スポーツ

【コラム】開催可否判断早まる可能性も 簡素化で動きだした東京五輪

【コラム】開催可否判断早まる可能性も 簡素化で動きだした東京五輪 画像1

 来夏に延期となった東京五輪・パラリンピックは「簡素化」で動きだした。国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会は6月、コスト削減や新型コロナウイルス対策の万全を図るためにこの方針で一致した。コロナの感染拡大を考えれば「完全な形」での実施は無理な話で、現実的な対応となったわけだ。「安全・安心な環境を提供することを最優先課題とする」、「延期に伴う費用を最小化する」「大会を簡素(シンプル)なものとする」という三つの基本原則が示された。

 この決定から約1カ月が経過したが、コロナは収まるどころか、7月に入って東京を中心に新たな感染者数がまた増えてきた。東京都知事選前の電話世論調査(共同通信などが実施)をみると、都民の31・1%が「簡素化・無観客など運営方式を見直して開催すべきだ」とIOC、組織委を支持した格好だが、「中止すべきだ」は27・7%と大差なく、「再来年以降に再延期すべきだ」も24・0%。中止・再延期が合わせて51・7%と半数を少し上回った。都民の多くが小池知事の続投を支持したが、ホストシティーの住民を納得させるためにも厳格な見直し作業が必要だ。開閉会式の簡素化、無観客開催または観客数の削減などが議論されるが、スポンサーとの調整や、販売済みのチケットをどう扱うかなど問題は山積している。どうやれば開催にこぎつけられるかということが最大のテーマで、智恵の絞りどころとなる。

 コロナという思いもしなかった強敵が現れて、肥大化の一途をたどった五輪自体も見直されることになった。組織委のリリースでは東京五輪・パラリンピックが「未来への持続可能な出発点となるだろう」とうたっているが、コロナ禍の中の新しい五輪の姿をどう浮かび上がらせるか。IOCとともに重大な責務を背負ったといえる。

 行程表(ロードマップ)によれば、コロナ対策の本格的な検討は今年の秋以降になる。選手、観客らへの事前のPCR検査などの実施も重要になるし、選手村からの不要な外出禁止が議論されるかもしれない。また冬を迎えたときに状況がどうなっているか。治療薬やワクチンの開発はどこまで進んでいるのか。

 開催可否の判断時期も大きな問題となる。6月下旬に女子マラソンの五輪メダリスト、有森裕子さんが自らの経験を踏まえ、「年内に判断がつかないならやめた方がいい。来年の3月まで引っ張ったら選手(の心身)が持たない」と共同通信の取材に語った。個人的にもこの発言は十分うなずける。

 組織委では来年3月を判断時期と捉えているようだが、コロナに好転の兆しが見られなければ、アスリートから中止論が出てくることも予想される。年内か、遅くとも年明け早々がデッドラインになる可能性もある。いずれにせよ、選手のことを第一に考えてもらいたい。

【筆者略歴】

 後藤英文(ごとう・ひでふみ) スポーツジャーナリスト。共同通信では初代スポーツ専門特派員としてニューヨークで勤務。MLBワールドシリーズやW杯サッカー、NFLスーパーボウルのほか夏冬の五輪などを取材。元びわこ成蹊スポーツ大学教授。