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大スクリーンに恐竜躍動、ミイラ化石も初公開 福井・恐竜博物館がリニューアル

ティラノサウルスのロボット(左)とサウロロフスの骨格

 「世界三大恐竜博物館」の一つとされる福井県立恐竜博物館(福井県勝山市)のリニューアルが完成し、7月14日に営業を再開した。目玉は草食恐竜ブラキロフォサウルスのミイラ化した実物化石の展示で、日本初公開。増築された新館では、大型3面スクリーンにCGの恐竜が躍動し、模擬化石のクリーニングや恐竜の頭骨模型の組み立てにも挑める。2024年春の北陸新幹線福井・敦賀延伸を控え「入館者の目標は年間100万人。恐竜博物館をきっかけに、福井を知って楽しんでほしい」(辻俊之副館長)としている。

リニューアルした福井県立恐竜博物館。左奥が本館、右のドームが増築された新館

 恐竜博物館はJR福井駅から東へ約30キロの山あいに位置する。付近で出土した恐竜や魚類、植物などの化石を含む約4万1000点の資料を所蔵し、カナダのロイヤル・ティレル古生物学博物館、中国の自貢恐竜博物館と並ぶ三大恐竜博物館の一つとされる。2000年7月14日に開館。22年12月から休業し93億9000万円をかけてリニューアルを進めていた。オープンを前にした内覧会で、辻さんに見どころを案内してもらった。

 ▽大迫力の動く恐竜ロボ

 

歯の見え方が小さくなったティラノサウルスのロボット

 本館に入るとそこは3階。長さ33メートルのエスカレーターで地下1階に下り、トンネルのような通路を抜けた先の吹き抜けの常設展示室で、肉食恐竜ティラノサウルスのロボットが出迎えてくれた。辻さんによると「最新の研究結果を基に、歯の見え方を小さくしてある」というが、威嚇するように首を振りながらほえる姿は迫力満点。ロボットと分かっていても、後ずさりしそうになる。

ティラノサウルス(中央)と、タルボサウルス(左)、サウロロフス(右)、ブラキオサウルス(左奥)

 ティラノサウルスの両脇には、草食恐竜のサウロロフスと、それを狙う肉食恐竜タルボサウルスの全身骨格化石の複製。首と尾が長く史上最大の恐竜とされる草食のブラキオサウルスは、来館者が真下から見上げられるよう、設置に工夫がしてある。長径84メートル、高さ35メートルの展示室に設置された全身骨格は、リニューアル前から6体増え50体となった。このうち10体は実物の化石が使われている。

 ▽皮膚の痕跡、くっきりと

骨の表面に皮膚の痕跡が見えるブラキロフォサウルスのミイラ化石

 ミイラ化石が日本初公開となったブラキロフォサウルスは、約7700万年前の北米に生息していた。この化石は「レオナルド」という愛称で、表面に正六角形を並べた蜂の巣のように残っているのが皮膚の痕跡と考えられている。ミイラ化したブラキロフォサウルスの化石としては世界唯一で、米モンタナ州の恐竜博物館から10年間の期限で借用しているという。

触って重さを実感できるティラノサウルスの大腿骨化石。右は辻俊之副館長

 常設展示室の2階は恐竜以外がテーマで、生命の誕生から脊椎動物の出現、海と空の爬虫(はちゅう)類、哺乳類の繁栄と、進化の様子をたどっている。人類は最後の一区画で登場するに過ぎず、地球の歴史の中ではごく短時間であることが分かる。また、ダイナラボでは、1メートル以上あるティラノサウルスの本物の大腿(だいたい)骨化石を回転させて重さを実感できる。

 ▽1億2000万年前にタイムスリップ

ガラス張りで中が見える収蔵庫

 本館から新館につながる連絡通路の横には、恐竜に関する図鑑や絵本などが豊富な図書室「ダイノライブラリー」があり、自由研究の調べ物をするのに役立ちそうだ。エスカレーター横の収蔵庫は一部ガラス張りで、中が見えるようになっている。

福井で発見された6体が飾られた「恐竜の塔」

 新館は銀色の卵形ドーム「小(こ)ドーム」が特徴。1階から3階まで届く高さ13メートルのシンボルモニュメント「恐竜の塔」には、福井で発見されたフクイラプトルなど新種の恐竜5種と鳥類1種の模型が飾られている。

巨大スクリーンに恐竜が躍動する特別展示室

 1~2階の特別展示室は、特別展を開催していない期間は高さ9メートル、幅16メートルのスクリーン3面を備えた「ダイノシアター」に。1億2000万年前の福井を舞台に恐竜が動き回るCG動画が楽しめる。

 ▽「本物」を「体験、体感」

ティラノサウルスの頭骨の復元体験

 3階の化石研究体験室では①ティラノサウルスの実物大頭骨模型を組み立てる「T.rex頭骨復元」(11月中旬からは岩石から化石を見つける「化石発見プラス」)、②砂を固めた疑岩を専門の道具で削り歯のレプリカを取り出す「化石クリーニング」、③パソコンに取り込まれたCT画像を使い化石の内部を観察する「CT化石観察」-といった体験メニューが新たに登場した。

恐竜の歯のレプリカを取り出す化石クリーニング体験

 この「体験、体感」と、博物館の随所で見られる「本物」が、リニューアルのコンセプトとなっていると辻さんは言う。「これからの博物館は見るだけでなく、触れることも重要。恐竜博物館はすぐ近くで調査、研究を30年やっており、その成果を反映させているため、本物を体験、体感できる」。ティラノサウルスのロボットの歯の見え方のほか、躍動的だが解剖学的に齟齬(そご)がないタルボサウルスの姿勢、恐竜動画に登場する太古の植物の選定など「全てに研究の裏打ちがある」(辻さん)ことが、この博物館の大きな特長と魅力といえそうだ。

 ▽列車やバスもコラボ

さまざまな恐竜関係の商品が並ぶ売店

 館内の売店やレストランも拡張。このほか、えちぜん鉄道は福井駅と博物館最寄りの勝山駅を結ぶ「恐竜列車」、京福バスはJR福井駅と博物館を結ぶ「恐竜バス」の運行を、いずれも7月15日から開始する(土日祝日を中心に運行。事前予約制)。

化石が飾られたレストラン

 博物館の観覧料は、常設展が一般1000円、高校・大学生800円、小・中学生と70歳以上500円。化石研究体験は同1200円、1000円、600円。化石発掘体験ができる野外恐竜博物館は同1300円、1100円、650円。いずれも日時指定の事前購入制で、博物館のHPから購入できる。

 また、リニューアルオープン記念としてライブショー「DINO-A-LIVE in 恐竜博物館~蘇った福井の恐竜たち~」が、7月22日から8月20日まで開催される。前売り券は中学生以上2800円、3歳から小学生2200円で、7月21日(金)まで販売。7月22日(土)以降は、同3000円、2400円。