カルチャー

サントリー「リモート蒸溜所ツアー」に参加してみた ウイスキー「白州」の製造工程をオンラインで見学

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 コロナ禍で多くのイベントが中止や延期、リモート開催を余儀なくされている。ワイン・ウイスキー工場、酒蔵見学もそのひとつだ。見学後に現地で出来たてを味わうというお楽しみはないものの、遠隔地でこれまで参加できなかった人が気軽に参加できるようになった。酒造会社にとっても参加人数を限定せずに開催できるといったメリットもあるようだ。

 サントリースピリッツ(東京)も、コロナ前まで実施していたウイスキー工場見学を「リモート蒸溜所ツアー」に変更し、山崎蒸溜所(大阪府島本町)と白州蒸溜所(山梨県北杜市)で開催している。

 リモート蒸溜所ツアーは、2021年1月21日から360度VR(仮想現実)で自由に工場見学ができる無料ツアーを開始。2月6日から、ナビゲーターがライブで案内してくれる「オンライン・ライブ(有料)」が始まった。当初の紅葉の森を撮影した動画を、7月17日から新たに新緑の風景にリニューアルした白州蒸溜所の「オンライン・ライブ体験会」に参加してみた。

森の中にある「白州蒸溜所」。
森の中にある「白州蒸溜所」。

 オンライン・ライブは約60分。事前にシングルモルトウイスキー「白州」180ミリリットル瓶とライブツアー専用のテイスティンググラスが送られてくる。ライブは、JR中央本線・小淵沢駅を降りるところから始まる。駅前からバスに乗り込んで約20分で森の中にある白州蒸溜所に到着。実際に訪問しているみたいだ。

 白州蒸溜所は1973年に設立。標高約700メートル、約82万平方メートルの敷地を持つ。南アルプスの麓にあり、ウイスキー造りに適した軟水を確保しやすいといい、敷地内には「サントリー天然水」の製造も行っている。

醸造棟の入り口。
醸造棟の入り口。

 森を散策するように動画が導いてくれ、醸造棟へ向かう。ナビゲーターの女性が「こちらは気温24度。昼頃から雨が降っています。みなさんの所はいかがですか?」とあいさつ。ライブならではの臨場感がある。ウイスキー造りの工程について「仕込み」「発酵」「蒸留」「貯蔵」の順で説明してくれる。「発酵槽」はステンレスが主流となっている中、木桶にこだわっているという。「木桶は保温性に優れています」と説明していた。

蒸留釜で原酒に

 蒸留釜は16基。熱の通りがいい銅製で、釜の形はストレート型と、くびれがあるランタン型がある。案内中にチャットで質問でき「釜の違いで、出来る原酒の味が違うのか?」と質問。「ストレート型では重厚感がある原酒、ランタン型は軽やかな味の原酒が出来る」と教えてくれた。原酒は無色透明でたるに詰めることで琥珀(こはく)色に変身するのだという。

ユニークな形をした蒸留釜。
ユニークな形をした蒸留釜。

 時折クイズが出されるのも楽しい。「白州の原料は何?」「初留(蒸留)の際の温度は?」など選択問題をパソコン上でクリックして回答すると、ナビゲーターがすぐに正解を発表してくれる。

 再び森の小径(こみち)を通って貯蔵庫に向かう。おなじみの丸っこいたるが並んでいる。樹齢100年以上のホワイトオーク材だという。世界的にはたるは外注化するのが一般的だというが、サントリーは近くにたるの製造工場を持っている。白州蒸溜所では比較的小さいサイズのたるを使用。「熟成が進みやすいから」と説明してくれた。ウイスキーは長く寝かせればおいしくなるとは限らず、たるに詰めて十数年先に商品になるという。その時期はブレンダーが決めるそうだ。

 意外だったのは、貯蔵庫は温度調節をしていないという。たるを置いた場所によっても原酒の個性が変わっていくというが、位置の移動はせず、置いたままということも初耳だった。

たるが並ぶ貯蔵庫で熟成を重ねる。
たるが並ぶ貯蔵庫で熟成を重ねる。

トワイスアップ

 いよいよテイスティングだ。送られてきたグラスに少しだけ「白州」を注ぐ。まず熟成具合を見るため「色を確認」。次に香りを立たせるため「グラスを軽く回す」。そして「口に含む」と思ったら「加水する」だった。「トワイスアップ」と言い、ウイスキーと同じ量の常温水を入れることで、本来の香りを感じることができるのだという。

 ストレートも味わってみたいと思いチャットで質問してみた。「ストレートと加水の違いを味わってみるのもいいですね。これが正解ということはないんです」と言われ安心。

 ウイスキーの香りは多彩だ。香りの分類表では「たるの香り」「穀物の香り」「ピート(泥炭)の香り」など大分類があり、「たるの香り」にも「ウッディ」「シェリーたるの香り」「熟成した木香(きが)」がある。穀物も「トウモロコシ」「モルトエキス」など4分類に分かれている。

「リモート蒸溜所ツアー」参加者に送られてくる「白州」とテイスティンググラス。
「リモート蒸溜所ツアー」参加者に送られてくる「白州」とテイスティンググラス。

オンラインの魅力

 酒飲みは、ただウイスキーを飲むだけでも満足だが、製造工程などさまざまな知識を知ることで、味わいも変わってくる。オンライン・ライブでは最後に、ハイボールのおいしい作り方や料理とのマリアージュも教えてくれた。ライブでは発酵槽の中をアップで見たり、蒸留釜に近づいたり、現地訪問ではできないオンラインならではの魅力も楽しむことができた。

 サントリースピリッツは、リモート蒸溜所ツアー開始以降、山崎と白州蒸溜所合わせて約1万4000人が参加したといい、今後も土日を中心に各回定員200人での開催を予定している。サントリーは「コロナ禍が収束しても継続していきたい」としている。

 リモート蒸溜所ツアーの参加費は3,300円。日程と申し込みはサントリーのサイトで。

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