘仏)が実際に設置されていることを知り驚いたという。

金剛峯寺の床の間に描かれた『瀧図』の部分。
金剛峯寺の床の間に描かれた『瀧図』の部分。

 「この作品は、金剛峯寺の床の間の作品の兄弟というか、親子というか、親戚のようなもの」。金剛峯寺と高野山大学に納められた二つの『瀧図』は、千二百年の歴史を守り続ける高野山とともに、これからも時を刻んでいく。