カルチャー

【輪島だからこそ、できること】(下) 復興の先の未来を目指すモノづくり

 最終回で紹介するのは、輪島塗の担い手たち。店舗も家も壊れた状態から立ち上がった今、見据えているのは、輪島塗の可能性をさらに広げること。挑戦を続けることで拓かれる、復興の先の未来だ。

被災したスタジオ、2年半ぶりに復活 <輪島キリモト>

 江戸時代後期から漆器業や木地業を営む輪島キリモトでは、震災で大きな被害を受けた 「漆のスタジオ」が、およそ2年半ぶりに復活した。“漆のミュージアム”をテーマにデザインされた空間には、来訪者が漆について学べるパネル展示があるほか、デジタル機器を生かしたライブコマースで、遠方の顧客が商品をモニターの画面越しに見て選ぶこともできる。

2年半ぶりに復活した輪島キリモトの「漆のスタジオ」

 「今の暮らしを読み解いて、本物の漆が何を施せば、使う人が気持ちよくなるのか、ほっとするのか、便利になるのか、を常に考えてきました」。輪島塗の新しい表現を追求してきた7代目・桐本泰一さんの信念は、一貫して揺らぐことがない。

「モノトーン」シリーズとしてよみがえった輪島塗の器。Rescue & Reborn プロジェクトの売り上げの一部は、復興に力を注ぐ団体やボランティアの応援金に充てられている

 家屋の倒壊などで居場所を失った膨大な数の輪島塗を救い、よみがえらせる「輪島塗 Rescue & Reborn プロジェクト」では今年、新たに「モノトーン」シリーズを世に送り出す。明治時代などに作られた黒御膳の器を、黒だけでなく、アイボリーの白漆とグレーの色漆を加えた3色に塗り替えたもので、深みある色合い・手触りと、はっとするような新しい世界観が同居する。「モダンな使い方や現代の食卓にも、しっくりくるのではないか」。時代を超え、違う形で息を吹き返した輪島塗は、現代の人々の心をわくわくさせている。

▽挑戦する塗師

 果敢に漆の可能性を広げようとする桐本さんの思いは、受け継がれている。独創的な塗を施した花器、食器、ギターなどのほか、「今はシャーペンを実験的にやってます」と話すのは、輪島キリモトの塗師、小路貴穂さん。文具好きな子どもたちにブームの木軸シャープペンシルに漆がうけるのではないか、と着想した。赤・青・黄などの色漆を塗って研ぎ出し、地元・富来の海岸で採れるきれいなピンク色の桜貝で凹凸を出していく。

避難施設のボランティアにも参加しながら数々の挑戦を続ける輪島キリモトの塗師、小路貴穂さん

 小路さんは震災後、避難施設のボランティアにも参加しながら数々の挑戦を続けてきた。そのひとつがトヨタの高級車センチュリーの内装パーツ。ダッシュボードのフレームに練りつけられた天然木に、漆、和紙、輪島地の粉を塗り込んだ。創作意欲の根底には、どんな時も「自分が本当に欲しいと思えるものを作りたい」という強い気持ちがある。