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ジェイソン・ステイサム ~絶滅危惧種のアクションスター~

『エクスペンダブルズ ニューブラッド』のスタローン(左)とステイサム (C)2022 Ex4 Productions, Inc.

筋肉系スターの最後の生き残り

 そう考えると、『エクスペンダブルズ』シリーズの現役の傭兵役というのは、ステイサムにとってはむしろ異色と言っていい。多彩な個性や国籍の寄せ集めチームという設定のおかげで、彼のナチュラルな魅力もしっかり際立っているわけだ。

 このシリーズはスタローンが、80~90年代に一時代を築いた筋肉系のアクション主演スターたちを復活共演させて大ヒットした。メンバーであるアーノルド・シュワルツェネッガー、ドルフ・ラングレン、ジェット・リー、ジャンクロード・バン・ダム、ウェズリー・スナイプスらは、アクション映画に特化した専門のスターたちだった。そして、シリーズ4作目『エクスペンダブルズ ニューブラッド』でスタローンから主人公の座を引き継いだステイサムは、その最後の生き残りと呼べる存在。

 逆に今=21世紀のハリウッドのアクション映画で主に主演を担っているのは、トム・クルーズ、キアヌ・リーブス、マット・デイモン、ジェラルド・バトラーといった正統派のイケメン・スターだ。さらにはスカーレット・ヨハンソン、シャーリーズ・セロン、ジェニファー・ローレンスら女優たちも。VFX技術の飛躍的な進歩と、アクション・コーディネーターの存在や映画史の蓄積が生む見せ方(演出)の引き出しが、俳優の身体能力を補ってくれる時代になったことで、アクションに特化した俳優は役割を終えようとしているように思える。

 でも、だからこそ生身のアクションには価値が生まれる。緊張感や信ぴょう性が高まるから。トム・クルーズが極力スタントダブルを使わないのも、それが理由だろう。『ワーキングマン』でステイサムは、銃火器だけでなく、ジャッキー・チェンのようにその場にある物や日常の道具も駆使して敵を倒していく。おのずとリアリティーが増す。その際の原動力は、“父性”と“約束”だ。『ビーキーパー』では、“恩人への哀悼”だった。トム・クルーズと違って恋愛が介在しないところも、彼のハードボイルドなカッコ良さを引き立てる。最後の生き残り=絶滅危惧種の貴重な活躍から、一瞬たりとも目をそらしてはもったいない!

『MEG ザ・モンスター』は、1月20日(火)にBS-TBSで放送される
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(外山真也)