
-そして、子どもの頃、一緒に事件を起こして以来、疎遠になっていた拓海との再会は、アーチェリーに打ち込む龍之介の人生を次第に狂わせていきます。
磯村 末澤くんとは初共演で、龍之介と拓海が再会する場面は僕たちにとっても初めて一緒にお芝居するシーンだったので、拓海がどんな空気を持っているのか、探りながら演じていました。とはいえ、龍之介と拓海が親友だったことは2人とも認識していたので、お芝居の中で会話のキャッチボールがきちんとできれば問題ないだろうと思っていました。
-龍之介と拓海の微妙な距離感は、お二人のお芝居から伝わってきました。初共演となる末澤さんとのお芝居で、特に心掛けたことはありますか。
磯村 距離を縮めるために、とにかく会話をすることを心掛けました。ただ、末澤くん本人は会話好きな人でしたし、年齢も近かったおかげで、同級生のような感じで話ができ、すぐに打ち解けることができました。
吉田 現場では、劇中と違って綾野さんを含めた3人で和気あいあいと過ごしていたよね。そういう意味では、3人ともお芝居に対する集中力が高く、瞬時に切り替えられる人たちだったので、僕はすごく楽でした。和気あいあいとやっていると思ったら、カメラが回った途端、それぞれ役に入ってくれたので。
-綾野剛さんの演じる埜本との関係では、2人が居酒屋で会話するシーンも龍之介の大きな転換点となりますね。
磯村 龍之介にとって、埜本はできるだけ近づきたくない相手だったので、「まさか2人で飲むことになるとは…」という違和感しかないんです。それでも、最終的に埜本の言葉で心を揺さぶられてしまう。あのシーンは、綾野さんとの呼吸が大事だったので、お芝居は繊細に調整していきました。
吉田 あそこは、綾野さんもだいぶ苦戦していたよね。埜本が距離のある龍之介の感情を揺さぶらなければいけないので、どうしたらいいのかと。それでも最終的には、すごくいいシーンに仕上げてくれて。僕も現場で観ていて、グッときました。
-磯村さんは、末澤さんや綾野さんと共演した感想はいかがでしたか。
磯村 末澤くんや綾野さんとのお芝居の中から、台本以上のものが生まれることもあるので、現場の“生感”を楽しみながら演じていました。特に、龍之介は感情が見えづらいキャラクターでもあるので、お二人のお芝居を受けてどんな表現ができるのか、探りながら進めていきました。
-吉田監督の作品は人間が普段隠している内面をえぐり出すような物語が多く、本作もその一つですが、初顔合わせの感想はいかがでしたか。
磯村 僕は、人間の“えぐみ”みたいなものをすくい取る吉田監督の作品が好きで、今回は自分がその世界に入れることが楽しみでした。だから、それをどう表現していこうかと、ずっとワクワクしながら演じていました。
吉田 僕がお芝居で最も重視しているのは、せりふやキャラクターに対する説得力です。その点、磯村くんは非常に説得力のあるお芝居をしてくれたので、最後まで安心して見ていられました。
-ところで本作は、磯村さんの故郷・静岡県の沼津市でも撮影されたそうですが、地元でロケした感想はいかがでしたか。
磯村 今までも何度か地元で撮影したことはありますが、今回は比較的長く撮影していたおかげで、自分が学生時代に通学路として使っていた場所に、末澤くんや綾野さんと3人でいるのが不思議な感覚でした。でも、地元だからこそ、その場の空気は役を演じる上で役立ちましたし、僕自身もうれしかったです。
吉田 僕は以前も『ミッシング』を沼津で撮影しましたが、海があり、僕の好きな昭和ノスタルジーも漂いながら、東京のような街の機能もあるので、どの場所を切り取っても違和感がないんですよね。その上、地元の皆さんの手厚い応援体制もあり、とても撮影しやすく、ありがたい場所でした。







