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あの日を語りつぐ  東日本大震災を考える絵本10選

 

 10230001921 東日本大震災から6年。国内外に大きなショックを与えた大震災の記憶も、時間の経過とともに少しずつ薄れてきてはいないだろうか。時に親子で考え、子どもたちの世代に伝えていきたい大災害の教訓。でも、何をどう伝えれば?という人におすすめしたいのが、子どもたちの心にストレートに伝わる絵本だ。東日本大震災を考えるきっかけになる絵本10冊をご紹介しよう。

【失われた日常】

▼『およぐひと』 作: 長谷川 集平、出版社: 解放出版社

およぐひと カバー・表紙 小学校高学年~中学生ぐらいの子にもぜひ読んでほしい絵本。「はやくかえりたいのです」と流れに逆らってスーツ姿で泳ぐ男性、電車の中で小さな赤ちゃんを抱きながら「にげるのです」と消えていった女性。この人たちと会話をしたカメラを抱えた男性は自分の家に戻るけれど、自分が見てきたことを我が子にうまく伝えられず…。ちょっと怖くて悲しさを感じるかもしれないけれど、それが震災で日常や命を奪われた人たちの無念さ、さまよい続ける心を静かに強く訴えている。「復興」ってどういうことだろう…と、大人にもあらためて考えさせてくれる絵本。

▼『ほうれんそうはないています』 文: 鎌田 實、絵: 長谷川 義史、出版社: ポプラ社

『ほうれんそうはないていま 農家の人たちに手間ひまと愛情をたっぷりかけられ、すくすくと育っていたほうれんそうは、東日本大震災後の福島第一原子力発電所の事故の影響で放射性物質が検出され、みんなに食べてもらうことができなくなってしまった…。ほうれんそうはどんなに悔しかっただろうと、ほうれんそうの気持ちを想像して描かれた絵本。「おいしくなあれ」と穏やかな表情でほうれんそうを育てていた農家の人たちの顔も、変わってしまった。最後のページの「もう、なきたくない」という言葉から、大震災で大きな被害を受けたさまざまな存在の色々な思いが聞こえてくるようだ。

【大切な人との別れ】

▼『かあさんのこもりうた』 作: こんの ひとみ、絵: いもと ようこ、出版社: 金の星社

ETvlOQiKf5W6t0R1489030333 大嵐でかあさんぐまの命を奪われ、悲しみにくれるこぐまたちととうさんぐまのもとに、かあさんぐまの歌声が聴こえてきた…。東日本大震災で母親を亡くした小学校3年生の女の子のもとに、過去に母親が女の子宛てに出した手紙が届いたという実際にあったお話をもとに生まれた絵本。大切な家族を失い、何もかも受け入れられないほどつらいことがあるかもしれない。それでも、大切な人がいつも見守ってくれているという気持ちが、残された存在に前を向かせてくれるのかもしれないと思わされるお話。

▼『ハナミズキのみち』 文: 淺沼 ミキ子、絵: 黒井 健、出版社: 金の星社

aM2dTsMuoQjKGBZ1489030308 津波で息子を亡くし、泣いてばかりの母の耳に、ある日息子の声が聞こえたという。津波が来たときにみんなが安全な場所へ逃げる目印に、大好きだったハナミズキの木を植えてほしいと。ページをめくっていくとしばらくは、海や浜辺の美しい景色、通学で渡った橋、海辺で見た花火大会や夏祭りの風景などが続く。その思い出の詰まった海に息子を奪われた母の無念さを、薄いピンクと白のたくさんのハナミズキの花びらが守っていくように、ページが展開されていく。故郷とたくさんの人たちの心の復興を願う1冊。

【動物たちも日常を奪われた】

▼『ぼくは海になった 東日本大震災で消えた小さな命の物語』 作・絵: うさ、出版社: くもん出版

bokuumi02 家族としてともに過ごした相手との別れは、それが動物でも身を切られるようにつらい。津波でたえちゃんのお母さんと犬のチョビが流された。海の上で目が覚めたチョビはたえちゃんのところに行ってお母さんが海にいることを教えようとするけれど、たえちゃんはチョビの姿に気づいてくれなくて…。たえちゃんが遺体安置所でお母さんに再会した後、どれだけ探してもチョビは見つからなかった。もしも人間だったら確実に助かることができた動物たちの命も、たくさんあったという。そんなたくさんの命に心を寄せ、「命に順番のない世の中」をと祈る作者の思いからこの絵本は生まれた。

