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どうなる中国旅行?今後の渡航とリスクを考える【政治学者が見る世界の今】

比較政治や国際政治経済を専門とする政治学者の筆者が、世界の情勢を考える人気シリーズ。今回は、回復するであろう中国への渡航者と、そこに抱える世界情勢が及ぼすリスクを考えてみる。※写真はすべてイメージです
近い将来増加が見込まれる「中国への渡航」
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heychli / Shutterstock.com

幸いにも、日本でも新型コロナウイルス感染症が減少傾向となり、外国人観光客の訪日が再び活発になろうとする中、日本人の海外渡航も日常に戻ることが期待されている。おそらく、日本にとっての最大貿易相手である中国に渡航する日本人も企業関係者を中心に増えることだろう。

外務省は現在、中国への渡航について、危険レベル1「十分注意してください」を新疆ウイグル自治区、チベット自治区のみに出している。

新疆ウイグル自治区では、過去に多数の死傷者を出す暴動や無差別殺傷事件が発生し、チベット自治区では過去に僧侶等によるデモが一部暴徒化し、多数の死傷者が出る事案が発生。これらが今後も発生する可能性があるので注意が必要との情報を発信している。

中国渡航におけるリスクとは
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しかし今後の日中関係を、国際政治学、安全保障の視点から考えれば、日本人にとっての中国渡航が抱えるリスクはそれだけではない。

岸田政権になって半年以上が過ぎるが、日中関係はさらに冷え込んでいる。岸田政権は米国のバイデン政権との結束を強化し、ウクライナに侵攻したロシアに対しては米国並みに厳しい姿勢を貫き、ロシア制裁を拡大している。

また、台湾問題や海洋覇権など現状変更を試みる中国に対しては米国や欧州との連携を強化し、中国側からは明らかに日本は対立側(国)とみる動きが強まっている。

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2005年当時の小泉首相の靖国参拝や2012年の尖閣諸島国有化の際、中国では日本製品の不買運動が拡がるだけでなく、現地にある日系企業の事務所や工場、スーパーなどが破壊される被害が生じたが、現在のところ、それが再び先鋭化するリスクは低い。

貿易・渡航への影響も
しかし、近年、中国は関係が悪化した台湾(パイナップルや高級魚など)やオーストラリア(ワインが牛肉など)からの輸入停止に踏み切ったり、中国にいる台湾人やオーストラリア人を背景不明なまま拘束するケースが相次いだ。

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そして、それは関係が冷え込む日本にとっても決して対岸の火事ではない。日中関係が冷え込めば、中国が半導体やレアアースなど重要品目を中心に日本へ輸出入制限を課してくる可能性があり、そうなれば中国に進出する日本企業の関係者を中心に中国各地への渡航に影響がでてくることは想像に難くない。

昔も今も、そして今後も日本にとって中国が重要な市場であることは変わらないだろう。しかし、日中関係の行方は米中露など大国間競争の影響を必然的に受けることから、その変化によって中国渡航におけるリスクが変化することを是非とも把握してほしい。


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