美しい海と白い砂浜 漆黒の夜空には美しい星空が
透明度の高い海と美しい海岸線に広がる白い砂浜。鹿児島県のヨロン島は、自然豊かな風景で知られるリゾート地として、多くの観光客や芸術家を魅了してきました。
アクセスも容易で、飛行機は那覇や鹿児島からは直行便が飛んでいます。時間に余裕のある方には、旅情あふれる那覇と鹿児島を結ぶフェリーでの船旅もオススメです。
ヨロン島は、2021年、2023年の2度にわたって持続可能な観光地の国際的な認証団体「グリーン・デスティネーションズ」から「TOP100」に選出されました。
2021年は島の「美しい海」を守るために島民が自発的に始めた海岸清掃や、サンゴを保全するための取組。さらに活動の継続に繋がる海洋教育などが評価されました。
2023年に評価されたのは「星空ツーリズム」です。星空ガイドの育成や星空観賞に適した環境を守るための光害対策など、島を愛する人々が美しい星空環境を守っていることが表彰につながりました。
都会では光害が進む中、星空は見えにくくなってきましたが、ヨロン島では限りなく黒に近いブルーの夜空に、美しい星が光り輝いています。
もっと美しい星空のためにできること 専門機関との連携
星空の美しさを引き立てるために、与論町は和歌山大学観光学部との共同プロジェクトを立ち上げました。「①光害の影響を抑えて美しい星空を守る」「②島に伝わる天文文化を継承する」「③ガイド活動を通じてあらたな経済価値の創出」を目指しています。
プロジェクトを牽引したのは、アストロツーリズムの専門家でもある和歌山大学の尾久土正己副学長。同大観光学部の学生も積極的にフィールドワークを重ねました。
まず、与論町は3年前から光害を抑止するため、光源を下に向けて空に光が漏れない街灯の整備を開始しました。色温度も3000ケルビン以下に抑えた優しい光です。現在、島のモデル地区を中心に約50基が整備されました。現在も自動計測器を用いて島内の光害をモニタリングしています。
美しい星空を守る!リゾート施設も照明を大規模リニューアル
ヨロン島を代表するリゾート施設「プリシアリゾートヨロン」も、島の美しい星空を守ろうと施設内の屋外照明を大規模改修しました。利用者の利便性と照明器具のデザインを両立させ、光害を抑さえることに成功しました。
効果は一目瞭然。モニタリングの画像から効果が明確になりました。
データに基づいた的確なアドバイスにより「市街地のごく一部を除き、島内どこからでも美しい星空を見ることができるヨロン島」に貢献できた事を誇りに思います」と話すのは、プリシアリゾートの藤原健二運営統括部長です。
「宿泊されたお部屋の窓から星座や天の川を眺め、オープンテラスでの食事や夜のビーチでの語らいが思い出の1ページになっていただけたら」。
島に伝わる天文文化を継承し、星空ツアーに取り入れる
星空から紡がれた数々の物語や、島に伝わる天文文化を継承するための取組も行われています。和歌山大学大学院の澤田幸輝さんが中心となり、島民にヒアリング調査を行なっています。
島の漁業や農業、島唄など生活に星や月が密接にかかわってきた実態が明らかになってきました。
和歌山大大学院の澤田幸輝さんは「島には古くから星に関する伝承や言い伝えがありますが、これらを調査してまとめ、観光客により深い理解を提供することで、島の魅力をさらに高めようと考えています。星空が人々の生活や信仰、文化に与えた影響を探求することで、来訪者は星空だけでなく、島の豊かな歴史にも触れることができます」と取り組みの主旨を説明してくれました。
星空案内人「星のソムリエ®」の出番です!
これらの総合的な取り組みにより、ヨロン島の星空は新たな観光資源として脚光を浴び、海と星空が絶妙に調和したヨロン島の風景が観光客の間で高く評価されるようになっています。SNSでの投稿も盛んになっています。
ガイドを担っているのは星のソムリエ®と呼ばれる星空案内人のみなさんです。
「ヨロン島の星空は、ただ美しいだけでなく、地域の歴史や文化、そして未来への取り組みを体現する象徴でもあります。魅力を最大限に引き出すために、我々ガイドの継続的な努力が欠かせません。その結果として訪れる人々に、星空の美しさとヨロン島の魅力を深く味わっていただけると信じています」と橋本康宏さん(上記写真右)は力を込めます。
最新の観測機器を自在に操る本園秀幸さんは「電子望遠鏡やタブレットを駆使して肉眼では見る事の出来ない宇宙の姿を見ていただいています。ヨロン島の星空は、リラックスや癒しを求める人々にも最適。静かな夜の島で広がる星空の下で、日常の喧騒から離れ、心身ともにリフレッシュ。星空を眺めながら海の音を聞き、潮風を感じる贅沢な時間は、訪れる人々にとってかけがえのない思い出になるでしょう」と笑顔で話し、機材を駆使して撮影した天体写真を見せてくれました。
ヨロン島をモチーフにした楽曲を数多くリリースしている、ミュージシャンの川畑アキラさんもガイドとして活躍しています。
「ヨロン島では、観光協会と地元の星空愛好家が協力して、ガイドのレベル向上に取り組んでいます。星空の案内人は、専門知識や観測技術を向上させるための研修やワークショップに積極的に参加しています。観光客のみなさんに対してより深い情報を提供することで、もっともっと島を楽しんで欲しいですね。昨年発表した「走れ!ヨロン号」でも島の観光スポットである「ヨロン駅」から見える星空を歌詞に盛り込みました」
島民の自主的な取り組みと行政・専門機関が一体となったヨロン島の星空ツアーは、訪れた人々にかけがえのない体験を提供するだけでなく、地域経済にも貢献する力強い一歩を踏み出しました。
美しいヨロン島の星空を通じて、ヨロン島の魅力がより多くの人々に知られ、訪れる人々の満足度が更に高まることが期待されます。
あなたは見上げた夜空に何を祈り、願いますか?現在と過去、未来をつなぐ無数の星。地球は回り、夜が明けて島に昇った朝日が透明なヨロン島の海を空の青に染め上げます。
次の旅は、そう、ヨロン島。何度でも行きたくなるヨロン島。
美しい海岸線が織りなす白い砂浜。光り輝く透明度の高い海にはサンゴが輝きます。
沈む夕陽の後に現われるのは満天の星。波の音とヨロンの笑顔があなたを待っています。