カルチャー

マウスガードで学校現場のけが防止を 浦和学院高で実習、日本学校歯科医会

220610講話1

 口内に装着する「マウスガード」の普及を進めている日本学校歯科医会(川本強会長)は6月上旬、浦和学院高(埼玉)の野球部員向けに、専門家による安全指導の講演と、市販の素材から自分の口に合わせたマウスガードを自作する実習を行った。

 学校現場で、マウスガードの活用を通じてスポーツなどによる歯や口のけがを防ぐため、日本学校歯科医会が地元加盟団体の協力のもと、安全教育の一環として独自に事業を展開している。

 この日、さいたま市緑区の浦和学院高の教室には、歯科医師や専門家らと、野球部の1年生36人、高間薫・学校法人明星学園常務理事(元野球部長)らが集まった。

講演する安井・明海大学学長
講演する安井・明海大学学長

 「野球を中心とするスポーツ活動における歯・口の外傷防止~歯・口は大切な臓器~」と題して講演したのは、歯学博士の安井利一・明海大学学長。スポーツ歯科の専門家で、日本学校歯科医会の学校安全教育調査研究委員会アドバイザーを務めている。

 安井氏はまず、「野球では打球や送球が口付近に当たったり、他の選手と接触したりして、前歯を折るなどの大きなけがになることがある」と指摘。

 「口腔内の外傷は選手生命を脅かす問題となる可能性がある。顎や顔面のけがも含め頭部・頸部の外傷でもあり、適切で早急な対応が必要だ」と説明。「歯の外傷、特に多い前歯のけがは、そしゃくや発音、審美にも影響する」とも述べた。

 こうしたけがの予防策としては、発生事例を調べて予見性を高めておくとともに、「安全具の使用、特に歯・口腔内の外傷予防ではマウスガードが有効だ」と説明した。装着によってけがが抑えられているという統計もあるという。

実習に参加した野球部員
実習に参加した野球部員

 格闘技の選手のマウスガード装着をテレビなどで見る機会は多く、ボクシングやアメリカンフットボール、ラグビーなどでは既に選手の装着が義務付けられている。その一方で、「野球は競技人口が多いにもかかわらず、普及が遅れている」と説明し、「歯や口に障害が残るような大きなけがをしないよう、マウスガードを使ってほしい」と訴えた。

 マウスガードには、歯科医院が歯列模型から作るカスタムタイプと、市販の既製品を湯で温めて軟らかくし、自分で型を作るタイプがあると説明。「使用法のほか、消毒など維持・管理の方法も学ぶ必要がある」と指摘した。

 最後に「マウスガードで口腔内のけがを防ぐなど、一人一人が取り組む安全があってこそ、チーム力の向上につながる」と述べた。

マウスガード作りをする野球部員
マウスガード作りをする野球部員

指導者、保護者の理解が重要 戸田・日本安全教育学会理事長

 この日の実習は、日本学校歯科医会の学校安全教育調査研究委員会アドバイザーを務める、明海大学歯学部社会健康科学講座(スポーツ歯学分野)の松本勝准教授が中心となり、部員を指導した。

 日本安全教育学会の理事長で、同会・同委員会委員長を務める戸田芳雄氏も、この日の講演、実習に加わった。戸田氏はマウスガードの装着について「野球は競技者数が非常に多く、普及の意義は大きい。学校現場では、指導者、保護者の理解が重要だろう」と述べた。

 戸田氏は日本高野連も普及に向けて動いているとし、「学校現場の安全のために、教育と普及の両方を図るのが重要で、それには時間がかかる。関係者はじっくり取り組むべきだ」と強調した。