創業30年を迎え、事業規模を拡大するリバティ。成長を続ける中、コスト上昇への対応や業務の効率化、人材の確保・育成といった経営課題にどう向き合っているのか。専務取締役兼経営企画室室長の蓮尾優人氏に、価格転嫁、DX、人材確保の三つのテーマから、同社の取り組みを聞いた。
【会社概要】
株式会社リバティ:1996年創業。中古車を中心とした自動車販売に加え、車検、鈑金、保険など、自動車に付帯するサービスを展開。すべての店舗に国土交通省指定整備工場を併設し、車の購入からアフターサービスまで一つの店舗で対応するビジネスモデルを構築している。年間の自動車販売台数は約2万8000台、車検台数は8万7000台を超える。2026年度の売上高は約700億円での着地を見込む。グループ会社を含む従業員数は約1100人、店舗数は36店舗。
【価格転嫁編】
▽人件費上昇が経営に影響

――価格転嫁やDXなど、さまざまな経営課題に取り組む上で、社内ではどのような体制をとっていますか。
会社の中には「やりたいことはあるけれど、どうすればいいか分からない」という課題がいろいろあります。そこで、AIやDX、コスト削減、生産性向上などに対応できる人材を既存社員の中から選んで集めて、経営企画室という部署をつくりました。現在は私を含めて4人です。AI、DX、生産性向上、コスト削減、予算管理などについて、基本的な起案は経営企画室が行い、実務では各部署に動いてもらっています。
――では、一つ目のテーマから。物流費や人件費、光熱費など、さまざまなコストが上昇しています。経営への影響はいかがですか。
当然、影響は出ています。一番大きいのは人件費です。最低賃金などが上昇する中で、当社もそれに伴った昇給を続けています。今年10月からも最低賃金が5%程度上昇しますし、おそらく来年も5%近い昇給が必要になると思っています。当社の規模では、それだけで数億円単位の人件費増になります。経費としては、これが圧倒的に大きいですね。
一方で、中古車はお客さまがウェブ上で簡単に比較できます。以前ならチラシやCMを見て何となく来店される方も多かったのですが、現在は複数のウェブサイトを比較したうえで来店されるのが当たり前です。そのため、車両価格を単純に引き上げればいいわけではありません。
――では、どうしたのですか。
まずはコスト削減です。約3年前から、仕入れ価格等は当然のこととして、それ以外のありとあらゆる会社から出ていくコストの見直しから始めました。本当に細かいところまで全部見直しています。店舗ごとに契約していたものを一つの大きな業者にまとめて、スケールメリットを出したり。電気代や水道光熱費に始まり、さらに細かいところでいえば、例えば整備士の作業着をレンタルに変えたりなど、ありとあらゆる経費を見直しました。
3年間で、おそらく億単位でのコスト削減ができたと思います。そういったことをやりながら、価格を維持する。これをまず最低限の努力としてやってきました。
――ただ、コスト削減だけでは限界がありますね。
そうなんです。経費削減もある程度やり切りました。これ以上削るところがない。でも、人件費は上がっていく。そこで必要になるのが「1件あたりの収益性をどれだけ高められるか」です。
これまでは「物量」でカバーする考え方が強かったと思います。例えば営業担当者1人あたり月10台売ろう、というように、何台売るかが重視されていた。でも、1人が販売できる台数には限界があります。年間500台売るトップ営業マンに「来年は600台売ってね」と言っても難しい。体は一つだから。しかも今後は休日が増え、労働時間は短くなっていく。販売台数を増やすだけで生産性を上げ続けることは難しくなります。だから、これからは台数だけではなく、「中身」が重要になります。
▽単純な値上げではなく、中身で勝負する

――利益を高めるために、具体的には何をしていますか。
やっぱりプライシングですね。でも、すべての車を一律に値上げすることはしていません。市場価格や需要にレスポンスよく対応する、ダイナミックプライシングの仕組みを構築しました。また、商品価格帯としても高価格商品と低価格商品を組み合わせたラインアップをつくっています。
低価格商品を見て来店されたお客さまでも、実際に比較してみると「こちらの方が機能がいい」「燃費がいい」「こちらの方が格好いい」と、別の商品を選ばれることがあります。単体の商品だけで勝負するのではなく、商品のラインアップ全体の中から選んでいただく。そこで、価格転嫁が半自動で起きている。これがまず一つです。
――価格を維持しながら利益を上げるために、ほかに何が重要になりますか。
ただ1台の車を販売するだけでは、もう利益が出にくい構造になっています。車を買っていただくだけではなく、保険も一緒に契約していただく。次回以降の車検にもしっかり来ていただく。オプションや付帯サービスも付けていただく。ここの取り組みをもっと深くしていかないと、これからは生き残っていけないと思っています。生涯取引を通じて、ほんの少しずつではありますが、お客さまから利益を頂き続けるイメージです。
中古車って、基本的に「商品が一緒」なんですよ。同じ車種なら、うちの車だけ燃費が良くなるとか、速く走るということはないですよね。そうすると、他社と違いを出せるのは結局、「価格とサービスだけ」なんです。価格については、在庫数やラインアップ、プライシングで勝負できる。一方でサービスは、営業力だったり、お客さまの満足度だったり、「人」でしか差別化できない部分です。特にこれからは「人」による差別化が重要になってくると考えています。
――取り組みの成果は数字にも表れていますか。
一人当たりの生産性は毎年上がっています。賃金上昇率5~6%を継続しながらも、一人当たりの生産性を毎年上昇させることで、増収増益を実現できています。
【AI・DX編】
▽7年前はすべてがアナログだった

