【新型コロナ】最新ニュース

看護学校の97%「病院実習拒否」経験 学修成果は減少、ワクチン求める声も

 看護学校や看護大学などの「看護職養成校」に新型コロナウイルスの影響を尋ねたところ、96.6%は学生が病院で患者に接する実習(臨地実習)を病院側から断られた経験があり、57.6%は学修成果が例年に比べ減ったととらえていることが分かった。一般社団法人日本看護学校協議会共済会(東京都中央区、荒川眞知子会長)が2月16日、調査結果を発表した。各養成校は臨地実習の不足を校内実習で補ったりリモート授業を導入したりするなどの工夫をしているが、未来の看護師である学生・生徒の経験不足を懸念する教員も少なくなく、同会は情報通信技術(ICT)化への助成や、学生へのワクチン早期供給を求めている。

▽3%は臨地実習できず

 同会が運営する補償制度に加入する看護職(看護師、准看護師)養成校1017校を対象に、昨年11~12月にアンケートを実施、731校から回答があった。

回答校学校種別、全731校
回答校学校種別、全731校

 706校(96.6%)が実習先から学生の「受け入れ不可」の連絡を受けた経験があった。調査では不可の理由を聞いていないが、病院側は感染予防策として立ち入り人数を減らす必要があり、学生用の感染防護具も確保できないなどの事情があったためとみられる。学生1人当たりの実習時間を短くするなどした結果、受け入れ不可の連絡がなかった養成校も含め696校(95.2%)は臨地実習を実施したが、24校(3.3%)は実習ができていなかった。不可連絡のあった706校のうち623校(88.2%)は校内実習を導入した。

▽リモート急増、環境は不十分

 リモート授業は昨年度まで実施しているのは1校だけだったのに対し、今回調査では528校(72.2%)が実施するなど積極的に導入していた。学生がWi-Fiに接続できる場所が校内の80%以上である養成校は、2019年度以前は全体の20.9%だったが、今回調査では296校(40.5%)へと増えた。しかし、302校(41.3%)は学生の私的デバイス(ノートパソコン、タブレット、スマホなど)を学内ネットワークに接続することを許可しておらず、十分にICTを活用して学ぶ環境にあるとは言い難かった。

校内でWi-Fi接続できる場所
校内でWi-Fi接続できる場所
学生使用デバイスの学内ネットワーク接続
学生使用デバイスの学内ネットワーク接続

 臨地実習を行った696校は、時間数や経験値が減った実習での学修を代替・補充するためにさまざまな工夫をしており、市販の視聴覚教材は635校(91.2%)、シミュレータ(人形)は490校(70.4%)が活用。実習先のスタッフをオンラインでライブ招請した養成校も97校(13.9%)あり、看護教育のICT化に努めていることが分かった。仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などを活用した学校は25校(3.6%)と少なかった。

実習の工夫
実習の工夫

▽学生満足度、3分の2は否定的

 臨地実習を行えた696校の回答によると、学生が「実習場に滞在した時間」が例年通り確保できたのは66校(9.5%)、「患者らと接した時間」確保は79校(11.4%)、「看護技術を実施した回数」確保は90校(12.9%)で、多くの養成校で実習経験が減少した。実習場滞在時間や看護技術経験回数が例年の半分以下に激減した養成校は、全体の30%以上に達した。

実習の場での実習経験の減少
実習の場での実習経験の減少

 その結果、「実習での学生の学修(理解、知識・技術などの習得)成果」が例年と比べて「とても少ない」169校(24.3%)、「やや少ない」232校(33.3%)と、減少を指摘する回答が計401校(57.6%)と過半数を占めた。学生の実習での満足度が上がったかどうかについても、否定的回答が計457校(65.7%)と3分の2近かった。

実習での学修成果
実習での学修成果

 学生や教員に「感染の疑いのある症状(発熱、せきなど)を確認した」養成校は、回答731校のうち449校(61.4 %)、「濃厚接触者が出た」養成校は302校(41.3%)、「感染者が出た」養成校は112校(15.3%)あった。注意したいのは、看護学生の15.3%が感染したのではなく、1人でも感染者が出た養成校が全体の15.3%だったということ。この数字について同会は「発生率を単純に他のデータと比較するのではなく、看護学校ではかなり厳密に日々の健康状態のチェックが行われていることを加味して考えるべきだ」としている。また「学生あるいは教員らから実習先の患者やスタッフへの2次感染の発生」が4校(0.5%)あった。

▽自助に限界、助成や配慮を

 同会によると、実習の場でのリアルな体験・経験・見学の機会を十分に得ることが出来なかった看護学生が看護師になった際に、うまく機能できるだろうかと、憂慮する教員も少なくないという。
荒川会長は「養成校は学生・生徒が自信を持って社会に巣立っていけるよう、さまざまな工夫と最大限の努力をしているが、自助努力では乗り越えられない。ICT化を推進するための助成や、専任教員の増員、臨時実習が十分にできなかった卒業生を病院が研修・配属で配慮するガイドラインなどが必要。臨地実習に心配なく参加できるよう、医療を学ぶ学生にワクチンを早期に供給してほしい」と要望している。

【日本看護学校協議会共済会】
 総合補償制度「Will」を通じた看護学生の実習中の事故への補償や学校生活の安全対策を目的として、1998年に設立された。その後、看護系以外の医療・福祉系の養成施設に学ぶ学生や、実習指導に当たる教職員、看護職にも対象を広げ、補償制度と安全対策情報など各種サービスを提供している。会員は約27万人。