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〝てんかん専門〟薬局、大阪にオープン 服薬指導や福祉相談で患者、家族を支援

nanacara薬局の調剤室

 てんかんに詳しい薬剤師が常駐し、患者や家族が薬だけでなく福祉や生活などについても気軽に相談できるようサポート面を充実させた「nanacara(ナナカラ)薬局」が10月2日、大阪市都島区にオープンする。てんかんの患者は国内に約100万人とされる一方、専門医は約800人と不足しており、特に地方では受診先や相談相手が見つかりにくい。治療の中心は抗てんかん薬であることから、薬剤師が専門医や福祉関係者と連携して患者、家族を支援し「てんかん医療の新たなプレーヤーに」という狙いだ。

■患者と専門医をつなぐ
 運営するのは、患者、家族が発作や服薬状況を記録できるアプリ「nanacara」や、オンラインで診療と服薬指導を受けられるアプリ「nana-medi(ナナメディ)」などを開発したスタートアップ企業ノックオンザドア(東京都港区)。同社の林泰臣代表取締役CEOによると、てんかんに取り組むきっかけは「難病の患者、家族に聞いたら、てんかんの困り事が多かった。地方にいる人は専門医になかなか出会えず、専門医も自分の時間を削って患者に対応している」現状を知ったからだった。

地下鉄の駅前に位置するnanacara薬局

 沖縄の離島に住む小児患者がnana-mediを通じて大阪の専門医とつながった結果、11年間止まらなかった発作が治まったという経験もした。ノックオンザドア初となる薬局は「アプリと同様に患者、家族、医師の声を聞いて一緒に育て、必要な場所にしたい。どこにいても適切な診療を受けられるようにしたい」と林さん。nanacaraという名称には「関わる人達の個性が七色の虹のように輝き、希望にあふれた世界になるように」という願いが込められている。

■豊富な在庫、オンラインでも対応
 nanacara薬局は大阪市中心部の地下鉄都島駅前に位置する。てんかん治療で実績がある大阪市立総合医療センターから徒歩約2分と利便性は抜群。1階が調剤室や待合スペースで、薬剤師とスタッフが2人ずつ常駐する。2階は勉強会やセミナーが開ける共用スペースと事務所になっている。

1階のカウンターと待合スペース

 ノックオンザドア薬局事業部の中田紘史部長によると、特長の一つは「市場に出ている約60種類の抗てんかん薬のほとんどを置いている」こと。病院で処方された薬が薬局になく、入荷待ちをした経験のある患者も少なくないといい、在庫の豊富さは患者にとって大きな安心材料となりそうだ。

 抗てんかん薬は用量のわずかな違いで症状が出たり治まったりするので、精密な調剤に加え、飲み方や副作用への対応など、きめ細かく丁寧な服薬指導が欠かせない。「正しく薬を飲めているか、その用量で合っているのか、などのデータを医師に伝え(薬の投与方法や量を調整して効果的にする)チューニングを手伝うことも必要」と薬剤師の役割と意義を語る。遠隔地の患者への指導や販売は、アプリを活用してオンラインで対応する予定という。

勉強会やセミナーが開ける2階の共有スペース

■患者に寄り添う薬局に
 9月末の内覧会に訪れた米田和美さんは、中学生の娘が難治性てんかんという。薬剤師に聞きたいことは「食事と薬の飲み合わせ、苦い薬の飲み方、冷蔵が必要な薬の持ち運び方、残薬の調整など、たくさんある」が、特に「他にも難病を抱える娘が今後、どうやって生きていくか、ケアはどうなっているか」という生活、福祉面を挙げた。

 こうした相談への対応は薬剤師だけでは難しい。中田さんは専門医、ケアマネジャー、福祉施設、患者会などと連携し「いろいろなチャンネルから情報を得ながらアウトプットしていく形を想定している」とした上で「『患者に寄り添う薬剤師がいる薬局』を基本スタンスにしたい」と抱負を語る。

米田和美さん (左)と中田紘史さん

 9月中旬には薬剤師と薬学生向けに、専門医による講演「薬剤師のためのてんかんマスター講座」と意見交換会を開催、今後も2カ月ごとに開きスキルアップにつなげる考えだ。「ショッピングモールの専門店のように、この薬局はてんかんに詳しい、ここは糖尿病に強い、と専門薬局の文化が定着し、より信頼できる薬剤師が広がるといい。ここで培ったやり方や知識をパッケージ化できれば、地域格差が少しずつ解消されるのではないか」(中田さん)と期待をかけている。

アプリ「nanacara」の画面

 

<ノックオンザドア>2018年に設立、患者・家族向け支援プラットフォームを軸にした事業開発・事業支援を行っている。20年にリリースしたスマホアプリ「nanacara」は約2万5千ダウンロード、ナナカラの情報を閲覧できる医師向けクラウド型サービス「nanacara for Doctor(ナナカラ・フォー・ドクター)」は200以上の医療機関で300人以上の医師に活用されている。22年に医薬品開発支援のシミックグループの一員になった。