――DXはいつ頃から意識されるようになったのでしょうか。
本格的に取り組み始めたのは、私が入社した約7年前です。当時はすべてがアナログでした。そもそも自動車業界自体、デジタル化がかなり遅れていたと思います。ITリテラシーもネットリテラシーも低かった。当社もウェブ広告すらやっていなくて、広告は折り込みチラシと、既存のお客さまへの紙のダイレクトメールが中心でした。勤怠管理も紙のタイムカードです。それが現在では、広告費におけるアナログ媒体の比率は圧倒的に下がり、ウェブ広告が中心になっています。社内業務においても、紙ベースでの管理は一切なくなり、デジタルベースでの管理への移行に成功しました。
――アナログな組織を変えるうえで、最も難しかったことは何ですか。
社員の意識です。23年間アナログでやってきた会社ですから、最初は「DXって何?」という状態でした。そこで一担当者が「このツールを入れたら生産性が上がります。月5万円なので導入しましょう」と言っても、会社全体は変わりません。一番大事なのは経営陣が「会社としてDXを推進する」と明確に示すことです。必要なら経営陣が自ら会議に参加して、責任を持って進める。それくらいやらないと定着しません。DXやAIは、ツールよりも入り口の部分が重要だと思っています。
――DXを進めたことで、社員やお客さまからはどのような反応がありましたか。
お客さまから、特に「すごく良くなった」という反応があったわけではないと思います。今の時代においては、お客さま自身がデジタルに慣れているんですよね。
一方で、社員への定着は大変でした。自動車業界としてはまだ普及していなかった電子契約システムを導入した時も、当初は利用率がなかなか上がらなかった。成果になるまでの耐える時間が結構つらかったです。でも、そこでやめてしまったら定着しません。新しい取り組みを導入したときに、ハレーションが起きるのは当然のことだと思うので、最後はもう「やれ! 以上!」っていう感じ(笑)。それくらいトップダウンでやり切らないと、新しい仕組みはなかなか根付かないと思います。
――なるほど。社長にはどのように説明したのですか。
実は、そこはあまり説得していないんです。社長は、ずっとアナログで経営してきたタイプなので、デジタルの分野に関しては一任してもらった感じでした。
ただ、周りの企業から「こんな取り組みをして、こう変わったらしい」とか、「電話が5年前と比べて10分の1に減った会社があるらしい」といった情報が入ってくると、社長も関心を持ちます。そこで私が具体的な方法を提案すると、大体OKが出ます。「任せるわ」という感じですね。
▽増えすぎたシステムを一つに集約

――DXを進める中で、新たに見えてきた課題はありますか。
最近一番大きなコストだと思っているのは「ツールが多すぎること」です。勤怠はA、会計はB、現場管理はC、労務管理はD、評価制度はEというように、それぞれ別のシステムを使うと、システム同士がつながりません。すると現場で二重入力が発生したり、経理が現場の数字を別システムまで見に行ったりする。さらにAとB、BとCをつなぐためのコストも発生します。そこでシステム相関図をつくって、「これは統合できないか」「これは廃止できないか」と整理しています。
現在は、現場の管理ツールなども含めて、できる限り同一のクラウドプラットフォームに統一しようとしています。基幹システムなど一部集約に至っていない部分もありますが、それ以外はかなり集約できるところまで来ており、それがコスト削減にもつながっています。
――顧客対応のDXについてはいかがでしょう。
以前はお客さまに紙のアンケートを書いていただき、それを店舗スタッフが手入力していました。そうすると入力の仕方にばらつきが出ますし、データの正確性も十分ではありません。現在は全店舗にiPadを配布し、お客さま自身に入力していただいています。そのデータがそのまま集約され、従来は確認することができなかったデータを経営側で確認できるようになりました。蓄積した顧客データを活用してAIで分析し、お客さまにより適切なアプローチを実現していきたいと考えています。
――電子契約の話もありましたが。
車の契約では、一般的にはまだ紙の注文書や契約書を使うところが多いですが、当社では電子契約システムを導入しています。導入したのは5年ほど前です。現在は契約の8割程度を電子署名で行っています。電子契約にするとデータがきちんと残りますし、印紙代も不要になります。これまではすべてのお客さまにご来店いただくなどのお手間をおかけしていましたが、電子契約システム導入後はお客さまが自宅にいらっしゃってもメールで契約書を送り、その場で署名していただくことが可能となりました。
もちろんご年配のお客さまもいらっしゃいますので、100%電子化するのではなく、紙も残しています。極端にせず、両方を使うことが必要だと思っています。
【人材確保編】
▽整備人材は外国人採用を拡大

