歴史上の人物や宗教、書物、暗号など、時折フィクションとノンフィクションの境目が分からないほどち密なプロットで読み手を幻惑するウンベルト・エーコの作品。映画化もされてよく知られている『薔薇の名前[完全版]』(東京創元社、予定価格は税別で上巻3000円、下巻3200円)が、単行本で12月25日(木)ごろに発売される。世界中で異例の大ベストセラーとなったこの作品の、初回出荷分は特別カラーの箔(はく)押しカバー。電子書籍の同時発売も決まっている。
『薔薇の名前』(1980)はエーコの初めての小説だが、刊行されるやいなやイタリア読書界の話題をさらい、あっという間にベストセラーとなり、世界各国で訳出された。1986年にはジャン=ジャック・アノー監督、ショーン・コネリー主演(時代考証にジャック・ル・ゴフという著名な歴史学者も参加)で映画化され、1987年に日本でも公開された。
中世、異端、暗号、写本、アリストテレース、博物誌、記号学、「ヨハネの黙示録」と、あらゆる読書の楽しみがあふれる7日間の物語。今回の完全版には、エーコ自身が下書きした文書館の図面、ホルヘ・ダ・ブルゴスなど個性的な修道士たちのスケッチのほか、1980年の初版刊行後しばらくして刊行されたエーコ自身による『「薔薇の名前」覚書』を収録。「二〇一二年版への付記」にはエーコ自身の歴史的事実の誤認を認めた記述もある。エーコファンは、またもやこの入り組んだプロットと知の迷宮に浸る時間がやってくる。紙書籍版、電子書籍版ともに、現在予約を受け付けている。










