初の女性首相が誕生している日本だが、男女間の格差、いわゆるジェンダーギャップの解消にはまだ課題が山積みだ。スイスの非営利財団、世界経済フォーラムが経済、教育、健康、政治の分野ごとに各使用データをウェイト付けして算出しているジェンダー・ギャップ指数を見ると、今年の日本は145カ国中117位。政治の世界でまだ女性大統領が生まれていないフランスは22位、アメリカ47位、中国も96位だ。この男女格差の問題を国内に視点を据えて捉えた「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」は、地域ごとの男女格差を可視化し、その背景を掘り下げることができる具体的な指標。家庭でも社会でもさまざまな課題が浮かび上がる中、国際女性農業従事者年の今年、農業の世界に焦点を当てたシンポジウム、「地域からジェンダー平等を2026」が10月15日、東京で開催された。
共同通信社と日本農業新聞の主催。農林水産省、内閣府男女共同参画局、全国知事会後援。Airbnb Japan、共栄火災海上保険、JA共済連、JAバンク、東京農業大学、日本政策金融公庫協賛。
農業に切り込む初のシンポ
「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」は、2022年から政治、経済、行政、教育の分野について、世界経済フォーラムの指数と同様の手法で算出、国際女性デーの3月8日に公表されており、これをもとに各分野の問題を議論するシンポジウムが開かれてきた。気候変動から物価高まで、食を支える農業に目を向ける機会の多い昨今だが、“現場”の女性たちが抱えるさまざまな問題を知る機会は少ない。特定の産業に切り込んでいくのは初めてとなる今回のシンポジウムには、姉歯暁駒澤大学経済学部教授、山脇絵里子共同通信社編集局メディアセンター長、大林茂松グリーン近江農業協同組合代表理事組合長、そして農業者で暮らしFITプロジェクト主宰の新海智子氏が登壇。緒方大造日本農業新聞論説委員がモデレーターを務めた。
冒頭、山脇氏は「農業はこの国を支える大切な基幹産業。女性も男性も誰もが存分に力を発揮し生き生きと働ける、活力と多様性のある農業のあり方を議論したい」と挨拶。農業専門の全国日刊紙である日本農業新聞の緒方氏は、「きのうは簗さんの問題で大変でした」と会場の空気をほぐした後、「女性農業者に焦点を当てたシンポジウムが開けることをうれしく思います」と議論をスタートした。

法は平等でも残る壁
最初に姉歯氏が「国際女性農業従事者年、『女性のため』が拓く扉―誰もが農業を続けられる未来へ」と題して基調講演。農業と食糧を支えてきた女性の働きは、これまで十分評価されてこなかったと女性農業従事者年の意義を解説。戦後の憲法、民法改正で、法律上女性は男性と対等になったかのようだが、80年たっても農家の女性はさまざまな壁に阻まれ自分の生き方を自分で選ぶことができないと問題提起した。もちろん日本の女性たちは今まで黙っていたわけではなく、声を上げ、改革に尽力してきたとしたうえで、「もう一歩外へ踏み出す」必要性を強調。女性が自立していける仕組みを、本人の努力や家族の合意に委ねるだけでなく、制度として義務付ける必要があるとした。
問題の背景について姉歯氏は、「法律の上での平等、家の中での平等、そして地域の中での立場が別々の論理で動いてきた」とし、相続と血筋主義、家族経営など、農家における慣習や意識だけの問題ではなく、妻の働きが夫の働きの一部として扱われる税制度上の条件の問題も大きいと指摘。労働時間を決めた協定でも、家事、育児、介護まで踏み込んでいるのは半数以下。この点、親の介護は社会が担う制度で、農業者としての人生設計を立てることができるスウェーデンの例を挙げて比較し、介護の社会化などを提案。評論家の丸岡秀子氏の「農家女性の問題は、女性全体の問題の根っこ」という言葉を引用したうえで、「(農業など)それが極端な形で可視化されているところから学ばねばならない」とまとめた。

都道府県ジェンダー・ギャップ指数を発案した山脇氏は、まず新聞・通信社の記者比率が27.7%、管理職の割合に至ってはわずか11.5%という日本新聞協会の最新データを紹介し、ジェンダー平等におけるメディアの“成績”の悪さに言及したうえで、これは農協の役員比率と同じだと、業界に関わらず存在するジェンダー・ギャップをデータで裏付けた。また他の地域から首都圏への人口流出について触れ、性別役割分業や、女性のチャンスが制限されている地域など、データを使って地域ごとに課題を見つけ出す必要性を強調した。








