-確かにそうですね。
最初の「新選組!」(04)のときは、池田屋事件など、有名な出来事は基本的に全部描いていたと思うんです。次の「真田丸」(16)では、有名な出来事を描きつつも、関ケ原の合戦を飛ばしたかと思えば、「そこを描くんだ!?」という驚きがありました。今回の「鎌倉殿」では、そういう部分がより斬新になり、磨きがかかっていたと思います。「なぜこれが起きたのか?」ということを、内側からひも解いていくとでも言えばいいのかな。そこに、三谷さんらしいちょっとしたおとぼけやコメディー的な要素を織り交ぜて。本当に素晴らしかったです。
-ものすごくシビアな場面に笑いを盛り込むのも、本作の特徴です。
恐らく、三谷さんにとっては、ああいうシーンこそ「もってこい」の瞬間なんだと思います。普通のドラマだったら、ちょっとシリアスなところからよりシリアスに持って行くのに、三谷さんは「え?」という感じでいったん外して、緊張を緩める。そうかと思えば、「そんなところで?」みたいなときに緊張させ続けたり…。その辺がすごいです。
-おっしゃる通りです。
八重(新垣結衣)さんが川で亡くなったときも、僕が上半身裸になったんですけど、「これ僕、脱ぐ必要あります?」と聞いたんです。川に入るだけなら上はぬれないんだから、どちらかといえば、はかまを脱ぐか、まくり上げた方がいい。そうしたら、「重たくなり過ぎるシーンなので、義村の裸体で、見ている人の気をちょっとそらしたいんだ」って。「そこまで計算しているのか」と驚きました。
-確かに、それは驚きですね。そんな三谷さんが今回、どんな最終回を書いたのかが気になるところです。
僕も「どんなふうに終わるんだろう?」と思っていたんですけど、最終回で義村と義時の関係について言えるのは、非常に面白い形で幕を閉じるということです。2人の関係性がきちんと見えて、お互いふに落ちるようなすごく爽快ですてきなシーンになっています。三谷さんらしいテイストもあり、難易度の高いシーンだと思ったので、演じるに当たっては、普段あまりやらないんですけど、「この辺でこのぐらいのトーンでせりふを言って、ここでもう一個上げて」みたいな感じで、事前に演技を組み立てて臨みました。だから、僕自身も放送が楽しみです。
(取材・文/井上健一)