――自動車業界の人材確保は、現在どのような状況でしょうか。
当社の職種は大きく分けて、営業、整備、鈑金、事務の四つがあります。
その中でも特に整備士や鈑金工員は明らかに減っています。特に鈑金工員は顕著です。当社は車検や鈑金などのアフターサービスを事業の柱にしていますから、ここで人材を確保できなければ、アフターサービスへの対応が難しくなります。そこで重要になっているのが外国人採用です。
――外国人採用はいつ頃から始めたのですか。
約10年前からです。海外から採用する場合もありますし、日本の整備学校を卒業した外国人留学生を採用することもあります。現在、整備部門の外国人比率は約20%です。これを今後2~3年で40%まで高めるよう、整備部門の役員には伝えています。外国人整備士の採用自体は、自動車業界では珍しいことではありません。企業によっては外国人比率が半数を超えているところもあります。
――整備士について、新卒採用も進めているのですか。
新卒採用のうち、整備士は5%程度です。整備士は中途採用が中心になります。なぜかというと、資格が必要だからです。2級整備士や自動車検査員など、指定工場を運営するために必要な資格は、新卒で入ってすぐに取れるものではありません。資格を取るまでには時間がかかります。ですから、当社のように自社で車検を通す指定工場のモデルを維持しようとすると、資格を持っている中途人材を採用する必要があります。
整備士や板金工員は「給料が安い」と思われている部分もあって、人が集まりにくい。整備士になりたいという人が増えればいいのですが、そのためにも、業界を良くするには経済的な待遇を改善していかなければならないと思っています。
もちろん、給料を上げれば企業にとっては人件費が増えるので、自分たちの首を絞めることにもなります。でも、これは業界全体で考えなければならない問題だと思っています。
▽新卒営業は「選考」から「面談」へ

――一方、営業職の新卒採用では、どのような工夫をしていますか。
会社の知名度、規模ともに拡大しているのですが、実は学生のエントリー総数はほとんど増えていません。一方で会社は成長している。ですから、来てくれた学生に「当社を選んでもらう率」を上げるしかありません。
そこで約3年前から、採用のやり方を大きく変えました。以前は1次選考、2次選考、3次選考、最終選考と、会社が学生を「審査する側」だったと思います。でも今は売り手市場です。学生にはいろいろな企業を選ぶ権利がある。その中の一社にすぎない当社が、偉そうに面接しているだけでは選んでもらえません。だから、採用の中心を「選考」から「面談」に変えたんです。
――面談では、どのようなことをするのですか。
学生との接触頻度をかなり増やしています。例えばオンラインで「就活どう?」「何か困っていることはない?」と話したり、「あなたならこういう仕事が向いていると思う」「当社ならこういうところが合うと思う」と伝えたりします。
一般的な面接のように「志望理由は何ですか」と一方的に質問するのではなく、できるだけ対等でフランクに話す。場合によっては、当社だけではなく就職活動全体のアドバイスもします。なので、「こんなに自分に向き合ってくれる会社は初めてだった」と言ってくれる学生もいます。その結果、以前は新卒採用が年間約30人だったのが、現在は毎年100~120人程度を採用できるようになりました。そのうち60〜70%程度が営業職です。
――新卒採用を重視しているのはなぜでしょうか。
新卒を100人採用するとすれば、中途は約50人です。一般的な大手企業などでは中途の方が多いと思いますが、当社は新卒文化を大事にしています。
中途採用では、前職の会社の文化などを経験していますので、当社の文化と合わない場合もあります。新卒の場合は、採用段階の面談を通して「リバティはこういう会社です」ということを時間をかけて伝えられる。その文化を理解したうえで入社してもらえるメリットがあります。
▽個人競争よりチームで若手を育てる

