あなたはHIVやエイズ(AIDS)と聞いて何を感じるだろうか。「不治の病」「恐怖の記憶」「過ぎ去った脅威」「自分には関係ない病気」「無関心」・・・。「よく知りません。病気のことだとは知っていますが」という若い人もいるかもしれない。
HIVとは「ヒト免疫不全ウイルス」のことで、エイズはHIV感染によって免疫力が低下し、特定の病気を発症した状態のこと。1981年に最初のエイズ症例が報告された当初、その原因や感染経路、治療法が不明で、急速に広がる未知の病気として社会に大きな衝撃を与えた。ロックバンド“クイーン”のフレディ・マーキューリー、芸術家キース・ヘリングなど著名人が亡くなったこともあり、1980~90年代、エイズは恐怖の病として世界中で認識された。
当時、HIV感染は有効な治療法が存在せず、ほぼ確実に死に至る病であり、当初は特定の集団(同性愛者、麻薬使用者など)を中心に広がったため、感染者に対する社会的な偏見や差別は深刻だった。感染経路についても誤解が多く、日常生活での接触を必要以上に恐れる人も少なくなかった。日本国内では薬害エイズ問題も発生し、血液製剤による感染が社会問題化した。
1990年代後半に入り、ようやく抗HIV薬が開発され治療法が進歩したことで、HIV感染は「コントロール可能な慢性疾患」へと認識が変化していったが、「死の病」というイメージが薄れるとともに人々の関心も低下していった。
そして現在、2025年。HIV/AIDSに関する誤解や偏見は解消したのだろうか? 正確な情報は社会に浸透し、理解は進んでいるのだろうか?
▼状況は変わっているのに日本にはさまざまな課題が
厚生労働省の発表によると、2024年のHIV感染者年間新規報告数は662件で、7年ぶりに増加した2023年(669件)とほぼ横ばい。また、エイズ患者年間新規報告数は332件となり、新規報告数全体に占めるエイズ患者報告数の割合は33.4%と過去20年間で最も高い割合となっている※1。国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、HIV流行終結にむけて目指す目標「95-95-95」(診断率95%、治療率95%、ウイルス抑制率95%)を掲げている。だが、国内の診断率は90%に届いておらず※2、発症してからHIV感染に気付く「いきなりエイズ」も多いとされている。
※1. 厚生労働省エイズ動向委員会「令和 6(2024)年エイズ発生動向」
※2. 国立健康機器管理研究機構「早期診断率に基づく日本国内HIV感染者数の推定(2020年4月27日)」
2025年10月1日、バイオ医薬品企業のギリアド・サイエンシズ株式会社(以下「ギリアド」、本社:東京)は、HIV陽性者支援団体やコミュニティとギリアドによる、HIV流行終結を目指すコンソーシアム「HIV/AIDS GAP6(以下GAP6)」の特設サイトを公開した。
GAP6は2021年の世界エイズデーに発足し、7団体(ぷれいす東京、akta、ZEL community center、はばたき福祉事業団、魅惑的倶楽部、金沢レインボープライド、ギリアド・サイエンシズ)が参加する共創型プロジェクト。HIVに関する誤解や偏見の解消、適切な検査・予防・治療の推進を通じてHIV流行終結を目指している。

そう、医療の進歩により状況は変わっているにもかかわらず、日本ではHIV/AIDS に関する偏った情報や過去のイメージはいまだに根強く残り、誤解や偏見は現在も解消されたとは言い難いのだ。さらには地域差による情報格差や当事者間の認識のズレ、そもそもHIV/AIDSを知らない若い世代の増加など、さまざまな課題も存在する。
そこで、特設サイトではHIV/AIDS にまつわる理解のギャップを6つに整理し、それらのギャップを埋めるべく解説している。6つの“理解のギャップ”とは、次のようなものだ。
① 「HIVは不治の病」は誤解。医療の進歩で不治の病ではない
内閣府の調査によると国民の半数が「エイズは死に至る病」と誤解しているが、医療技術の進歩もあり、HIV感染者の平均寿命は、早期発見と早期治療で、一般の人とほぼ変わらない。
② 「HIVは日常生活で簡単に感染するウイルス」は誤解。実は感染力は弱い
HIVは実は他のウイルスに比べ感染力が弱く、せきやくしゃみ、握手、回し飲み・食べ、お風呂やプールなど、日常生活で感染する可能性はほとんどない。HIV感染の原因の8割が性的接触によるため、それに伴う予防行動は重要。
③ 「HIVは男性同性愛者が感染するもの」は誤解。誰にでも感染の可能性あり
HIVの感染経路は、同性間の性的接触が65.9%ではあるが、異性間も14.0%。HIVは男性同性愛者だけではなく、誰にでも感染する可能性があるため、適切な予防と検査が重要。
④ 「HIV検査は身元が特定され、偏見や差別を受ける可能性がある」は誤解。誰でも匿名で受けることができる
HIVの検査は全国の保健所や自治体で匿名・無料で受けることができる。また、有料にはなるが、希望すれば医療機関でも受けることができ、自宅で使用できるHIV郵送検査キットをオンライン等で入手することも可能。いずれもプライバシーが保護されている。
⑤ 「HIVは性行為により高い確率で感染する」は誤解。適切な行動で予防可能
感染経路の8割は性的接触ではあるが、適切なコンドーム使用により、ほぼ100%感染予防が可能。
⑥ 「HIVに感染すると一生性行為はできない」は誤解。適切な治療を継続すればパートナーに感染させない
HIV感染者が適切な治療を受けてウイルス量が検出限界値未満(Undetectable)に抑えられた場合、性行為によって他者にHIVが感染することはない(Untransmittable)ことが科学的に裏付けられている。「U=U(効果的な治療を続けていれば感染しない)」が世界的な共通認識。

▼HIVの流行終結に向けて
GAP6はこれまで3回にわたりHIV流行終結に向けた要望書を政府に提出。2025年9月の最新版では、HIV郵送検査の拡充、検査・相談体制での地域差解消、自己検査キットの早期導入、PrEP(HIV暴露前予防内服)薬の保険適用・公的助成の実施や環境整備、HIV流行終結のための目標発表と具体的な取り組み、などを要望している。
国連合同エイズ計画(UNAIDS)が掲げる目標は、2030年までのHIV流行終結。ギリアドは、その目標に向けて、GAP6およびHIV陽性者支援団体やコミュニティとの協働を通じて、検査機会の拡充、PrEPを含む予防策の啓発とアクセス向上、治療環境の整備、そして偏見のない社会の実現に向けてさらなる取り組みを進めていくという。
だが、それらの実現のためには一人でも多くの人が“理解のギャップ”を埋めることが必要だ。だから、あなたもぜひ、GAP6の特設サイトを訪れてみてほしい。周囲にもサイトの存在を伝えてほしい。そして未来のとある日、HIV流行終結宣言のニュースを耳にして、「よしっ!」とガッツポーズしてほしい。









