ヤマハ社員の多彩趣味に驚き 佃中で余暇を考える公開授業

自身の趣味を生徒に語るヤマハ社員の田中克さん(左)

 人生を楽しくする“余暇”の大切さを中学生に考えてもらう授業が10月31日、東京都中央区の佃中学校で開かれた。1年生約140人が、中高生向けのキャリア教育サイト「人生を楽しむための余暇図鑑」を共同開発した静岡大(静岡市)とヤマハ(浜松市)の担当者の話を聞くなどして、人生を彩る余暇の素晴らしさを学んだ。

 報道陣に公開された午後の授業には1年生18人が参加。静岡大教育学部学術研究員の小田三成さんの指導で、各自が自分の好きなこと、その理由などを紙(ワークシート)に書き出し、4~5人のグループに分かれて、「歌をうたうこと、ワクワクするから」「動物園に行くこと、かわいいから」など、それぞれの「好き」を発表し合った。

 小田さんは「これまでのキャリア教育は仕事のことに偏りすぎていました。“キャリア”という言葉は仕事だけでなく、仕事以外の人生も含みます。今日はみなさんの“好き”が広がる機会になったらうれしいです」と話した。

生徒に余暇の大切さを伝えた静岡大教育学部学術研究員の小田三成さん(黒板前)=東京都中央区の佃中学校

 さらに生徒はサイト「余暇図鑑」に掲載されているヤマハの社員約100人(20~60代男女)の余暇の過ごし方の実例も数多く閲覧。ヤマハ社員が楽しんでいるジャマイカの音楽など、初めて知った趣味や、興味を持った余暇の過ごし方をいくつか紹介し合った。

余暇の過ごし方を閲覧する生徒

 自身の余暇で楽しむ趣味が「余暇図鑑」に掲載されているヤマハ社員の田中克(まさる)さんはこの日、「古いもの探して、それを時々買う」という自身の好きな余暇の過ごし方を語り、生徒にその魅力を伝えた。田中さんは「ネットオークションやリサイクル店などで古いものを探すのが好き。また山の中に入って、私にとっての“お宝”を探すこともある」と述べた。

 また街歩きで見つけた店の看板やのぼりなどの味わい深い「文字」を写真に撮って同好の仲間と一緒に楽しむ、もう一つ余暇の過ごし方も紹介した。

 田中さんの話を興味深く聞いていた生徒の一人は「こういう楽しみ方もあるんだ」と感想を述べ、一人一人異なる人生の楽しみ方の奥深さ、幅広さを実感していた。

ヤマハ社員約100人の人生の楽しみ方が紹介されている「余暇図鑑」

 「余暇図鑑」をヤマハと開発した静岡大教育学部の塩田真吾准教授は「人工知能やロボットの活用が広がる今後は余暇の時間が増えると予想され、これまでの仕事のことだけを考えるようなキャリア教育のままでいいのかという問題意識があった。また地元静岡県内の高校生454人を対象に実施した余暇調査では高校生の余暇の大半は、スマホで完結する動画鑑賞やSNS(ラインやインスタグラムなど)、スマホゲームで占められており、このような過度のスマホ頼りの余暇の在り方を変えたかった」と多彩な余暇の過ごし方を伝える「余暇図鑑」開発の狙いを説明した。

 授業で余暇を大切にすることを学んだ男子生徒の1人は「余暇を増やして人生を豊かにしていけるように自分でも工夫して余暇や日々の過ごし方を考えていきたい」と話した。女子生徒の1人は「授業では友だちの余暇の過ごし方を聞いて、こういう過ごし方もあるんだと思ってとても興味深かった」と述べた。

 今回の余暇を考える授業について、佃中の岸順一教諭は「2年生時の職業体験などキャリア教育には力を入れているが、余暇という視点はこれまでなく、就きたい仕事だけにとどまらない自分探しの一つとして、生徒にとって良い機会になったと思う。教材の「余暇図鑑」も子どもたちがまったく知らなかった趣味や、ヤマハ社員さんの魅力的な人間性がうかがわれるような面白い趣味がたくさん掲載されており、子どもたちがとても興味深く見ることができる内容になっている」と話した。

 「余暇図鑑」は今春完成してサイトに公開(「余暇図鑑」で検索)。無償で活用でき、いくつかの中学校の授業などで使われているという。「余暇図鑑」を使った公開授業は3月、静岡市内の中学校で初めて行われた。佃中で2校目となる。