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娘が受け取ったもの 【平井理央 コラムNEWS箸休め】

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 この夏、娘と2人で大阪・関西万博へ行ってきました。JR桜島駅からシャトルバスに乗って会場へ。2日間かけて〝未来〟と〝世界〟をのんびりめぐる旅でした。

 会場に入ると、「2040年の都市」「2050年の世界」といった文字があちこちに並んでいます。
 超音波で映像にふれる体験、海のゴミ問題に向き合うドーム、医療の最前線でのカテーテル手術シミュレーション・・・。

 未知の技術や課題を、遊びながら学べる空間に、まるで未来をひと足先に映しているみたいなまなざしを向ける娘を見て、こちらまで胸が高鳴りました。

 各国のパビリオンでは、その国の歴史を振り返りつつ、目指す未来の街づくりを大スクリーンで没入しながら、見ることができたりと、多くの学びがありました。一方で、ベルギーショップで真剣にチョコレートを選び、娘に呆(あき)れられたり、大きなクロネコのぬいぐるみとうまく自撮りができなくて笑い転げたり。そんな何げない場面も、全部がいとおしかったです。

 食事は、世界の料理も並ぶ中、娘は迷わず「うどん」をチョイス。初日はそば、2日目もやっぱりうどん。

 こちらとしては、せっかくなら未知の味も・・・とオススメしましたが、笑顔でうどんをすする姿を見て気づいたことがあります。

 娘が心地よいと思うものを選んでいるだけで、それで十分。旅も未来も、親の思い通りじゃなくていいんだな、と思えた瞬間でした。さまざまな意見のある関西万博ですが、大人の思惑とは違うところで、娘が受け取ったものは、きっとあったと思います。

 万博は体力勝負だと思っていたけれど、子連れなら1日にいくつかのパビリオンをまわるだけでも満足度は高かったです。

 もしかしたら、むしろそのくらいが、会話にも気持ちにも余白を残してくれて、ちょうどよかったのかもしれません。

 帰り道、オレンジ色に染まる空を見上げながら思いました。

 子どもの長い夏休みには、正直、心が折れそうになる日もある。

 それでも、この旅がくれたのは、未来に思いをはせる気持ちと、いまをいとおしむ視点。

 新幹線でも、ずっとおしゃべりを続け、眠らない娘の体力に驚きながらも、その元気さと好奇心が、明日への力になるんだな、と改めて思えた2日間でした。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 33からの転載】

平井理央(ひらい・りお) 1982年東京生まれ。2005年、慶應義塾大学法学部卒業後、フジテレビ入社。スポーツニュース番組「すぽると!」のキャスターを務め、オリンピックをはじめ国際大会の現地中継などに携わる。13年フリーに転身。ニュースキャスター、スポーツジャーナリスト、女優、ラジオパーソナリティー、司会者、エッセイスト、フォトグラファーとして活動中。