食べることが大好きな私。
いままでの人生の多くの時間を、大好きな人たちと、おいしいものを食べることに費やしたと思う。しかし、孤独なひとり飯も割と好きである。
完食というゴールに向かって、どんなあんばいで食べ進めるかは毎回の真剣勝負。ごはんとおかずのせめぎ合いだ。
うれしいことは後に残しておきたい私には、おいしさのピークを最後の一口に集約するという大事な任務がある。
例えば、みんな大好き、崎陽軒の「シウマイ弁当」。
ビジュアルが浮かぶ方も多いと思うが、ご飯が8分割。この白米に、おかずをどう分配するかが鍵だ。メインのおかずは、シウマイ五つと、マグロの漬け焼と、鶏の唐揚げ。このおかずの合間に、かまぼこや玉子焼きをどう組み込むかでラスト一口が大きく変わる。タケノコ煮は数があるので、全体に散らばらせることも可能。昆布と紅しょうがの配置も大切だ。
そして! 永遠のテーマ! あんずを先に食べるか、デザートに残すか…。私はトップバッターをお願いし、しょっぱい系の旅に繰り出すことが多い。シウマイのカラシは先に全てにのせ、しょうゆもあらかじめ付けておく。こうすることで、途中の作業がなくなり食べることに集中ができる。忘れていけないのは、ご飯の真ん中にあるカリカリ梅。意外と最後にサッパリもおすすめだ。・・・と、こんな具合に私は司令塔となり、頭の中で作戦会議をしながら食べ進めるのだ。
あとは、おいしいけれども、最後の一口にはしたくないものもある。
ピザの耳。「スイカバー」の皮の部分。「ポッキー」や「きのこの山」の持ち手の棒。などなど・・・。
だから私は多少無理な持ち方にはなっても、これらを先にいただき、おいしいラストを迎えるようにしている。
そんな私が運命的な出合いを果たした。
作戦会議をしなくても一口目から、ラストまで完璧な食べ物。それが「ブラックサンダーアイス」!
どこをどうかじっても、完璧においしい。たとえ真ん中から食べても、だ。ブラックサンダーアイスの時、私の作戦会議は、しばし休憩。
何も考えずに食べるブラックサンダーアイスは最高においしい!
桃花的おいしいバランスを完璧にかなえた時は、満足度合いが桁違いだ。
さあ! さらなる高みを目指して、今日も桃花軍は食事に挑むのだ!
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 48からの転載】
蝶花楼桃花(ちょうかろう・ももか)/東京都出身。春風亭小朝さんに弟子入り後、二ツ目・春風亭ぴっかり☆時代に「浅草芸能大賞」新人賞を受賞。2022年3月、真打ちに昇進し高座名を「蝶花楼桃花」と改める。昇進披露興行、初主任興行、企画にもかかわった全出演者女性による「桃組」はいずれも大入りを記録。12月26日、日本橋劇場(東京都)で「師走の独演会」を開催。