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「光る君へ」第十三回「進むべき道」離れても、同じ思いを持つまひろと道長【大河ドラマコラム】

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 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。3月31日に放送された第十三回「進むべき道」では、互いの思いのすれ違いから、主人公まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)が決別した前回から4年が経過。それぞれの道を歩む2人の姿が描かれた。

(C)NHK

 父・為時(岸谷五朗)が官職を失ったことで、相変わらず苦しい生活を送るまひろは、街で文字が読めないばかりにだまされ、子どもが売られていく庶民の姿を目にする。これがきっかけとなり、「1人でも2人でも救えたら」と文字を教え始め、「よりよき世の中を求め、あなたは上から政を改めて下さい。私は民を1人でも、2人でも救います」と道長へ思いをはせる。

 その道長は、甥の一条天皇が即位し、父・兼家(段田安則)が摂政になったことでさらに出世。2人の兄たちと共に、政策を決定する会議にも参加するようになっていた。しかもその場で、国司の横暴を訴える民の上訴を却下しようとする兄・道隆(井浦新)に、「遠方より都に参り、上訴する民の声には切実な思いがあるに違いありません」と反論し、「詳しく審議すべき」と訴える。さらに「民なくば、われわれの暮らしもありません」と続ける。

(C)NHK

 離れていても、共に同じく民を思って行動する2人。その根本にあるのが、直秀(毎熊克哉)たちの非業の死であることは言うまでもないだろう。庶民から見れば高貴な「貴族」という身分でありながら、民を思って行動できるのは、2人が共に街に出て、直秀のような庶民と関わってきた経験があるからだ。前述の道隆や「訴状を読むのも面倒でございますな」と上訴を一蹴しようとする他の貴族、あるいは「1人、2人に教えても、今日のような不幸は救えませんよ」とまひろに告げるさわ(野村麻純)などとの違いはそこにある。

 まるで、現代の政治家と日本国民の距離感を思わせる描写だが、改めて、2人にとって直秀との出会いがいかに大きいものだったのか、実感させられた。そしてこの4年、顔を合わせることを避けながらも、同じ方向を目指してきた2人は、ついに再会を果たす。それは、まひろが働き口を探していることを聞きつけた道長の妻・源倫子(黒木華)が、屋敷に招いたことがきっかけだが、それまでの流れを見ていると、運命的とも思えてくる。

 会わずとも、同じ思いの下に行動する2人は、もはや「同志」と言っても過言ではない気がするが、その前に「恋心」が完全に消えたのかどうかが気になるところ。この回のラストで再会した2人がどのような言葉を交わし、それが互いにどんな影響を及ぼし、それぞれの行動にどうつながるのか。また、この回で実感したのは、貴族であるまひろ(人買いに足蹴にされるなど、貴族らしからぬ扱いを受けていたが)と道長の行動や決断に、庶民の存在が深くかかわっていくのかもしれないということだ。そしてそれは、単なる恋愛物語とは異なる深みを、作品にもたらすに違いない。その点も踏まえつつ、次回に注目したい。

(井上健一)

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