社会

自宅から徒歩圏内の保育室を蹴って「子どものそばで働きたい」 多様な保育ニーズに応える託児付きシェアオフィス

 新年度がスタートし、子どもを保育園に預けて職場復帰を果たしたママも多いだろう。夫婦ともにフルタイム勤務でないと認可保育園に入るのが厳しい昨今。出産後にフリーランスで仕事を再開しようとする女性などの味方となる託児付きシェアオフィス「マフィス北参道」が、4月2日に渋谷区にオープンした。利用者の7~8割はフリーランスや起業家だが、夫婦ともにフルタイム勤務にもかかわらず、自宅から徒歩圏内の公設民営保育室の内定を辞退して、“マフィス”を選んだケースもあるという。背景には、保育ニーズの多様化もあるようだ。

マフィス北参道入り口
マフィス北参道入り口

 「マフィス北参道」は、世田谷・馬事公苑にあった「マフィス馬事公苑」が移転する形でオープン。ビルの2階が24時間出入り可能なシェアオフィスで、個室やミーティングルーム、カフェスペースを備える。3階の保育ルームは、国から、多様な保育のニーズに応える「企業主導型保育事業」に認定され、認可保育園並みの助成を受けられる。運営会社のオクシイ(東京)は、横浜市にも「マフィス横濱元町」を昨年春にオープンしている。

マフィス北参道のオフィスで仕事をする利用者たち
マフィス北参道のオフィスで仕事をする利用者たち

 同社PRマネージャーの宮崎晴美さんによると、利用者は、フリーランス、起業家など、育休がなく、出産後すぐに仕事を再開しなければならない親が7~8割。在宅で仕事をしているため、フルタイムで保育園に預ける必要はないが、自宅で子どもがいる中での仕事に、気持ちの切り替えの難しさや子どもの相手を十分にしてやれない葛藤を感じる人が多いという。

セキュリティが守れる個室
セキュリティが守れる個室

 「子どものそばで働きたい」と、自宅から徒歩圏内の公設民営保育室の内定を辞退して、マフィスを選んだ人もいる。リモートワークが多い、杉並区の30代の男性会社員。夫婦ともにフルタイム勤務だ。生後11カ月の赤ちゃんとベビーカーでマフィスの保育室に9時半ごろ登園し、子どもを預けたら、自身は2階のオフィスで仕事開始。昼食時には保育室に上がって、子どもに給食の離乳食を食べさせることもある。給食で子どもの食べっぷりがよかったアスパラを、自宅で離乳食を作る際に取り入れるなど、保育の現場が身近にある環境を、子育てにも生かしているようだ。また、「赤ちゃんを近くで預かってもらっているので母乳育児が続けやすい」、「低月齢から保育園に預けるのではなく、幼稚園に入る年齢まではマフィスを利用してマイペースで働きたい」という母親の声もあるという。

ミーティングルームも完備
ミーティングルームも完備

 マフィス北参道で人気のある利用プランは、保育付きのシェアオフィスが週1回4時間、月額20,100円から使える「セレクトプラン」。「フルタイムで子どもと離れるほどではないけれど、毎週コンスタントに時間が欲しい」「曜日と時間を選んで自由にカスタマイズしたい」というような人のためのプランだ。

 良質な保育へのこだわりも大きい。都市部のビル内の保育室だが、近所の公園などへのお散歩は日常的に行われ、リトミック講師を招いてのイベントなども実施。また、日本ポジティブ教育協会の協力のもと、逆境に負けない心を育てるための独自のプログラムを開発し、実践している。給食は、農薬・化学肥料の使用をなるべく抑え、収穫後に残留農薬の検査をした特別栽培米や旬の食材を使用。1級フードアナリストの監修の下、甘み・苦み・旨み・塩味・酸味を意識した献立が提供されている。

保育ルーム
保育ルーム

 「働きたいと考える女性のすべてが、フルタイム勤務を望んでいるわけではない」というコンセプトから生まれた託児付きシェアオフィス。長い人生の中では、子育てや介護に比重がかかる時期もあり、仕事を一時期やめたり、仕事量を減らしたり、働き方を変えることを余儀なくされることもある。宮崎さんは、「自分の決めたバランスで働き続けていくことを応援していきたい」と話している。