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横浜流星「僕も蔦重のような人間でありたい」“江戸のメディア王”役で大河ドラマに主演【「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

-物語の舞台となる江戸時代中期については、どんな魅力を感じましたか。

 自分が実際に生きたわけではないので、想像するしかありませんが、森下先生の作った蔦重が生きる世界としての江戸時代は、いい時代だと思います。不自由で理不尽なことも多いですが、現代のように情報が氾濫していない分、蔦重だけでなく、誰もが自分の意志を持って行動している。現代では、氾濫する情報に流され、自分を持てずにいる人が多い気がします。また、人との交流を大切にするのも当時の特徴で、今は携帯一つで誰とでも交流できますが、僕も蔦重のように人と直接会って話すことを大事にしなければと。そういう意味で、僕もあの時代を生きてみたいと思いました。

-人と会って話すという点では、第一回でも蔦重が老中・田沼意次(渡辺謙)に会いに行き、吉原の女郎たちの窮状を訴える場面が大きな見どころとなりました。

 あの行動力には驚かされました。現代に例えれば、市井の片隅で暮らす1人の国民が総理大臣に向かって意見を言うようなもの。毎回、蔦重の行動力には驚かされますし、なぜそういう行動をとれるのか探ってみると、やっぱり「誰かのために」なんですよね。そういう意味で、誰もが「こんなふうに生きられたら」と思うような人間なので、僕も1人の人間として、蔦重をリスペクトしています。

-渡辺謙さんとの共演はいかがですか。

 謙さんのたたずまいやお芝居から学ぶことが多く、現場でご一緒する時間は大切にしています。謙さんとは以前、映画でご一緒したとき、いろいろなお話をさせていただきました。「ちょうど流星と同じくらいの年齢の時、自分も大河の主演をやった。とにかく、真っすぐ全力でやればいい」と、力強いお言葉をいただいたので、それを信じて蔦重として生きています。

-蔦重には、女郎たちを救おうとする真っすぐな正義感がある一方で、幼なじみの花魁・花の井(小芝風花)の気持ちには気付かないもどかしさもあり、2人の関係も注目を集めそうですね。

 吉原で生きる男女には、恋愛関係になってはいけないというおきてがあるので、それを植え付けられているのだと思います。その鈍感さが、彼のいいところでもあるので、存分に鈍感な蔦重を演じています。お芝居については、小芝さんや監督とも相談しながら作っているので、皆さんぜひ、2人の関係にツッコミを入れながら楽しんでください(笑)。

-撮影を通して感じた作品の魅力を教えてください。

 作品と向き合って感じるのは、いい意味で大河ドラマらしくない“新しい大河ドラマ”になっているな、ということです。派手な合戦はありませんが、その代わり、商いの戦いを繰り広げる“ビジネスストーリー”としての見どころがあります。しかも、森下先生の描く江戸時代には陽気な人間が多く、喜劇のようで、展開も非常にスピーディー。とても面白いエンタメに仕上がっています。その分、大河ドラマに対して今まで「堅い」というイメージを持ち、身構えていた若い世代の方にも楽しんでいただけるのではないかと。そういう方々にこの作品を届けることも、僕の使命だと思っています。

-それでは最後に、これから1年にわたる物語に臨む意気込みをお聞かせください。

 1年間続く物語に出演できることは、とてもぜいたくで幸せなことです。僕は同じように“戦隊もの”を1年経験したとき、お芝居の楽しさを知り、この世界で生きていくことを決意しました。こうして10年経った今、再び同じような経験ができることに、運命を感じています。その中で、形に捉われず自由に生き、自分にしかできない皆さんに愛される蔦重を作っていけたらと思っています。

(取材・文/井上健一)

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