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【恋に生きた日本の女性たち3】セレブ狙いの誘い上手 源氏物語の夕顔

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時を経てもなお語り継がれる、歴史に残る女性。彼女たちはどのような思いを抱き、恋をして、どんな人生を送ったのでしょうか。今回は過去から語り継がれている女性の生きざまを紐解いて、彼女たちの足跡を辿ってみました。

恋に生きた女性たちの足跡を辿る旅に、一緒に出てみませんか。

千年昔から読まれている恋愛小説 源氏物語
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日本の古典で、現在も読み継がれている最も有名な恋愛小説といえば、「源氏物語」ではないでしょうか。紫式部が書いた長編小説は、古典や恋愛ものに興味がない人でもタイトルは知っているはず。

光源氏という美男が、年齢も家柄も異なるさまざまな女性と、若い頃から恋愛関係を持つ話です。登場人物の名前は、優雅で風流そのもの。今回は「源氏物語」の登場人物で、夕顔という美しい名前を持つ女性について紐解いてみましょう。

源氏物語で男性に人気ナンバーワン
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「源氏物語」では、異なる魅力を持った女性達が次々と現れますが、男性に人気があるキャラクターは夕顔だそうです。夕顔は、夏の夕方に咲き翌日の昼前には凋(しぼ)んでしまう、白い花。花言葉は「夜」、「はかない恋」。

夕顔という女性は、まさにこの花のような人生を送りました。

光源氏と夕顔の出逢い
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『日本古典籍データセット』(国文研等所蔵) 源氏物語絵巻
提供:人文学オープンデータ共同利用センター  

京都五条の乳母の見舞いの帰り、光源氏は乳母の隣家の垣根に咲く夕顔に見惚れていました。家の主である夕顔は、そっとその様子を見ていました。夕顔を所望した光源氏に、香を焚き染めた白い扇の上に夕顔の花をのせて、侍女に差し出させます。その扇には、歌が書かれていました。

夕顔の花が取り持つ恋
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『日本古典籍データセット』(国文研等所蔵) 源氏物語絵巻
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心あてにそれかとぞ見る白露の光添へたる夕顔の花

ひっそりと咲く夕顔の花でさえ輝くほどハンサムなあなたは、もしや噂に聞くあの方(光源氏)でしょうか。 

夕顔の歌(意訳 青山沙羅)

光源氏は、下町風情の荒れ果てた家に、優雅な振る舞いが出来る教養の高い女性がいると興味を示しました。しかも、相手は光源氏と気がついているのです。そこで、光源氏は誘いに乗った歌を返します。
 
寄りてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる花の夕顔

黄昏時だからぼんやりとしか見えないのです。近くに寄って確かめてみてご覧なさい。

光源氏の歌(意訳 青山沙羅)
 
夕顔の花を所望したことにより、ふたりの恋が始まりました。逢瀬を重ねても、お互いに素性は隠したまま。多くを語らないミステリアスな夕顔に、光源氏はたちまちのめり込みました。この時光源氏は17歳で、正妻がおり、年上の愛人もいました。夕顔は19歳。二人とも、10代ですでに恋愛のテクニックを知っていたのですね。

実はワケありな女性 夕顔
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『日本古典籍データセット』(国文研等所蔵) 絵本草源氏
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夕顔は、光源氏の親友でライバルでもある頭中将(とうのちゅうじょう)のかつての愛人でした。あちこちの女性にうつつを抜かす頭中将に、不満を漏らすことなく、いじらしく尽くす夕顔。素直で、従順で、控えめな女性。頭中将は「常夏の女(ナデシコの古名)」と呼び、ふたりの間には子供も生まれていました。彼女が文句を言わないことを良しとして、しばらく放置していたところ、夕顔(常夏の女)から、撫子(なでしこ)を添えた歌が送られてきました。
 
山がつの 垣ほ荒るとも をりをりに あはれはかけよ 撫子の露

私のことは放っておいても構いませんが、この子(ふたりの間にできた子)のことは気にかけてやってくださいな。

夕顔(常夏の女)の歌(意訳 青山沙羅)  
 
咲きまじる 色はいづれと 分かねども なほとこなつに しくものぞなき

花(女性)がいろいろ咲いているとどれが美しいと分からなくなるが、やはり常夏の女(夕顔)にかなう花はない。

頭中将の歌(意訳 青山沙羅)  

調子の良いことを言いながら、頭中将があちこちの女性を飛び歩く中、夕顔は頭中将の正妻から嫌がらせを受けていました。ついには子どもと共に行方をくらまし、移った家が源氏の乳母の隣の家だったのです。結果、当時の2大プレイボーイに関わる運命になりました。

中秋名月の美しい夜、光源氏は無人の屋敷に夕顔を連れ込み、逢瀬を楽しんでいました。その深夜、夕顔は突如として女の霊に取り憑かれ、亡くなってしまいます。源氏の年上の恋人六条御息所の嫉妬心が生き霊になり、夕顔に取り憑き殺したのです。

セレブが愛人にしたいタイプ 夕顔の魅力
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ふたりの男性の心を奪った夕顔は、決して美人でもなければ、名家の出身でもありませんでした。そんな夕顔に、2大セレブの光源氏(皇子)と頭中将(太政大臣まで出世)が夢中になった魅力とは。

身分の低さ

2大セレブの正妻は、名家の出身。プライドが高く、人を馬鹿にしたような態度をとり、女性としては可愛げがありません。プライドが高いゆえ、夫が浮気でもしようものならひどいやきもちを焼き責め続けます。家名のみで中身は空っぽの貴族の女性よりも、中流の女性は個性や豊かな感性を持っていて面白いと思われていたようです。

素直さ、従順さ、控えめさ

相手のリードに任せ、疑わず、付いていく素直さ。文句を言わず、待ち続けるいじらしさ。男性にとっては、夢の女性ですね。

本心は語らない

男性の言うなりにはなるけれど、自分の本心は決して言わない夕顔。文句も不満も言いませんが、本音も語らないのです。名も素性も告げないミステリアスな女性。いったい何を考えていたかは、誰にも分かりません。恋の相手によって、「夕顔」や「なでしこ」とイメージを変える柔軟性もあります。

さりげなく駆け引き上手

光源氏の乳母宅の隣に住んでいたのは、「もしかして、光源氏が現れるかも」のチャンスを想定していたかもしれません。立ち寄った光源氏を目ざとく見つけると、謎かけの歌を送って誘っています。愛人の正妻にいじめられ子どもと身を隠していても、まだ19歳の若さ。誰かと恋愛をしたかったのでしょう。

趣味の良さ

夕顔は身分は高くなかったものの、美しい歌を書いたり、香を焚き染めた扇を送るなど、風流な振る舞いの出来る女性。セレブを落とすには、センスも良くなければいけませんね。相手を驚かせる意外性も大事なポイント。

夕顔の足跡

ミステリアスな魅力で、男性が愛人にしたいタイプの夕顔。光源氏も頭中将も夢中になり、一生涯忘れられなかった「夢の女性」。

「源氏物語」はフィクションのはずですが、夕顔が住んでいたと設定されるあたりが夕顔町になっており「夕顔の墓」まであります。京都を訪れる際には夕顔町へ行き、思いを馳せるのも良いかもしれませんね。
 
夕顔町

京都府京都市下京区夕顔町

 
参考
[各巻のあらすじ(2)空蝉・夕顔|国研出版]
[源語伝説五条辺夕顔墳SI010|京都市]

[Photos by shutterstock.com]

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