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【日本一の〇〇連載】「即身仏」がもっとも多い山形県の理由と秘密とは!?

皆さんは「即身仏」をご存じでしょうか。僧侶のミイラの事で、村上春樹さんの小説『騎士団長殺し』にもこの言葉が出ていましたよね。広辞苑では「自ら断食死してミイラ化した業者」と記されています。そんな即身仏が日本でもっとも多いとされているのが「山形県」なのだとか・・・。そこで今回は、どんなお寺に、どれほどの数があるのか?なぜ山形県に多いのか?など、即身仏と山形県の関係を探っていくことにしてみましょう。
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ミルラ精油とミルラ樹脂
「ミイラ」とは防腐剤の名前が語源
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即身仏のある注連寺(鶴岡市) image by 山形県庁

冒頭でも書いたとおり、自ら断食死してミイラ化した行者を即身仏と呼びます。しかし「ミイラ化した」だけであって、ミイラと即身仏は正確にいうと違うようです。

まず「ミイラ」という言葉自体が、ポルトガル語の「mirra」から来ています。葡英辞書『Collins』で「mirra」を調べると英語で「myrrh」と書かれています。「myrrh」は見慣れない英単語ですが、『ジーニアス英和辞典』を調べると「ミルラ、没薬(もつやく)」と書かれています。

あらためて「没薬」と「ミルラ」を『広辞苑』で調べてみると、東部アフリカやアラビアなどに生える植物から採集したゴム樹脂と書かれています。さらに、
<香料・医薬また死体の防腐剤など用いた>(『広辞苑』より引用)
ともあります。要するに、ミルラ(没薬)を用いて防腐処理した死体をミイラと呼ぶのですね。

しかし即身仏に関しては防腐処理をしていません。一定のプロセスを経て自然にミイラ化・白骨化した行者をいうので、厳密にはミイラではないのです。
腐敗しない体で土中の石室に入り断食死する
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酒田市にある海向寺。即身仏が祭られている image by 山形県庁

ではミルラ(没薬)を使わずに腐敗を防いでミイラ化・白骨化するために即身仏となった行者たちは何をしたのでしょうか?

即身仏の衣替えで有名な湯殿山総本寺瀧水寺大日坊の公式サイトによると、「木食(もくじき)」という修行がまずあり、木の実だけに食事を制限して体の脂肪や水分を1,000日近くかけて落とすのだとか。

腐敗雑菌の発生が防げる身となった状態で、今度は土中の石室に入り、鈴を鳴らして仏の名を称えながら断食死します。3年3カ月など一定の期間を経た段階で、弟子や信者が掘り出し、乾燥などをさせて仏として祭ります。

記録の上では即身仏の数は、日本にもっと多いようですが、遺体が発見されない・遺体がばらばらで発見されるなどのケースもあり、十数体の即身仏が現存しているだけでも奇跡のような話なのです。
即身仏の数は県内に8体
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月山

その即身仏が確認されている数の多さでいえば、山形県が日本一とされています。山形県の公式サイトにも、
<即身仏の数 8体(江戸時代以降の湯殿山系即身仏の数)>(山形県の公式サイトより引用)
とあります。湯殿山系の「湯殿山」とは山形県の火山の名前です。月山・羽黒山・湯殿山を出羽三山と呼ぶと知っているとすれば、かなりのディープな旅人ですね。

月山・羽黒山で修業した行者が湯殿山で悟りに入るともいわれており、酸化鉄が沈殿した熱湯の湧き出る特徴的な巨岩があって、その霊岩が信仰の対象となっています。

さらに湯殿山を中心にして、庄内(山形県北西部の日本海近く)の鶴岡市内と内陸の西川町を結ぶ形で、六十里越街道が古代から通っています。山岳信仰が盛んだった江戸時代には年間数万人がこの古道から湯殿山を目指したのだとか。

湯殿山を中心とした一帯には寺社がたくさんあり、中でも真言宗系のお寺に即身仏が今でも多く残されています。六十里越街道沿いだけでも3体の即身仏が祭られているそう。その他の即身仏と合計で山形県内に8体が確認されており、その数が日本一を誇るのです。

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死んでから防腐処理したミイラではなく、生きながらにして木食し、さらに石室の中で断食して仏の名を唱えながら即身仏となった行者の気迫と願いは、現代人にも何事かを訴えてきます。

筆者も学生のころ、瀧水寺大日坊を訪れた経験があり、自分の堕落した生活を反省させられた思い出があります。

山形旅行というと銀山温泉や蔵王、サクランボ狩りなどを思い浮かべますが、そのコースに即身仏の拝観も組み込んでみると、旅の奥行きがぐっと増すかもしれません。

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[参考]

※ 山岳信仰の極み 即身仏を訪ねる旅 – 庄内観光サイト

※ 6年ぶり、即身仏の衣替え法要 鶴岡 – 山形新聞

※ 代受苦菩薩真如海上人 – 瀧水寺大日坊

※ 山形の日本一といえば「即身仏」 庄内の6体、25歳記者が一日かけて巡った – 毎日新聞

※ 山形県の日本一 – 山形県

※ 湯殿山 – 出羽三山神社

※ 即身仏をめぐる旅 パンフレット – 庄内観光サイト

※ 六十里越街道

[All photos by Shutterstock.com]


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