▼『希望の牧場』 作: 森 絵都、絵: 吉田 尚令、出版社: 岩崎書店

『希望の牧場』(岩崎書店) 「エサ食って、クソたれて」を繰り返してうまい肉になることが肉牛たちの仕事。そしてその牛たちを育てるのが牛飼いの仕事。しかしその日常が、福島第一原子力発電所の事故で拡散した目に見えない放射性物質の存在によって狂ってしまった。食べられない牛たちの世話をして牧場に残り続けながら、自分たちや牛たち、この牧場に意味はあるのだろうかと自問し続ける牛飼いの男性。「希望の牧場」と呼ばれることにさえ戸惑いを感じつつ、淡々と生きて故郷を守り続ける姿に圧倒される。

▼『おじいさんとヤマガラ』 作・絵:鈴木 まもる 、出版社:小学館

『おじいさんとヤマガラ』(小 毎年冬になると、ヤマガラが卵を産んでひな鳥たちを育てるための巣箱を取り付けるおじいさん。東日本大震災後の福島第一原子力発電所の事故で拡散した放射性物質が草や葉にもつき、それを食べた虫を親鳥がひな鳥たちに与えているのでは…と心配でたまらないけれど、それを親鳥に伝えるすべもなく…。福島の知人から鳥が減ったと聞いた筆者が、人間や動植物の生命の強さと回復を願って描いた絵本。

【防災を考える】

▼『はなちゃんのはやあるきはやあるき』 作: 宇部 京子、絵: 菅野 博子、出版社: 岩崎書店

表紙カバー 津波を想定し、毎月地道な避難訓練をしていた岩手県北部にあるはなちゃんが通う保育所。3.11の大津波で保育所も八百屋さんもはなちゃんの家も、村全体が流されてしまったけれど、早歩きで上へ上へと逃げ続けた園児たち90人の命は守られた…。温かみのある絵にゆったりとした雰囲気の文章だけれど、みんながどんなに必死に歩き、それは一朝一夕にはできないということが伝わってくる。

▼『あっ!じしん』 作: 金子 章、絵: 鈴木 まもる、出版社: 学研

『あっ!じしん』(学研) 巨大な地震が起きたら、どんなことが起こりうるのだろう。実は大人にもイメージしきれていないことがたくさんありそうだ。一家だんらんの時間に大きな地震が起きて、お父さんが子どもたちに地震が起きる仕組みを説明する。「地殻」や「マントル」なんていう言葉は小さな子には難しいけれど、地球は生きているんだということがしっかり伝わりそう。家やマンション、学校、町の中や地下街、海や山では大きな地震でどんなことが起こりうるのかが、ページいっぱいに描かれ、家の中でできる地震対策や、地震後の家の中と外の違い、用意しておくと便利な避難用品を紹介している。イメージができているかどうかが、行動を大きく左右する。大きな地震を経験していないときにこそぜひ手にしたい絵本(販売は既に終了)。

▼『ぼくのじしんえにっき』 作: 八起 正道、絵: 伊東 寛、出版社: 岩崎書店

『ぼくのじしんえにっき』(岩 かずゆきくんの塾のテストの最中に起きた大きな揺れ。ガラスが刺さって血だらけになった友達や将棋倒しの下敷きで動かなくなった友達を見ながら避難作業を手伝い、外に逃げ出すと、町は大きく破壊されていた…。帰宅難民や水不足、食糧の買占めは多くの人が大震災後に体験したけれど、その様子が描かれているこの児童書は、1989年に初めて出版された。衛生状態の悪い環境で一時重い病気で生死をさまよったかずゆきくんは、回復後もさまざまな困難やつらい気持ちを経験するが、必死に受け止めていく。かずゆきくんの日記の最後の言葉が、小さいけれど力強い希望を感じさせてくれる。

 現在書店で購入できないものもあるが、図書館を活用してぜひ。親子で感想を話し合おうというふうに構えずに、一緒に読んで、それぞれが何かを感じるだけでもいいのかもしれない。親子でなくても、大人だけで読んでも絵本は発見をくれそうだ。