カルチャー

保護猫を文化に・ネコリパブリックが目指す新しい社会 【きみといきる】

20160624大阪ネコビル 5月22日、大阪・心斎橋に5階建てのビルすべてが保護猫のための施設である「ネコリパブリック大阪心斎橋」がオープンしました。運営しているのは岐阜を本拠地として各地で保護猫カフェを展開する「ネコリパブリック」。2014年2月に岐阜市に第1号店をオープンし、その後は大阪・東京・愛知に次々と店舗を拡大しています。近日中に東京・愛知にそれぞれ2店舗目ができるほか、広島にも新店舗のオープンが予定されています。メディアにも連日取り上げられ、その勢いはとどまるところを知りません。心斎橋に出来たネコビルは連日多くのお客さんで賑わっています。

 近年は空前の猫ブームといわれています。飼育頭数ではついに猫が犬を抜き、書店では猫の写真集や猫を題材とした小説・エッセイが平積みされています。ネコをモチーフにしたグッズもよく目にします。このコラムの写真を担当してくれているケニア・ドイさんの写真集「ポチャ猫ワンダー」や「じゃまねこ」も売れ行き好調のようです。

 巷では「ネコノミクス」などと称されるこの状況。しかし一方で、動物を愛する人たちの間では心配だという声も上がっています。それは、この猫ブームが一過性のものに終わってしまうと多くの命が粗末にされるのではないか、という心配です。

 かつてのペットブームが終わったあとに起こったことがまた起こるのではないか。人気のある品種をたくさん市場に供給するために劣悪な環境で次々と交配させ、その結果、先天的に異常があったり体が弱い子どもがたくさん生まれる。ペットショップでは大量に子猫が売られ、少しでも大きく育ってしまうと安くなって叩き売られる。そうやっても売れ残った猫はひっそりと処分される。そしてブームが終わるとさらに多くの命が粗末にされる。またそうなるのではないかと多くの人が心配し始めています。

 本当にそうなってしまうのでしょうか? しかし以前よりも賢い消費者・賢い飼い主になっているはずの私たちは、同じ間違いは繰り返さないかもしれません。そう期待したいと思っています。

 そんななか、ネコリパブリックは「自分たちが作っていこうとしているのは猫ブームではなく、文化だ」と言います。自分たちの活動が少しずつでも人の心を動かし、行動を変え、そして社会を変えることが目標、と代表の河瀬麻花さんは言います。「保護猫を家族に迎えることを当たり前にだれもがするような社会にしたい。2022年2月22日までにネコの殺処分をゼロにする。全ての猫に安心して眠れる幸せと、お腹いっぱいになれる幸せを与えたい。保護猫は文化になる。」

 わが国の動物の処分頭数は、ピークである1974年の119万頭から大きく減り、近年は10万頭を切っています。しかしそのうちの大半は猫、しかも生まれたばかりの子猫です。少しでも多くの命を助けたいと、全国各地では様々な動物保護団体が動物を保護し、新しい飼い主を探す活動をしています。また、「地域猫活動」として、野良猫を捕獲して不妊去勢手術を施すことで可哀想な命を減らす活動をしています。

 こういった地道な活動が、そして多くの方がそういった活動に注目をするようになってきたことが、処分頭数が大きく減った理由だろうと思います。しかしそれでも「ゼロにする」のは壮大な目標です。その目標をあえて掲げ、オシャレに可愛らしく、そして大胆に進んでいくネコリパブリックは多くの人の心をつかみ、ファンを増やしています。岐阜店の開店からこれまでに集まったお客さんの情報シートは4万枚にもなります。 

 そんなネコリパブリックのランドマークともいえる今回の大阪ネコビルプロジェクト。ネコリパブリックはその資金の一部をクラウドファンディングで調達しました。当初の目標額は1,000万円。しかもそれを楽々と集め、最終的には1,400人以上の人が出資し、1,800万円を集めました。「あなたたちなら社会を変えられる。一緒に頑張りたい」そんな励ましのメッセージも多く寄せられています。

 ネコリパブリックは社会を変えられるでしょうか? 保護猫は文化として根付くでしょうか? それはネコリパブリックだけではなく、私たち自身の挑戦でもあるかもしれません。

 ネコリパブリックWEBページ

プロフ画像(藤谷03)筆者:藤谷玉郎(ふじやたまお)
一般社団法人ふくしまプロジェクト理事
東北大学大学院卒業。福島県庁・秋田県庁を経て2014年4月より現職。東日本大震災後に被災地派遣で福島県庁に出向し動物保護行政に携わる。その当時の日々をブログ「福島日記」に記録。
web:http://fukushimaproject.org/
Facebookページ:http://www.facebook.com/fukushimaproject.org
ブログ「福島日記」:http://fujkushimanikki.blogspot.jp/

 

プロフ画像(ケニア)写真:ケニア・ドイ
芸能人のグラビアなどを数多く手がけ、人物撮影を得意とするスチールカメラマンが、2011年猫カメラマンになることを宣言。
ブログで猫写真を発表し続ける。写真集『ぽちゃ猫ワンダー』(河出書房新社)『じゃまねこ』(マイナビ出版)も好評発売中。
ケニア・ドイのネコブログ:http://ameblo.jp/nekokenya/
Facebookページ:https://www.facebook.com/pochanekowonder