カルチャー

明日香村で古代食づくり楽しむ 万葉歌に詠まれたメニューから

 ユネスコ世界遺産に登録された「飛鳥・藤原の宮都」がある奈良県明日香村の施設で8月5日、都が栄えた当時、万葉歌に詠まれた古代の食事を再現して味わうイベントが開かれた。

参加者は、吉原さん(左端)のアドバイスを聞きながら、古代食づくりを楽しんだ

 イベントは、奈良県立万葉文化館の開館25周年イベントの一環。家族連れら約20人が、元同館研究員の飲食店オーナー、吉原啓さんを講師に、万葉歌に出てくる食材などを使い、古代に近い調理法でつくった6品を味わった。

 そのうちのひとつ、鯛の膾(なます)は「醤(ひしお)酢に蒜(ひる)搗き合てて鯛願ふ われにな見えそ水葱の羹(あつもの)」にちなんだ一品。醤(ひしお)は醤油や味噌の原型とされる調味料で、歌の詠み手は、高級魚の鯛を醤と酢、にんにくをつぶしたものを付けて食べたいのに、目の前にあるのは野草の汁だ、と残念な気持ちをユニークに表している。

 調理では、地元の醤油生産者団体が当時の資料をもとに再現した醤を活用。出来上がった膾は、宴会の様子を詠んだ別の歌にちなみ、蓮の葉を敷く宴会の盛り付けで味わった。吉原さんは、「土の中から発見された動物の骨や歴史書の記録から読み取れない、(人の)食べ物に対する気持ちが分かるのは、万葉歌ならでは」と話した。

 参加者は、楡の木の皮の粉末を使ったカブの漬物づくりにも挑戦。現在、料理に活用されることはない楡だが、最近の調査でグルタミン酸が豊富に含まれていることが分かっており、古代の食事ではうまみ調味料だった可能性もあるという。

蓮の葉に敷いた鯛の膾、カブの漬物など、参加者が調理した古代の食事(奈良県立万葉文化館提供)

 イベントではこのほか、牛乳と蜂蜜でつくる「蘇蜜煎」、カツオの煮汁、蟹の塩辛などを調理・試食。参加者は初めて味わう食材の感触や香りをぞんぶんに楽しみながら、古代食を堪能した。

 参加者は、調理・試食に先立ち、万葉文化館内にある古代の市場の様子を人形や模型で再現した施設で、当時の食べ物の種類や流通についても知識を深めた。

 万葉文化館では9月、初代館長の中西進さんらが講演するリレー講座も行われる。