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「乱闘」が審判公認!?日本人がNHL観戦で受けたカルチャーショック【カナダ】

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カナダに取材で訪れたとき、「日本で相撲はまだ人気なの?」と聞かれました。まげを結った力士たちが土俵の上でぶつかり合う競技は、すでに古典芸能か何かに属しているといった印象があるみたいですね。

しかし相撲は日本で依然として人気です。年代によって印象が全く異なるかもしれませんが、入場券完売を意味する「満員札止め」はよく聞くニュースですし、約8割などの入場者数で表示される満員御礼の垂れ幕もよく見かけます。やはり国技の底力ですよね。

一方でカナダの国技は、アイスホッケー。日本でアイスホッケーというと、コクドや王子製紙など幾つか実業団チームが知られていますが、それほど盛り上がっているとは正直、言えません。しかしカナダにおけるアイスホッケーの盛り上がりは、日本人にとってはちょっとしたカルチャーショックレベル。そこで今回はカナダに訪れたらぜひとも観戦したい、アイスホッケーの楽しみ方を、幾つかのカルチャーショックと共に紹介したいと思います。
アイスホッケーはカナダで生まれた?
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そもそもアイスホッケーという競技を、何かでじっくり見た経験はありますか? 氷の上でスケート靴をはきながらホッケーを行う競技で、実はこの競技、カナダで生まれたという歴史があります(と、カナダ人は主張しています)。

実際は諸説あるみたいですが、冬のカナダに行くと、カナダ人の主張も現実味を帯び始めます。その理由は、町中でアイスホッケーを楽しむ市民の姿を容易に目撃できるからですね。ブラジルの路上で子どもたちがサッカーボールを蹴っているように、インドやネパールの広場で子どもたちがクリケットをやっているように、カナダではさまざまな場所で市民がアイスホッケーを楽しんでいます。

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視察に訪れたホテルのベビールームには、子ども用のホッケーゴールがおもちゃの1つとして置かれているほどでした。カナダ人にとってアイスホッケーの大きさが伝わってきますよね。
カナダはNHL発祥の地
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もちろん、プロリーグの盛り上がりは、尋常ではありません。例えば筆者が観戦する機会を得たモントリオールのプロチーム『Montreal Canadiens』は、プロリーグ(NHL)屈指の人気チーム。1917年にリーグが発足する以前から存在し、かつ現存する唯一の名門チームなのだとか。

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ホームゲームが開催される会場周辺ではたダフ屋が当たり前のように暗躍していて、試合の翌日はそれこそ、市民のほぼ全てがスコアを記憶していました。

物事を公平に記せば、ハイチ出身の移民であるタクシードライバーなどは、「誤解をしてはいけない。この町で、誰もがホッケーを好きなわけではない。どんなスポーツを好きになってもいい自由と権利がある」と、多文化主義を憲法で掲げる国家の国民らしいコメントを言っていました。しかし、大げさではなく市民の「ほぼ全て」が、それぞれの熱量でホッケーに関心を持っているから驚きです。

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同リーグは31のチームが所属し、そのうち24がアメリカの都市に本拠地を持ち、7チームがカナダの都市に本拠地を持ちます。そうなると、「アメリカがむしろ中心なんじゃないの?」と思うかもしれません。実際、近年の優勝チームはアメリカのチームばかり。

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しかし、聞けば「四大スポーツ」の1つと言いながら、アメリカでのアイスホッケー人気は、野球やバスケ、アメリカンフットボールと比べると低迷気味なのだか。

ここ数年の同リーグの観客動員数を見ると、もちろんシカゴ、フィラデルフィアなどがトップ10の常連となっていますが、一方でチーム数の少ないカナダ勢も、モントリオール、トロント、カルガリー、エドモントン、バンクーバーなどがトップ10に連なっています。

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しかもこのアイスホッケー世界最高峰リーグは、上述した1917年、まさにカナダのモントリオールで設立された歴史があります。その意味で初めてNHLを見るなら、モントリオールでの観戦が最も意義深いと言えそうです。
毎試合ほぼ満員のゲームは早めの行動を
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観戦時の注意点としては、まず早めの行動を心掛けたいです。モントリオールのホームアリーナである『Bell Center』は21,273人収容。カナダにあるプロチームのアリーナは、どこも2万人前後の収容人数を誇ります。1998年に長野県で行われた冬季オリンピックで、アイスホッケーのメイン会場になった『ビッグハット』でも、収容人数はわずか8,000人ほど。その規模の大きさがよく分かりますよね。

しかも2万人近い収容人数を誇るアリーナに、例えばモントリオールの場合、年間で1試合平均21,033人(2018-2019シーズン※執筆時点)が訪れています。毎回、ほぼ満員に近い人が押し寄せますので、ゲーム前の会場入口は大変混雑します。