――リバティには、どのような企業文化があるのでしょうか。
自動車の営業というと、個人の売り上げを競うイメージが強いと思います。インセンティブが強い会社では、どうしても社内が殺伐としやすい部分があります。当社の場合は、そうした個人インセンティブを長く設けていません。それがもう当たり前になっているので、一時的に成績が悪いスタッフを必要以上に責めたり、誰かのお客さまを奪い合ったりするようなことが起きにくい。調子が悪い人がいれば周りがフォローする。そういう助け合う文化はあると思います。
インセンティブがないことで、社員同士でお客さまを奪い合うような意識が強くならない。その結果、誰かをサポートしたり、後輩を教えたりするなどのチームワークが自然と醸成されます。
逆に、個人インセンティブが強いと、営業ノウハウの共有なども起きにくくなります。なぜなら、自分以外の営業が成長することで自分の数字が下がることにつながるからです。トップ営業が自分で商談を全部取って、数字を上げ続けたら、その人にとってはいいかもしれない。でも他のメンバーに商談が回らなくなれば、若手が育たない。結果として組織全体が強くならないんです。
――個人インセンティブは元々なかったのですか。
いえ、創業して最初の5年、10年くらいはあったと思います。でも、実際にやっていく中で社長が「やっぱりこれは良くない」と気づいたんです。個人プレーになってしまうし、チームが育たない。もちろん、個人の成果を評価しないわけではありません。成果を出した社員は翌年の固定給が上がったり、役職が上がったりします。ただ、「1台売ったらいくら」という直接的な個人インセンティブは設けていません。
もちろん、数字は全部見えるようにしています。誰が今月何台売っているか、1台あたりどれくらい利益を出しているかも、全社員が確認できます。現状を理解することは大事ですから。ただ、その数字を見て「あいつは成績が悪い」で終わるのではなくて、「あの子は成約率が悪いから商談の横についてあげて」「商談件数が少ないから、来月はもう少し機会を増やしてあげて」と考えるようになっています。
個人インセンティブがない分、助け合いやすい反面、責任の所在が曖昧になってしまう懸念もあります。その点に関しては、担当の垣根を超えてすべてのお客さまを自身のお客さまと捉えるように指導しています。
――若手の定着については、どのような状況でしょうか。
若手社員、特に入社3年目以内社員の定着率は当社においても課題の一つです。3〜5年を超えるとかなり定着してきます。一番辞めやすいのは、やはり実績が上がらないスタッフです。実績を出せないと、働いていても楽しくないし、成長している実感も持てない。そうすると辞めてしまう。
だから、店長や先輩がどこまでフォローしてあげられるかが大事になってきます。フォローの密度が濃ければ実績が上がる。成長した実感も得られる。その実績をもとに昇給したり、昇進したりする。そこまでつながっていくと、なかなか辞めなくなります。
ただ、新卒採用が30人程度だったところから100人、120人と一気に増えたので、一人ひとりを見るのは本当に大変です。そこは今も試行錯誤していて、3年前より去年、去年より今年、今年より来年と、教育制度も含めて改善していかないといけないと思っています。
【今後の展望】
▽2030年に売り上げ1000億円、その先に「業界日本一」を目指す

――最後に、会社の展望について教えてください。
数字として明確に掲げているのは、2030年に売り上げ1000億円を達成することです。これは2020年頃からずっと目標として掲げています。その先には、社長が以前から言い続けている「業界日本一」という目標があります。売り上げなのか、利益なのか、従業員数なのか、一つの指標だけで測れるものではありませんが、さまざまな面で日本一の会社を目指したいというのが社長の夢です。
ただ、売り上げや利益が増えれば何でもいいとは考えていません。お客さまに「リバティで車を買って良かった」と思っていただくこと。そして社員にも「リバティで働いて良かった」と思ってもらえる会社でなければいけません。当社では経営理念として、「お客さまの究極の大満足と、全社員の物心両面の幸福を追求する」という考え方を掲げています。ここがすべてのベースです。ですから、お客さまや社員をないがしろにして日本一を目指すのではありません。そこをしっかり守ったうえで、数字でも日本一を目指していくということです。
――社員の「物心両面の幸福」を実現するのは簡単ではありません。
そこが一番難しいところだと思います。例えば、「年収1000万円、2000万円を払うから、その代わり寝ずに働いてください」という会社なら、経済的な面は満たされるかもしれませんが、それ以外が犠牲になります。逆に、「年間200日休んでいいけれど、年収250万円です」という会社でも、片方だけしか満たしていません。給料を上げ、休日を増やし、働きやすさを高める。そして会社として利益も出す。この両方を実現するのは非常に難しいことです。
でも経営側が「どちらかは諦めよう」と言ってしまったら、社員にとって魅力のある会社にはならないと思っています。答えが簡単に出るものではありませんが、物心両面を追求するという考え方から逃げずに、経営として考え続けていかないといけないと思っています。
プロフィール
蓮尾優人
1992年生まれ。立命館大学卒業後、コンサルティング会社勤務を経て、2019年に父・蓮尾耕司氏が創業した株式会社リバティに入社。2026年4月から専務取締役。







