高性能アルミ窓で業界脱炭素化 リクシルが独シューコーと推進

パートナーシップ強化を発表した(右から)リクシルの瀬戸欣哉社長兼CEO、シューコーのアンドレアス・エンゲルハートCEO。左はリクシルの吉田聡執行役専務

 住宅設備機器・建材大手のLIXIL(リクシル、東京都品川区)と欧州各国の厳しい建築要件を満たすアルミサッシ、カーテンウォールなどを提供するドイツの企業Schueco(シューコー)は4月24日、東京都内で記者会見し、両社のパートナーシップを強化し、両社の技術や知見を融合し建築物のライフサイクル全体でのCO2排出量であるホールライフカーボン削減に貢献する「高性能アルミ窓」の提供などを通じて日本の建設業界の脱炭素化を加速していくことで合意した、と発表した。

 記者会見したリクシルの瀬戸欣哉社長兼CEOは「建設部門のCO2排出量は全体の37%も占めている。この現状を改善するため、両社の技術・知見を生かし、日本のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出実質ゼロ)実現に貢献していきたい」と述べた。

建設業界の脱炭素を推進するリクシルの瀬戸欣哉社長兼CEO

 同席したシューコーのアンドレアス・エンゲルハートCEOは「リクシルの循環型低炭素アルミ『PremiAL(プレミアル)』と、アルミサッシの断熱性能を高めた当社の最新技術を活用した高性能アルミ窓はCO2削減に大いに貢献できる製品だ」と述べ、日本市場での高性能アルミ窓の普及拡大に自信を示した。

断熱性能を高めた高性能アルミ窓の日本での普及に自信を見せたシューコーのアンドレアス・エンゲルハートCEO

脱炭素建築の未来を開くアルミ窓 高い断熱性能とともにリサイクルアルミを活用

 リクシルが提供する「PremiAL」について、瀬戸社長は「当社がサッシ用などに提供する循環型低炭素アルミは100%もしくは70%、アルミのスクラップから作っている。1kgのアルミを新しく一から作ると10kgのCO2を排出するが、リサイクルアルミから作るとCO2は0.3kgしか排出しないので、CO2を大幅に削減できる」と指摘。

 その上で「建設部門のCO2削減の取り組みでは、”ホールライフカーボン”の中でも、建設にかかる原材料調達から、加工、輸送、建設、改修、廃棄時に排出されるCO2である“エンボディドカーボン”はあまり注目されずにきたが、この部分のCO2排出削減の取り組みも、建物利用時のエネルギー使用によるCO2削減の努力とともに進めていかなければならない」と話した。

 アルミサッシの断熱性能向上に関しては、シューコーのエンゲルハートCEOが「欧州の厳しい断熱基準を満たすために年々進化させてきた。当社のアルミサッシの断熱性能は、木材や樹脂素材のサッシと同等の断熱水準を満たしている。シューコーの窓は、アルミを主構造としながら高断熱を実現するとともに、大開口やデザイン・リサイクル容易性などでアルミの良さを生かしている」と説明した。

 また欧州で多い既存建築物の改修(リノベーション)に際して、アルミやガラスなどの廃棄資材を100%近くリサイクルする窓サッシ交換工事の資源循環型工法を確立した事例を紹介し「これからの日本の最大の課題は古くなった既存建物のリノベーションだ。この分野でも、リクシルと当社の蓄積した知見、技術を活用すれば、リノベーションに伴うCO2排出を大きく削減できるだろう」と強調した。

パ―トナーシップ強化の重要ポイントを説明するリクシルの吉田聡執行役専務

建築物ホールライフカーボン削減 日本の気象・地域特性にも配慮

 リクシルの建材部門を統括する吉田聡執行役専務は今回のパ―トナーシップ強化の重要ポイントは、脱炭素に貢献する循環型低炭素アルミ「PremiAL」を提供するだけでなく、地震や台風など日本特有の気象条件や地域特性に適合したサッシ窓を成立させる諸条件(耐圧性、気密性、水密性、遮音性、断熱断性、耐震性)に熟知したリクシルの知見と、欧州の厳しい「断熱基準」を満たすだけでなく、分離解体時のリサイクル容易性にも配慮した高性能アルミ窓設計思想を構築して世界の脱炭素をリードするシューコーの先進性が融合した点にあると主張。

 また日本市場でのシューコー製品の拡大戦略にも言及。シューコーの高性能アルミ窓は、大開口の窓や高い耐風圧が必要な高層ビルに対応する製品も豊富なので、現在は断熱性能の要求レベルも限定されているビルに向けても、今後高まるニーズを見越して積極的に売り込んでいきたいとした。

 そうすることで、建設・改修需要が高まっているビル用建材に占める一定の熱貫流率(窓や壁などにどれだけ熱が伝わりやすいかを表す数値)の基準を満たす、リクシルにおける高断熱製品の比率を大幅に高め、2025年の同比率9%を40年は50%することを目指し、脱炭素に貢献したいとした。

 さらに断熱性のみを重視するために小型化が進む日本の「戸建て住宅用窓」の常識を変えたいと指摘。高い断熱性を維持しながら、屋外から明るい太陽光や美しい景色を取り入れることができる、大きな開口部のシューコー製高性能アルミ窓の良さを広くアピールして、戸建て住宅窓の小型化の潮流を変える決意を示した。

 リクシルとシューコーは2021年8月、「シューコー・ジャパン」(東京都港区)を合弁会社化し、共同ビジネスを開始。シューコーブランド製品の優れた性能・品質を担保しながら、日本特有のニーズや課題、規格に対応するようにLIXILが商品開発を支援し、シューコー・ジャパンの国内におけるサプライチェーンや事業基盤を強化     してきたが、今回のパートナーシップ強化を通じて、建築物の用途を問わず、高断熱製品の提供をさらに拡大するなど、関係を深めていく。