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早々にアリーナに訪れれば、音楽のコンサート、卓上アイスホッケーのイベント、選手の試合前のウォーミングアップなどが自由に楽しめますし、公式のお土産売り場での買い物もできます。ホットドッグスタンドなど飲食店も空いていますので、早々に食べ物を買って、トイレも済ませて試合開始を待ちたいですね。

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プロジェクションマッピングの選手紹介は迫力満点
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NHLを観戦していて、本当に素晴らしいなと思う瞬間は、ショービジネスとして試合の見せ方を熟知している点になります。腹の底に響く音響が素晴らしく、リンク全体を1つのキャンバスに見立てて次々と映像を投影するプロジェクションマッピングの技術も見事です。

試合が迫るにつれて会場のボルテージも自然と高まっていきますが、見ていると公式チアリーダーが試合の流れに応じて、客席を上手にあおっています。最も盛り上がりを見せた観客に記念品を手渡すなど、雰囲気作りに一役買っていました。なるほどとひざを打ちたくなる工夫ですよね。

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アリーナ―中央にぶら下がった大型映像装置オーロラビジョンの遊び心も楽しくて、例えば画面に「Noise!(騒げ!)」という指示を出して客席をあおったり、観客を映し出し隣同士でキスを要求したり。果ては「Dance!(踊れ!)」と指示を出して、踊っている観客同士を画面に2分割で映し対決させたりと、最初から最後まで観客を飽きさせない工夫が貫かれています。

観客の側もそうした試みに大いに乗っかって、騒ぐ、叫ぶ、踊るの連続ですから、試合後は日々のうっぷんもストレスも吹き飛んでいるはずです。

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試合は20分×3本の構成になっています。それぞれ15分のインターバルの間も、荒れたリンクの氷を整えるチーム保有の整氷車が2台出てきて、助手席にパフォーマーが乗り、おもちゃのショットガンで客席にプレゼントを撃ち込んでいました。

同時に客席に小さな飛行船を飛ばして宣伝を行ったりと、観客の楽しませ方においては、日本のプロスポーツ競技も大いに見習う部分がありそうですね。
乱闘(ファイティング)も試合の一部
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もちろん、試合中の乱闘(ファイティング)も、アイスホッケーの醍醐味(だいごみ)。筆者が訪れた試合は、1試合に確か3度の乱闘(ルールに基づいた殴り合い)がありました。この回数は平均的な試合と比べるとさすがに多いみたいですが、選手たちもチームを鼓舞するため、試合の流れを変えるために、意図的に相手に決闘を挑むのだとか。

モントリオール観光局のDavid Filyさんによれば、決闘の作法として、まずスティックを置き、決闘を挑む側がグローブを脱ぐ必要があるのだとか。挑まれた相手がグローブを脱ぐとファイティングがスタートします。

周りの誰も、それこそ審判も含めて2人の殴り合いを全く止めない光景には、さすがにびっくりさせられます。しかしきちんとした理由があるそうで、むしろ殴り合いに第三者が加わると、重大なルール違反になるのだとか。

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どちらかが倒れるまで殴り合いは続き、その間、客席は大いに盛り上がります。戦略的にお互い殴り合いをしているため、相手に大けがを負わせるような事態にはめったに発展しません。

また、乱闘をした2人は5分間の退場を強いられるのですが、そのときの態度も、追加のペナルティなどに発展するため、選手は紳士的に振る舞うみたいですね。

「これもアイスホッケーの一部なんだよ」

と、上述のDavid Filyも笑顔で教えてくれます。日本のプロ野球などで見かける本物の乱闘とはちょっと違った「乱闘」ですから、女性も安心して見守りたいですね。

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以上、カナダに訪れたらぜひとも足を運びたい、アイスホッケーの楽しみ方を紹介しましたが、いかがでしたか? チケットは客席によりますが、数千円から数万円といった感じ。「チケットは高いから、みんなバーで観戦する」という地元の人の言葉も少し納得できます。

それでもせっかくカナダに訪れるのですから、ホームアリーナに足を運んで、生で観戦してみてください。シーズンは毎年、10月から翌6月ごろまで。モントリオール、オタワ、トロント、ウィニペグ、カルガリー、エドモントン、さらにバンクーバーといった大都市にチームがあります。旅のプログラムにアイスホッケー観戦を、ぜひとも組み込んでみてくださいね。

 

[参考]

※ Ice Hockey: a true Canadian passion – CANADIAN AFFAIR

※ Who Invented Hockey? – The Hockey Writers

※ NHL Attendance Report – ESPN

※ 北米プロアイスホッケーリーグ ピッツバーグ・ペンギンズの新ホームアリーナ「Consol Energy Center」向け三菱オーロラビジョン受注のお知らせ – 三菱電機

[The Other photos by Masayoshi Sakamoto(坂本正敬)]

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