日本のエンターテインメント業界をけん引するコナミホールディングス(コナミHD)が 米国に進出してから25年。5月、ゲーミング産業発展への貢献が認められ、創業者で会長 の上月景正氏(81)が現地の業界団体から表彰され、殿堂入りを果たした。新型コロナウイ ルスの感染状況が落ち着き、行動規制の緩和を受けて回復基調の米ゲーミング市場。コナミ HDの現地での取り組みに期待が寄せられている。
米国で確かな爪あと
上月氏が殿堂入りしたのは、米ワシントンに本部を置く南部のカジノ業界団体、ミシシッピ ゲーミング&ホスピタリティアソシエーション(MGHA)。ミシシッピ州および米南部の ゲーミング産業の発展に貢献した人物が毎年選出され、今回は5人が受賞した。上月氏はア ジア人として初めて選ばれたという。
ゲーミングビジネスは各国・地域の当局からの公式ライセンスが必要な許認可ビジネス で、米国では州ごとの取得が求められている。コナミHDが1997年にネバダ州のラスベガ スに現地法人「コナミゲーミングインク(KGI)」を設立後、ミシシッピ州のゲーミング 委員会から認可を得たのが2000年。米国内では、ラスベガスを有するネバダ州に次いで2 番目に早いライセンス取得で、以降長年にわたる企業活動が評価された。
今年5月5日、カジノを備えた高級ホテルが立ち並ぶミシシッピ州のガルフコーストで 行われた表彰式には、ゲーミングビジネスの関係者が多数出席した。上月氏は渡米を控えた ため、KGIのトーマス・ジンゴリ取締役副社長が喜びのコメントを代読した。
上月氏は「1997年にカジノゲーム製造子会社を設立し、2000年に、ミシシッピゲーミン グ委員会から公式ライセンスを付与され、この美しい州で真に卓越したリゾートをけん引 する最も認知されたゲーミングの専門家や経営陣と以後数十年にわたり続くパートナーシ ップへの道が開かれました。今回、そうそうたる受章者とともに、ミシシッピゲーミングの 殿堂に表彰されたことを光栄に思います」と喜びの声を寄せた。
KGIのスティーブ・サザーランド取締役社長兼最高経営責任者も「上月氏の下で20年以 上にわたり、責任、継続性、誠実性を重視し事業を行ってきた。その功績をたたえられ光栄 に思う」と上月氏の殿堂入りをたたえた。後進の育成に積極的
日本で数多くの産学連携を行っているコナミHDだが、米国も例外ではない。ゲーミング 産業の発展に寄与することを目的に、州立ネバダ大学ラスベガス校(UNLV)との産学連 携を2010年から開始。大学内にある国際ゲーミング研究所(IGI研究所)では、カジノ ホールを再現した施設「コナミ・ゲーミング研究所」が設けられ、ゲーミングビジネスから 依存症対策まで、広域な研究および教育が行われている。
ゲーミング産業や観光業に携わる人材育成を行うホスピタリティー学部の新学部棟の建 設には、ラスベガス・サンズら地場のIR大手と並び多額を支援。2017年に完成した学部 棟内にある「コナミ・インタラクティブ・テクノロジーラボ」では、前出の研究所と同様に ゲーミングに関する最先端の研究や教育が実施されている。
ホスピタリティー学部のストー・シューメーカー学部長は、コナミHDの支援によりリモ ート授業に対応可能な最新設備が整ったと説明。新型コロナによる行動規制中も世界中の 学生に向けてハイレベルな配信授業が行えたと述べた。同校のキース・ホワイトフィールド 学長も、コナミHDとの産学連携について「当校にとり非常に光栄なことで、今後も産学連 携を通じて良い協力関係を継続していきたい」とコメントした。
広々とした新学部棟内には、学生が運営するカフェなども併設。実践的な学習環境下で、 生き生きと勉学に励む学生たちの姿が印象的だった。コナミHDは今後も同大学への支援 を続け、ゲーミング産業のさらなる発展に貢献していく考えを表明している。
ゲーミング業界でもキャッシュレス化
1973年に設立し、アミューズメント機器の製造業から始まったコナミHDがゲーミング ビジネスに参入したのは96年。米法人設立を経て、2000年にネバダ州でゲーミング機器製 造・販売のライセンスを取得。世界最大規模の米ゲーミング機器市場へ日本企業として初め て参入した。
商品の品質はもとより、企業倫理やコンプライアンスまで徹底的に調べられる厳格な審 査をその後も各地でクリアし、現在までに北米をはじめ全世界で400以上のライセンスを 取得。スロットマシンなどのゲーミング機器や、カジノのマネジメントシステムをグローバ ル市場に提供している。
現状は新型コロナの感染拡大が落ち着き、カジノ施設への入場制限が緩和された北米や 豪州で、ゲーミング市場が早くも活気を取り戻してきている。実際、ライターが今年5月上旬にラスベガスの中心地、ストリップ通りを訪れたところ、米国各地からやって来たと思わ れる家族連れや団体旅行者で深夜まで大にぎわいだった。通りに立ち並ぶ統合型リゾート (IR)内のカジノも、ゲームを楽しむ人々で埋め尽くされており、今後、渡航緩和が進め ば外国人観光客でさらににぎわうことが予想される。
客足の増加が見られる回復基調の中、コナミゲーミングインクの主力商品であるスロッ トマシンは、得意とするエンターテインメント性の高いコンテンツがプレーヤーの心をつ かみ高稼働を記録。マシンの設置台数も増加している。
スロットマシンの情報や顧客データ、会計などをリアルタイムで管理するカジノオペレ ーター向けの支援システム「シンクロス」の契約も好調だ。昨年ラスベガスに開業したIR 「リゾート・ワールド・ラスベガス」も同システムを導入。機能の1つ「マネークリップ」 は、ラスベガス初のキャッシュレス・カジノシステムの導入事例となった。
KGIの笹生正美取締役は「他社との競争が激しい事業だが、シンクロスはほぼメンテナ ンス不要。顧客ニーズに対応できるシステムの融通性が市場で高評価をいただいている」と 話し、普及に期待を示した。