『赤い糸 輪廻のひみつ』(都内・下北沢トリウッドほかで上映中)
落雷で命を落とし、記憶を失ったまま冥界に来たシャオルン(クー・チェンドン)は、同じく若くして死んだピンキー(ワン・ジン)とコンビを組み、人間に転生するために、他人の縁結びをすることで徳を積んでいくことになる。
ある日、2人の前に一匹の犬が現れたことから、シャオルンは失っていた生前の記憶を取り戻す。それは初恋の女性シャオミー(ビビアン・ソン)との思い出と果たせなかったある約束についてだった。
『あの頃、君を追いかけた』(11)のギデンズ・コー監督が、台湾の人々にとって身近な神である「月老(ユエラオ)」と輪廻(りんね)転生をモチーフに描いた純愛ファンタジー。
ある意味、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(22)にも似た、何でもありのハチャメチャな展開を見ていると、『エブ・エブ』にならったのかと思ったら、こちらの方が先に作られていた。まあ、輪廻転生や運命の赤い糸は仏教的な考え方だから、日本人にもなじみやすいものがあるのだが…。
この映画は、前半は「何これ?」というところも多いのだが、後半は見ながらなぜか切なくなってくる。『1秒先の彼女』(20)もそうだったが、台湾映画の恋愛ファンタジーには不思議なパワーと妙な切なさがある。そして、この映画の場合は、ビビアン・ソンの抜群のかわいらしさが切なさを助長する。
(田中雄二)