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1本の木に会いに行く(8)信濃川・千曲川源流の木<長野県>

何気なく通り過ぎる街なかの、あるいはお寺や神社、山道での1本の木。ほとんどの人が関心を持たないからこそ1本の木は現代の秘境だと思えます。その秘境に分け入り、観察し、ふと周囲を見渡すと人と自然のかかわりや歴史、文化が見えてきます。今回ご紹介するのは日本一長い信濃川・千曲川の源流にある名も知らない木です。どんな木に出会えるのか、源流をさかのぼり訪ねてみました。
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長野県川上村のレタス畑を行く
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源流の入り口は、長野県川上村の高原レタス畑の先にありました。長野県の南東、八ヶ岳や甲武信ヶ岳など2500mを超える高い山々に囲まれた盆地に、千曲川に沿うように位置する川上村。標高は1185mあります。

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山あいの村ですが平坦な土地が多く、1本道の両脇にレタス畑が延々と広がります。年間の生産量は8万トン以上、なんと川上村は日本一のレタス産地なのです。

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レタス畑を抜けて、毛木平(もうきだいら)と呼ばれる標高1450mほどの終点にやってきました。ここに駐車場があり、日本百名山の甲武信ヶ岳登山の長野県側の登山口となっています。じつは甲武信ヶ岳登山道のかたわらに信濃川の源流があるのです。

源流は甲武信ヶ岳山頂直下の標高2200m
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駐車場に案内図がありました。よくみると源流はかなり上の方にあります。その標高は2200mだといいます。甲武信ヶ岳の標高は2475mですから、頂上の真下という感覚です。そんな山の上に水が湧いているのでしょうか。

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後で知ったのですが、かつてこの道は武蔵の国(埼玉県)や甲州(山梨県)に抜ける山道でもあったようです。甲武信ヶ岳の「甲武信」とは甲斐・武蔵・信濃の3つの国境にある山を意味しています。

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源流を目指して歩いて行くと、すぐに渓流と合流します。源流から流れてくる川なのでしょう。この渓流に沿うようにして高度を上げていきます。

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さて、日本一長いといわれる信濃川・千曲川は367km。源流になる川は無数にあるはずですが、なぜこの地が源流とされているかといいますと、信濃川・千曲川のもっとも遠い地点が甲武信ケ岳山麓にあるというのです。

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山あいなのですが水量は意外に多く、勢いよく流れていきます。しばらく歩くと「ナメ滝」という看板に出会いました。漢字では「滑滝」。大きな一枚岩の上をなだらかに流れる滝があるのです。樹木も高く気持ちの良い場所です。ここで昼食。ひと休みしましょう。

日本で最も長い信濃川・千曲川
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367kmは、ちょうど新潟駅から上野駅までに相当するのだそうです。そのうち、新潟県側(信濃川)は約153kmで長野県側(千曲川)は約214km、長野県の距離の方が長いのです。

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新潟県を流れる信濃川は長野県に入ると千曲川という名前に変わります。信濃の国から流れてくる川なので、信濃川。そして千曲川は千というたくさんの数ほどうねり曲がって流れる川として「千曲」という名がつけられたらしいのです。

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水の量によっても川の流れの速度は変わりますが、信濃川の通常の流れはほぼ人が歩く速さと同じだそうで、この速度で流れ続けると源流の地点から5日間で河口にたどりつくのだそうです。

水と川上村の暮らしとレタス
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水は人間の命を保つための大切なものです。そのために水のある場所に人は住み続けてきました。そういえば「梓山畑地管理組合」と書かれた取水口をとちゅうで見かけました。ここから水を取り入れて農業用水などに利用しているのかもしれません。もちろん清流は浄水場に送られて村の上下水道にも使われているでしょう。

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千曲川があったからこそこの地に人が住み続けてきたのでしょう。とはいえ、かつては出稼ぎに出なければならない寒村だった川上村は、戦後大きく村の姿を変えたのだそうです。

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ターニングポイントは、戦後進駐軍として日本にやってきた米軍の食料供給地として、レタスの栽培地に選ばれたことのようです。当時日本国内ではレタス栽培は行われていませんでしたが、米軍の指導でレタス栽培が始められましたというのです。まもなく始まった朝鮮戦争では、ここで作られたレタスが朝鮮半島の米軍に送られました。それが川上村のレタス栽培の歴史のスタートだったのです。

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もともと川上村一帯は八ヶ岳の火山灰が降り積もった痩せた土地のため、作物を育てるのには適さなかったのです。そのために土造りでは牛糞を土に混ぜることから始まったそうです。やがて土も改良され、水良し、空気良しの土地柄、暑い夏の時期にも美味しく出荷できる高原レタスとして人気を博していくのです。

信濃川・千曲川の源流で出会った樹木
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さて歩き始めて3時間ほど。傾斜は大きく渓流は細くなり、ようやく源流にたどり着いたようです。やがて「千曲川 信濃川 水源地標」という源流の案内板が見えてきました。

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水が湧き出している地点はその左下の川床にありました。青色のコップが置いてあります。

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ちょうど、たぶんダケカンバでしょう、その木の根元から水が流れ出ています。けっこうな量があります。無味無臭でおいしい水です。それにしてもこんな標高の高い場所でよく水が湧いているものです。水脈、というものがここにあるのでしょうか。

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見上げるとダケカンバの木は立ち枯れているようです。たぶんカバの木の仲間でしょう。水が出ているところに生えたのではなく、生えていたちょうどその下から水が湧いたということなのでしょう。水が多かったがためにダケカンバの木は根腐れして枯れてしまったようなのです。

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一方、そのかたわらには、たぶんシラビソでしょう、その木が元気に育っています。ちょうど根っこが湧水の水に触れるくらい。湧水のおかげで元気に育っているようです。ちなみにシラビソはモミの木のような針葉樹です。

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見上げるとシラビソの木は葉っぱの緑も瑞々しく見えます。たぶん湧水の位置は、その時々によって微妙に変わるに違いありません。その度ごとに樹木は立ち枯れたり、元気に育ったり、偶然に左右されるのでしょう。何気ないことなのですが、自然界の摂理を垣間見た気分になりました。

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近くでシカを見かけました。シカも水を求めていたのかもしれません。

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今回の旅はこれまでの「1本の木を探す旅」とは少し様相が違っていました。千曲川に沿って水源までたどり着く間にも色んな驚きがありました。帰ってきてからもそうです。すでに知られていることかもしれませんが、個人的には新鮮な発見の連続だったのです。みなさんも何気ない発見をしに旅に出ませんか。

千曲川源流
住所:長野県南佐久郡川上村大字梓山

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