SDGs

自社の強みを生かして社会貢献 「第20回 企業フィランソロピー大賞」受賞企業決定

2022年5月に行われた贈呈式で挨拶をする日本フィランソロピー協会の髙橋陽子理事長
前回(第19回)の贈呈式。挨拶をする日本フィランソロピー協会の髙橋陽子理事長

 社会の課題解決のために、人材・技術・情報など自社の経営資源を連携させ持続的に行われている社会貢献活動に贈られる「第20回企業フィランソロピー大賞」(公益社団法人日本フィランソロピー協会・JPA、東京)の受賞企業が、このほど決定した。2023年3月3日に、東京・千代田区の学士会館で各賞の贈呈式が行われる。

 同賞は、SDGs達成が世界的な課題となっている中、自社の強みを生かした社会貢献活動を継続している企業を広く社会に発信することで、公正で温もりと活力ある社会を次世代に伝えることを目的に、2003年に創設された。

 選考のポイントは、「革新性」(固定観念や既成概念にとらわれず先駆的に行動し新たな社会価値を創造)、「継続性」(一過性でなく真摯に活動を継続)、「波及性」(従業員はじめ他企業や他セクター等との連携)、「経営との関連性」(経営陣の関与・経営理念との関連性が明確)、「経営資源の活用」(事業活動により培われた経営資源=人材・ノウハウ・技術・情報などを活用)など。神戸大学大学院・経営学研究科長経営学部長の國部克彦氏(選考委員長)、東北電力株式会社・住友商事株式会社の社外取締役の井手明子氏、株式会社共同通信社顧問の佐藤雄二郎氏、コモンズ投信株式会社取締役会長の渋澤健氏らが審査員を務めた。

 「企業フィランソロピー大賞」は、NPO/NGOの組織基盤強化・市民活動の持続発展から社会課題の解決・社会変革を目指すパナソニック ホールディングス株式会社の活動「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」が受賞。2001年から展開している同活動は、社会課題の解決や新しい社会価値の創造など、NPO/NGOへの社会からの期待が増大する一方、NPO自身の組織基盤の強化などの課題が多いことに着目。支援の評価の仕組み化やプロボノ活動(専門知識を生かしたボランティア活動)を通じた従業員の参画などを通じ、NPO/NGOへの伴走を長年にわたり継続・発展してきた点が高く評価された。

第19回企業フィランソロピー各賞で贈呈された盾
第19回企業フィランソロピー各賞で贈呈された盾

 「企業フィランソロピー賞」の「未来をひらくスキル賞」受賞は、アクセンチュア株式会社(東京)が世界で展開する「Skills to Succeed」(スキルによる発展)。より多くの人々に「就業や起業に関わるスキル構築の機会を提供し、経済活動への参加と貢献を可能にする」ことを目指している。社員の知識や技術などを生かし、多様性を認め誰もが活躍できる未来を目標にした活動は、10年以上の期間、多くのテーマについて、年間150人が最大6カ月間参加している。より良い世界を作る原動力となる機会の創出に向けた取り組みの継続性と質の高さ、人的資本経営を見据えた取り組みなどが評価された。

 同じく「企業フィランソロピー賞」の、「つなぐ被災地、語り部文化賞」は株式会社阿部長商店(宮城県気仙沼市)の「KATARIBEカルチャーの創成」に贈られた。阿部長商店が経営する「南三陸ホテル観洋」は、東日本大震災時に自ら被災しながら約600人の避難者を受け入れた。また、所有する多目的ホールの高野会館(同県南三陸町)は震災遺構として保存している。「KATARIBEプロジェクト」は、震災経験の風化防止、命を守ることの大切さを共有する貴重な学びの場として、「全国被災地語り部シンポジウムin東北」を開催するなど、国内外へ発信を続けている。命の重みを語り、伝え続ける語り部文化の伝承が、命を守る覚悟を共有するものとなることを期待されての受賞。

 ほか、「企業フィランソロピー賞」の「皆で支えるコミュニティ賞」は、「コミュニティフリッジ(公共冷蔵庫)」を活用し、シングルマザーなどの生活困窮者に食料品や日用品を、匿名性を担保し24時間利用可能な形で提供する大和リース株式会社(大阪市)が受賞。「ソーシャル×建築賞」を受賞したのは、千年建設株式会社(名古屋市)の「生活困窮者向け居住支援事業『LivEQuality事業』」。子育てと仕事の両立が不可欠であり、住まい探しに困難を抱えることが多い母子家庭に対し、建設会社の営繕能力の強みを生かし、母子家庭に利便性と高品質な物件を低家賃で提供している。また、入居後自立までのサポートを、NPO法人「LivEQuality HUB」を通じて行う流れを実現した。「こころのフィンテック賞」受賞は、株式会社フィノバレー(東京)の「コロナ禍で経済的に困窮する親子への食の支援プロジェクト(Table for Kids)」。認定特定非営利活動法人夢職人の運営する「Table for Kids」と組み、全国各地で展開するデジタル通貨プラットフォーム「MoneyEasy」のシステムを無償で提供。行政・企業・団体・個人の寄付金・助成金をもとに、一定条件を満たした3歳児から高校生までの子どものいる家庭に対し、協力加盟店で利用できる無料デジタルクーポン「カケハシコイン」を通じ、食の支援を行っている。

 公益社団法人日本フィランソロピー協会(JPA)は、企業のCSR・社会貢献担当者を対象とした定例セミナーや機関誌 「フィランソロピー」 の出版など各種事業を通し、民間の果たす公益の主体となる企業や個人の社会参加意識を高め、公正で活力ある心豊かな社会の実現を目指している。2022年12月現在の会員企業は132社。
 第1回から第19回までの贈呈先は同協会ホームページで見ることができる。