7月の初旬ともなれば田植えから40~50日が過ぎ、田んぼから水を抜いて土にひびが少し入るくらいまで乾かす「中干し」を行う時期となる。そろそろ梅雨も明けそうで、土中に酸素を供給するとともにガスを抜き、稲の成長を適度に抑制する効果もあるこの作業にうってつけの天気になることを期待している。
今年は田植えに先立って行った畔塗り(畔に土を寄せて塗り固めること)がうまくいき、田んぼの水持ちがとてもいい。昨年までは水漏れがひどく、2~3日おきに水を入れなければならなかった。今年は田植え後に水を入れたのは3回ほどもあっただろうか。その記憶があいまいになるくらい、水のことでの悩みはない。
草の発生を抑えるために敷いた紙製のマルチも効果を発揮していて、除草剤を使っていないのに草はほとんど生えていない。ロールに巻かれたマルチを敷きながら指で穴を開けて苗を植え付ける作業は重労働だったが、苦労した甲斐があった。
ワイヤーメッシュ(金網)を張り巡らし、その上にメッシュとの高さの合計が2メートルを超えるくらいまで網を張り上げたシカ対策もうまくいき、今のところ連中の侵入を完全に阻んでいる。
昨年亡くなった隣家の長老とは、田んぼや畑で行き会うたびにいろいろな話をした。7年前に初めて紙製のマルチを敷いてコメ作りをした時には、草を抑える効果に長老はいたく感心した体で「おい、今年は大きな口で食えるな」(コメをたくさん食べられるな)と声をかけてもらった。
肥料が効き過ぎて稲の色が濃くなっていることを知らせに来てくれた時の「お宅の稲、ほうれんそうのおひたしみたいな色になってるぞ」という言い回しも忘れられない。
今年の田んぼは前記のようにこれまでうまくいっているのだが、実は元肥が少し多かったようで、稲の色がまわりの田んぼよりも濃いめになっている。ほうれんそうのおひたしほどではないのだが、いつもウイットの効いた独特の表現で楽しませてくれた長老が見たら、どんなふうに言っただろうか。
肥料の効き過ぎには、中干しの成長抑制効果で対応するのがいいのだと隣人が教えてくれた。畔塗りのやり方を教えてくれたのもこの隣人で、私が我流で塗ったものを「これじゃあ効果がないぞ」と指摘し、自ら鍬を手にして見本を見せてくれた。
集落で楽しく手ごたえのある暮らしができているのは隣人たちの存在あればこそ。ありがたいなと、いつも思っている。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.28からの転載】
赤堀楠雄(あかほり・くすお)林材ライター。1963年生まれ、長野県在住。林材新聞社(東京)勤務を経て99年に独立。森林・林業・木材・木造住宅などに関する取材、執筆を行う。著書に「林ヲ営ム〜木の価値を高める技術と経営〜」(農文協)など。







