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ボランティアは自分を高める機会 笑顔で挨拶がすべての基本

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2020年の東京オリンピック・パラリンピックのボランティア募集が9月下旬から始まった。大会組織委員会や東京都が目指す募集人員は11万人。12月上旬まで応募を受け付け、採用された人は数度の研修を重ね本番に備える。ボランティアの意義を理解してもらう段階から、実際にどう活動するのか具体的な行動を学ぶレベルに進んでいる。スポーツボランティアの研究をしている二宮雅也・文教大准教授がこのほど、JXTGエネルギー社(本社・東京)で行った講演から、その一端を探ってみたい。

東京大会のゴールドスポンサーでもある同社では、4月にも二宮准教授の講演会を開き、社員にボランティア応募を促した。理解が進んだこともあり、今回、約600人の社員が応募の意向を示したという。実戦編の講演は本社に集まった190人のみならず、全国13カ所の事業所でもネットで同時中継された。

隣の人と自己紹介し合うJXTGの社員

二宮准教授によると、最終的に必要なボランティア数は全国で12万人以上になりそうという。これから聖火リレー走者の募集もあり、オリパラのもう一つの側面である文化プログラムの開催でもボランティアが必要になってくる。これだけの市民が無償で活動するのは「ボランティアが、おもてなしの日本代表だから」という。

ボランティアはチームで行動することが大前提で、第一の目標は「自己ベストを目指すこと」。ここで重要になってくるのは、自己ベストを出すためには、他人も自己ベストを出せる環境を自分がつくり出すことという。第二の目標は「多様性と調和」。全国各地のみならず海外からも、職業も年齢も異なる様々な人が集まりチームを組むため、メンバーとの協力が不可欠になる。第三の目標は「未来への継承」。ボランティア活動での苦労や頑張りは人としての財産となり、それが会社や社会での財産につながっていく。

では具体的に、どう活動するのか。最初の出会いの挨拶が肝心という。「10秒で自己紹介すること」。名前を名乗り、両手で包むような握手する。それをゆっくり振りながら、相手の目を見て話す。挨拶の目的は「アイスブレイク(氷を溶かす)」。表情だけでなく、心も溶かすことが必要で、お互いが打ち解ければ一気にコミュニケーションが取れる。心掛けるのは①相手より先にあいさつする②笑顔で③一言付け加える④声を掛けていいか状況を見る⑤できるだけ多くの人に―。これができれば、実際にボランティア活動中も観客や旅行者に対して、おもてなしの雰囲気を伝えられる。

スムーズに会話が進んでいるか様子を見る二宮准教授(中央)

16年リオデジャネイロ大会での、ある女性ボランティアの例が映像で紹介された。行き交う観客に気軽に声を掛け、歌を口ずさみ、弾むように動き、笑顔を振りまく。やりすぎかなと思えるほどだが、二宮准教授は「こういう行動は有償のスタッフにはできない。無償のボランティアだからこそできる。会場の、うきうきしたノリをつくり出せる。スポーツイベントは基本的に明るいもの。ノリとか、思いをボランティアがつくる」と解説した。

パラリンピックでも例を示した。障害者が困っている時に、大丈夫ですかと声を掛けると、大丈夫じゃなくても大丈夫と答えることがあると指摘し、「何かできることはないですか、お手伝いすることはないですかと話し掛ければ、素直に答えやすくなる」という。

一般的にボランティアの意義を問うと、日本を含めアジアの人は「困っている人を助けたい」というのが大多数の回答という。しかし、欧米の人は「自分の能力を高めたい」「自分の時間を有効に使いたい」「社会貢献したい」と様々な理由を挙げるそうだ。二宮准教授は、20年東京大会がこうした意識の差を埋める機会ととらえ「ボランティアを自分のために使っていい機会なのかもしれない。楽しかったと次につなげることもオリパラのレガシー(遺産)です」と締め括った。