-役者としては、そのいのうえさんが提示したものを超えるというのは大変だったのでは?
いのうえさんがやると稽古場がドカンと揺れるぐらい周りにいる皆さんが笑うので、いのうえさんの後にやるというのはなかなかのプレッシャーでした(笑)。
-今作の製作発表会見で、「紅鬼物語」を終えて「もっとこうしたかったという思いがあった」という話をされていましたが、具体的にはどのようなことがあったのですか。
皆さまに喜んでいただいたからこその「もっと」という役です。演じた紅子は鬼であり、娘であり、妻であり、母でありという役どころで、いろいろな面を見えるように描いてくださったのですが、母とはどういうことか、鬼とはとか、1人の娘が1人の男性に命を救われ、戦場の屍の中で出会うということとか、一つひとつを積み上げて、もっと物語の世界で、紅子を演じ続けていきたかったというのもありました。立ち回りに関しても、今作でも共演させていただく早乙女友貴さんを子分に持つ最強の鬼という役でしたので、早乙女さんが演じる鬼よりも強く、彼に鬼として尊敬されなければいけなかったのです。お客さまに物語に入り込んで楽しんでいただくためにも、その説得力は何よりも私の立ち回りに懸かっていたこともあり、そこを任せていただけることにありがたさを感じながらもっとできると、千秋楽まで追い求めていました。
そして、“いのうえ歌舞伎”ということで、かぶくとか、見得とか、決めぜりふとか、そういうことは劇団☆新感線さんならではの醍醐味ですので、一つひとつの効果音や演出が、改めてありがたい時間だったと、千秋楽を終えてからも、何度も頭を巡っていました。
-立ち回りに関しては、「戦う極楽太夫」と言われるぐらいの役なので、注目したいところです。
武器も違いますし、そもそも人間ですし、いろいろなものが紅子とは全く違いますので、太夫の戦い方、彼女の守り方というものを、立ち回りで自分が表現を追い求めなくてはと思っています。
-ご自身の役も含めて、今作のアクションの見どころは?
まず、量の多さだと思います。今までの「髑髏城の七人」の中でも立ち回りが多い作品になるのではないかと感じています。殺陣好きのお客さまにはとても喜んでいただける最後の「髑髏城の七人」だと思います。太夫としては「戦う極楽太夫」と伺っていますが、これまでと比べると、仲間を守るために彼女が戦うシーンにおいて、それが彼女の無界の里に対する思いなのか、それとも彼女が失ったものに対するものなのか、相手への思いに思いをぶつけるものなのか、太夫の思いが立ち回りとして表現されるところが多いのも見どころになると思います。
-宝塚歌劇団を卒業してからの現在地における現実をどう感じていますか。
今まで男性の役ばかりを演じてきましたが、女性の役を演じるようになり2年がたちました。見た目も少し変わり、細かな変化ではありますが、少し女性らしい形になってきたのではと思います。顔つきが変わったりとか、使う筋肉が違うので体つきが変わったりとか、単純に髪の毛が伸びたりとかもあります。着る服も、以前は絶対にスカートを履かなかったのですが、今ではパンツスタイルだけでなく、スカートも履くので、ファッションにおいても幅が広くなりました。そういう意味でも、普段から身にまとうものが変わると、雰囲気が変わったと自分で実感するところもあるので、2年の変化というものを感じます。2年前では絶対に想像しなかったような自分の姿というのもあり、それは内面から出てくるものも含め、想像しなかった自分の姿や、お役との出会いがあります。
-役者として、今後に思うことは?
男役をやめて女性として演じるという中で、女性を演じるということに対しては、もともと女性なので、その気持ちや、そういうお芝居というのはどうなるのだろうかという不安と、未知のところもありながらやってみようという感じでしたが、思った以上に難しいところもありました。女性の役を演じるということについて、女性ですけど、男性の役でしか芝居をしてこなかったことから、意外と自分の女性像に対する思いで作ってしまいそうになることもあるのだなと知り、もっと、自分自身を含め、人間を学びたいと思っています。
(取材・文・写真/櫻井宏充)
2026年劇団☆新感線46周年興行・冬公演 いのうえ歌舞伎「髑髏城の七人 LAST STAND」は、11月14日(土)~12月25日(金)に都内・新橋演舞場ほか、長野、金沢、大阪で上演。








