社会

次世代放射光で「未来のモノづくり」 企業向けウェビナー、11月22日開催

建屋がほぼ完成したナノテラス。2022年9月撮影(光科学イノベーションセンター提供)。
建屋がほぼ完成したナノテラス。2022年9月撮影(光科学イノベーションセンター提供)。

 物質の超微細な構造や機能を解析できる放射光について紹介する企業向けオンラインセミナー「放射光で広がる未来のモノづくり~『共創』で輝く『光イノベーション都市・仙台』~」が、11月22日(火)に開かれる。放射光は、光学顕微鏡や電子顕微鏡では見えないナノメートル(ナノは10億分の1)級の世界を可視化でき、製品開発を加速するツールとして活用されている。セミナーは、仙台市の東北大青葉山新キャンパスに建設中で、2024年度に本格稼働すれば世界最高性能となる「次世代放射光施設(愛称:ナノテラス)」を知ってもらおうと、仙台市が企画した。参加は無料。

電子を光速近くまで加速するナノテラスの加速器(光科学イノベーションセンター提供)。
電子を光速近くまで加速するナノテラスの加速器(光科学イノベーションセンター提供)。

 放射光は、光速近くまで加速した電子を曲げたときに放出される極めて明るい光(エックス線)。放射光施設は、世界に約50カ所、国内では兵庫県佐用町の「SPring-8(スプリングエイト)」など9カ所ある。国内10カ所目となるナノテラスは、放射光の中でも波長の長い「軟エックス線」を主に使い、軽元素や生体材料の分析を得意とする。このため、食品、医薬品、資源・エネルギー、金属加工など幅広い産業分野で強みを発揮すると期待されている。

放射光の活用が期待される産業分野(東北大提供)。
放射光の活用が期待される産業分野(東北大提供)。

 セミナーでは、ナノテラスを運営する一般財団法人光科学イノベーションセンターの高田昌樹理事長が、施設の概要や特徴、企業にとってのメリットなどを説明する。SPring-8など既存施設の放射光を製品開発や技術改良に生かした実例として、虫歯予防ガムを開発した江崎グリコ(大阪市)の担当者と、小惑星探査機はやぶさ2のサンプル収納容器の内部表面加工に当たった精密機械メーカー、ティ・ディ・シー(宮城県利府町)の担当者が登壇。ナノテラス利用を表明しているポーラ・オルビスホールディングス(東京)とアイリスオーヤマ(仙台市)の担当者は、利用の狙いや期待について語る予定だ。

ナノテラスやサイエンスパークの整備が進む東北大青葉山新キャンパス(東北大提供)。
ナノテラスやサイエンスパークの整備が進む東北大青葉山新キャンパス(東北大提供)。

 ナノテラスの隣接地では、企業のナノテラス利用を支援する研究センターなどが立地する「サイエンスパーク」の整備を東北大が進めており、東北大の青木孝文理事・副学長が大学や企業の研究開発拠点が集積する「リサーチコンプレックス」の現状と展望、東北大の役割や取り組みなどについて解説する。ナノテラスを核とした「光イノベーション都市」を目指す仙台市も、企業参加の支援態勢などを紹介する。